防災ブログ Let's Design with Nature

北風より太陽 ソフトなブログを目指します。

1/50 - 宅建試験の地盤に関する問題 - 技術系資格とのコラボへ

2008年06月30日 | 資格に関すること

明日から宅建「宅地建物取引主任者」のインターネット受験申し込みが始まります。
過去10年分の問題集を購入したものの、遅々として勉強が進んでおりません。やばい、やばい。

さて、宅地にも地盤の防災に関わる諸問題がいっぱいあるわけですが、問題集を見ていると全50問のうち必ず地盤に関する問題が出題されます。そして、必ず1問だけであり、多くの場合48問~50問めに出題されています。

そのレベルは、例えば
・平坦化された造成宅地は切土で不同沈下が発生しやすい … ×
・崖錐は河川が山から平野に出てくる地点から同心円状の等高線を描いていることが多い … ×

他の法律関係の問題に比べて問題の文章も半分くらいの長さです。悩むことはありません。
まあ、0点は免れたかというところですが。

なぜ、宅建かというと、これから防災・環境保全に関わる仕事は、民間の需要や個人を相手にすることが主流になるはずです(諫早湾判決はその門戸も開きました)。ところが、技術士の方、地質調査技士、地すべり防止工事士の方で、これらの資格を一手に取得している方はいらっしゃっても、宅建を持っている方は、まずおられないと思います。

そこには文系・理系というすみわけがあって、かつ公共事業主導で仕事が進んできたので、そんな発想がないのも無理はないでしょう。

といいつつ、資格試験が極めて苦手な私にとっては、ものすごく高いハードルではありますが、技術士試験で問われる建設一般と”世間一般”に詳しくなれば最強なのでしょうね。


”自分の庭”を持つ強み

2008年06月29日 | 防災・環境のコンセプト
昨日参加していた勉強会で、宮崎県の現場の話をしていたら、急に『そこは私が青春をかけた現場ですよ』と声を弾ませた方がおられました。その方の論文を以前読んだことがあったのですが、よくある名前のかただったので、ご本人とは気がつかずにいました。

現場に出かける前など、その地域を少しでも理解するために"予習”をするのですが、その方の論文は地質図がとても丁寧に記載してあったので、鮮明に覚えています。実は、そこの岩石の解説をしたり土質の分析をしたりする人は多いのですが、地質図をはじめ”調査精度を落とさずにわかりやすく表現すること”に対してきめ細やかな気配りをするひとが少ないと思います。

防災というのは地形だの地質だの土質だの、縦割り的な理解ではだめで”その地域のプロ”になるという意気込みをもつこと、その地域に関してならどこに○○岩が出ているか、どこのうどんやがおいしいかも含めて”自分の庭”とすることが、実はいちばん地域に貢献できることなのです。

伝説のwebサイト『かだいおうち』

2008年06月28日 | 防災・環境のコンセプト

今日は同業社で行う地質技術勉強会に出席して、地質情報活用機構理事長の岩松 暉先生のお話を伺う機会がありました。岩松先生は地質情報活用機構を立ち上げておられることからもわかりますが、地質学の一般社会への普及に大変熱心な方です。

もともとは鹿児島大学の教授でおられたので、そのときに『かだいおうち』http://www.sci.kagoshima-u.ac.jp/~oyo/contents.htmlという日本唯一の応用地質学に関するwebサイトを開設しておられました。その内容の濃密なことといったら。。。

鹿児島大学のご退官とともに更新終了あしからずということでしたが、新卒の技術者もよく知っているサイトで、岩松先生もこんなに若い人も知っているとはありがたいと喜んでおられました。

