ピピのシネマな日々:吟遊旅人のつれづれ

歌って踊れる図書館司書の映画三昧の日々を綴ります。たまに読書日記も。2007年3月以前の映画日記はHPに掲載。

コード・アンノウン

2007年12月16日 | 映画レビュー
 描かれているのは他者。よそよそしく、相容れない他者。たとえ親子・恋人・夫婦であっても他者どうしは理解しあえず、反発する。だが、愛と血縁によって結ばれる他者には断ち切れない絆もある。その複雑な気持ちと互いの距離の長短を絶妙な突き放し方でハネケは淡々と撮る。実にハネケらしいのではなかろうか。わたしには「隠された記憶」のほうがテーマが深まって歴史性を獲得し、わかりやすく整理されたと思えるが、映像と音楽のコラボレーションの面白さはこちらのほうが上だろう。

 各パーツ別れた群像劇なのだが、それらの間には直接のつながりがあったりなかったり、しかもブツ切れの停止カットで分断されるため、宙吊りにされた不安感や不安定感が募る。巻頭と巻末には聾学校のゼスチュアゲームの様子がいわくありげに映される。この思わせぶりなオープニングにはワクワクする。タイトルロールが終わってすぐのシークェンスこそ説明的な描写があってよくわかったが、その後はもう一度見ただけではよくわからない場面が続く。こういうときにDVDは助かります。小刻みに撒き戻しては確認するという技でなんとか乗り切った(^_^;)。

 移民、貧富の格差、人種差別、様々な社会問題をちりばめつつ、他者とは何かを問う映画だ。これをみるとラカン、レヴィナス、内田樹、と繋いで『他者と死者』を再読したくなった。(レンタルDVD)

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CODE INCONNU: RECIT INCOMPLET DE DIVERS VOYAGES
フランス/ドイツ/ルーマニア、2000年、 上映時間 113分
監督・脚本: ミヒャエル・ハネケ、製作総指揮: イヴォン・クレン、
出演: ジュリエット・ビノシュ、ティエリー・ヌーヴィック、ゼップ・ビアビヒラー、アレクサンドル・ハミド

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