ピピのシネマな日々:吟遊旅人のつれづれ

歌って踊れる図書館司書の映画三昧の日々を綴ります。たまに読書日記も。2007年3月以前の映画日記はHPに掲載。

エリザベス

2008年03月08日 | 映画レビュー
 ただいま上映中の「エリザベス ゴールデン・エイジ」の予習のため、鑑賞。

 豪華絢爛な美術が売りというけれど、画面が暗すぎて絢爛がくすんでいるではないか! 近世の暗い雰囲気を出そうとしたのか、リアリズムに凝ったのか、とにかく室内は暗くてほとんど何も見えず。処女王エリザベスは未婚だったので「処女」ということになっているらしいが、ほんとは何人も愛人がいた。そのうち特に寵愛の深かったロバート・ダドリー卿との恋愛を横軸に、エリザベス1世がイングランド女王としての地位を確立していくさまが縦軸に描かれる。

 王女といえどもその地位は不安定で、姉であるメアリ1世によってロンドン塔に幽閉されていたエリザベスは、姉の死によって25歳で即位する。当時のイングランドはエリザベスの父王がローマカトリックと縁を切って新教国に生まれ変わっていたが、まだカトリックとの闘争は続いていた。父王と違ってカトリックに復教したメアリは新教徒を弾圧し、新教徒エリザベスは再び国教を新教に変えた。スコットランドにはフランス出身のメアリ・ド・ギース女王がおり、これがエリザベスにとっては目の上のたんこぶ(彼女の娘がメアリ・スチュアート)。とにかく王位を巡ってはさまざまな国や人々の思惑が入り乱れ、当時のイングランドは王位継承を巡って吹き飛びそうな小国だったのだ。当時ヨーロッパの王家は国際結婚を繰り返していたからみんな親戚で、スコットランド女王であるメアリ・スチュワートはイングランドの王位継承権を持っていたし、スペイン王が夫だし、フランスは母の実家で…というややこしい状態だった。

 というような政治的歴史的背景はこの映画には一切説明がございません。なんという不親切な! イングランド王家の確執やエリザベスの猜疑心・不安・矜持といったものを描こうとした意図はわかるし、どろどろとした政治劇の雰囲気を出そうとしたこともわかるのですが、あまりにもドラマをおざなりにしすぎ。これでは王朝絵巻の醍醐味に欠けるというもの。もうちょっとわかりやすくしてもよかったんではなかろうか。ということで、続編に期待。(CATV)

----------------
ELIZABETH
イギリス、1998年、上映時間 124分
監督: シェカール・カプール、製作: アリソン・オーウェンほか、脚本: マイケル・ハースト、撮影: レミ・アデファラシン、音楽: デヴィッド・ハーシュフェルダー
出演: ケイト・ブランシェット、ジョセフ・ファインズ、ジェフリー・ラッシュ、クリストファー・エクルストン、リチャード・アッテンボロー、ファニー・アルダン