いま、よみかえしても、すごい迫力です。


有明海の脈動復活なるか - 諫早湾干拓の水門開放へ -

2008年06月27日 | 防災・環境のコンセプト

潮受け堤防開門命じる 諫早湾干拓訴訟判決
http://www.saga-s.co.jp/view.php?pageId=1036&blockId=954754&newsMode=article
湾内および湾周辺の環境悪化と、堤防閉め切りには相当の因果関係があると認定。開門に備える工期として判決確定から3年間の猶予を付けた。開門調査を拒んできた国に対しては「因果関係の立証に協力しない姿勢は、もはや立証妨害」と痛烈に非難。完成した国の巨大プロジェクトに見直しを迫る歴史的司法判断となった。

 久しぶりに目が覚めるようなニュースでした。
 私は諫早湾の対面にあたる福岡県の水郷柳川で育ち、有明海のダイナミックな潮の満ち引きと焦げ茶色の干潟を見て育ちました。
 
 大学に行って私は自然地理学を学び、関連する職業につくことになりました。もしそうでなかったら、このニュースを冷静に聞けなかったでしょう。良し悪し賛否は別として『環境論』ならぬ『感情論』的になっていたことでしょう。

 そして、このような問題は、司法判断に自然科学による客観的なデータを加えなければならないという複雑さ、むつかしさをはらんでいます。

 有明海は宝の海とよばれ、干潟とそれに続く浅海域の生物生産力は極めて高く、日本の沿岸漁業の重要拠点になっています。有明海(特に泥質干潟や河川感潮域)には、ムツゴロウやワラスボなど、中国や朝鮮半島によく生存する種が存在しています。

 これは有明海の地学的背景を十分に知っておかなければなりません。今から2万年前は最終氷期とよばれ、氷河が発達し瀬戸内海も干上がるほどでした。当然、有明海を陸地となっていました。このころに中国の揚子江・黄河などから運ばれてきた大量のレス(黄土)が堆積、そして1万年前くらいに温暖化し海水が戻ってきたときに、一気に有明海にスープ状に、そしてたこつぼ状の海にトラップされたのです。
 佐藤正憲編(2000)『有明海の生きものたち』http://item.rakuten.co.jp/book/1208233/によれば、筑後川などの河川からもたらされる土砂が湾内にそのまま堆積し、大きな潮位差は海水を濁らせ、揚子江に匹敵する土砂濃度(1-2kg/m3)の浮泥の海となっているそうです。
 
 特に、干潟に適応した塩生植物の1 種であるシチメンソウは、瀬戸内海にも分布記録があるが、そこではすでに絶滅し、現在日本に残されている産地は有明海の奥部だけ
で、シチメンソウの葉は夏は緑色であるが、晩秋には真っ赤に紅葉する。泥干潟を美しく彩る国内最大の群生は有明海の諫早湾にあったそうです。

鹿児島大学理学部助教授
http://www.isahaya-higata.net/isa/libr/lb020424ref0204/0204ref26-27.pdf

 また、有明海周辺の地盤は、知る人ぞ知る軟弱地盤です。表層部には有機質が多く含水率の高い極めて軟弱な層(=有明粘土層)が10~30mの厚さで分布しているhttp://home.hiroshima-u.ac.jp/sonodera/5aihara.pdfため、ほっといてもボーリングのロッドが沈むのです(このすごさはKon25さんhttp://ten-shock.jugem.jp/ がご存知でしょうか)。これが、平野であるにもかかわらず大都市ができずに水質汚染と水の需要量が少なくてすんだとは考えすぎでしょうか。

 先の『環境論ならぬ感情論』ではないですが、生態系を考えるとき『かわいい』生き物に感情移入し勝ちです。しかし、ここで冷静になって、地学的環境も踏まえ総合的・循環的な考えかたをしなければなりません。

裁判では、5年間水門を開け続けるよう判決されたようですが、九州のバイオスフィアhttp://www.monotsukuri.net/mirai98/bios/bios.htm を目指してほしいものです。

 このブログでお世話になっている、同じく”水郷”におられる島根県の今岡さんは、このニュースをどう感じていらっしゃるのでしょうか。


たまたま見かけた地盤調査風景 - スウェーデン式サウンディング試験

2008年06月25日 | 盛土が安定すれば安心
今日ちょっと外に出る用事があったのですが、たまたまスウェーデン式サウンデイング試験を行っている風景に出くわしました。スウェーデン式サウンデイング試験とは、宅地の地盤調査手法として最もポピュラーなもののひとつで、100kgもある重りを地盤にねじ込む際のスクリューの回転数で、地盤の上に何トンまで載せることが出来るかを測るものです。

地盤はいろんな表情をしており、絶対同じものがふたつあることはありません。よって、そこがどのようにして出来た土地であるか、周囲の条件から自然を読み解くイメージトレーニングを積み重ねておかないと、なんとでも解釈できてしまうのです。

特に、宅地盛土は中になにが入っているか分からない怖さがあります。それでも、周囲の状況から盛土の材料を推察、さらにはその材料となった地盤の形成された環境と堆積順序をしっかり考察しておくこと※。加えて、地盤の主犯格の地下水の通り道が、もしかしてパイプを作っているかもしれないという観点を持たなければ、納得のいかない半端な結果にだれもが振り回されえてしまうとおもうのです。

災害を語るストーリー

2008年06月24日 | 防災・環境のコンセプト

NPO法人地質情報整備活用機構(GUPI)のサイトには、岩手・宮城内陸地震に関する情報が網羅されています。それにしても今回の、各社各機関地震動の観測結果と荒砥沢地すべり一色です。

しかし、この前も書きましたが、崩れてしまった箇所はもう安定に向かうのです。これから崩れるところに全力を挙げるほうがよいのです。

過去、九州で土石流災害が発生した箇所でも、山崩れが発生した箇所がまさしくピンポイントで対策工が施工され、まるで要塞のようでした。

被災された方々の暮らしもこれからが大変です。住宅ローンなど残っている人や、傷んだ家にそのまま住むことになる人、大変な重荷を背負うことになります。

斜面も一緒です。すべり台の上にぶら下がってぎりぎりで持ちこたえていた土塊に亀裂が入った箇所などがあったら、まさしく忘れたころに崩れるのです。

山の気持ち、斜面の気持ちになって、人生設計を考えるような気持ちで防災にあたらないと、自然との共生など絵空事になりそうです。


崩れなかったところにこそ

2008年06月23日 | 平成20年6月岩手・宮城内陸地震
このたびの岩手・宮城内陸地震についても、各研究機関、調査会社が続々と調査報告を出しています。今回は特に、わが国の災害史上でも最大規模と言われる地すべり(あくまで”史”上であって、歴史時代以前に発生した地すべりはいくらでもあります)が活断層と密接に関わる場所で発生したとあって、そのことに論議が集中しているようです。

今回崩れたところは、逆に言えば不安定だったものが安定に転じたということが出来ます。もちろん今後数年~十数年単位で土砂の流出が続くため、流域の自然の回復には人の人生一世代分は十分にかかってしまうので、大変なことには変わりありません。

しかし、これほどの地震を経験してもなお、くずれなかった斜面の方が広いわけです。それがなぜなのか、ここ数十万年間で繰り返された地震や豪雨で安定化したのか、あるいはそれでもまだ崩れていないのか、また、今回の地震でくずれそうになったがなんとか持ちこたえたのか、そういったいわゆる"目につきにくい”ことを地道に研究することも重要だと思います。灯台下暗しではすまされない問題です。

kon25さんのブログ

2008年06月22日 | 雑感

ボーリング屋の日記 http://ten-shock.jugem.jp/

この方は、いま絶滅が危惧されそうになっているボーリング屋さんの方のブログです。
とっても地味な業界であり、ブログやっている人も少なく、芸能人などのように一回のコメント数が何万なんてのはあるはずもありません。

そんななかにあって、Kon25さんのブログの人気は凄いものがあります。内容がとても充実しているので、私にとっても勉強になります。

惜しむらくは実名が表記してないことです。
実名表記の意義については、この前かいたとおりです。http://blog.goo.ne.jp/geo1024/e/e21cf9214996fb7d43e0fea25b8fe963


岩手県の地すべりといえば

2008年06月21日 | 各地でのTOPICS

ミャンマーのサイクロン災害、中国四川省の地震災害、そしてこのたびの岩手・宮城内陸地震と、このところ大規模な災害が立て続けに起きています。さらには、まれに見る災害当たり年であった2004年(全国各地の豪雨災害、新潟県中越地震、スマトラ地震など)以降、大きな地すべり、山地崩壊をともなった災害が多くなりました。

10年くらい前なら、秋田県の澄川地すべり・土石流災害が、(私たち地盤・防災技術者の間では)結構大きなニュースになりました。http://www1.gsi.go.jp/geowww/themap/ex/disa-ex/1997sumikawa.html

実は今年4月20日に、岩手県雫石町で『天然ダム』を伴う地すべりが発生しています。
http://www.pwri.go.jp/team/landslide/topics/topics_iwateshizukuishi.htm

この地すべりはニュースとして目立ちませんでした。でも、東北地方にはこのような地すべり地形がたくさんあるのです。わすれてはなりません。


山の歴史も繰り返す

2008年06月20日 | 平成20年6月岩手・宮城内陸地震

 地すべり地形は人間の一生に例えることができます。
 若い時期には表面に”張り”があり、青年から中高年にかけて活動するたびに侵食谷・亀裂などの”しわ”が増え、やがて腰が曲がるように平坦になり、(人の一生と比べると桁違いに長い時間ですが)最終的には消滅します。

 http://www.kankyo-c.com/lanslide.html

 今回の岩手・宮城内陸地震で発生した荒砥沢ダム北側の大規模な地すべりについて、国際航業株式会社は、地震前後の詳しい地形解析結果を発表しました。

 岩手・内陸地震速報
 http://www.kkc.co.jp/social/disaster/200806_iwatemiyagi/pdf/sokuhou1.pdf(特に20ページ)

 これを見てみると、かなり高いところに今回の地震以前にも”地形の凹み”があったことがわかります。ふつうに考えると、山は高くなるほど険しく急になります。でも、この地形をみていると、今回の地すべりと同じように、過去にもだるま落とし、または”ヒザカックン”を食らって落ち込んだような形をしています。

 こんな地形ができるのは、おそらく地震によるある地層の急激な液状化であることが確実です。地震が繰り返された歴史は、活断層だけに潜んでいるのではないように思われます。


防災に対する理解 - 岩手県立大学牛山先生の記事より -

2008年06月19日 | 災害の記憶と想像力

○「住人でない人」対策はあるのか
http://disaster-i.cocolog-nifty.com/blog/2008/06/post_489d.html

このブログでは、何度か過去の災害について触れてきましたが、ここ十年くらいの災害に関する情報は、岩手県立大学の牛山素行先生のホームページおよびブログに分かりやすく、そして大変詳しく説明されています。

◇豪雨災害と防災情報を研究するdisaster-i.net 
http://www.disaster-i.net/
◇自然災害科学研究者 岩手県立大学総合政策学部准教授
 牛山素行 による研究活動記録用ブログ  
http://disaster-i.cocolog-nifty.com/blog/

 牛山先生は岩手県立大学で教鞭をとっておられるので、今回の内陸地震の被災地にも近いこともあり、現地写真も公開しておられます。

 さて、牛山先生もブログで、今回の震災の特徴として次にのようなことが述べられています。

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今回の地震による人的被害は「住民でない人」が中心であることを指摘ました。(途中略)「外で行動しいる,住民でない人」が犠牲になる形態を軽減することも困難であると言わざるを得ません. (途中略)しかし,地形情報その他から個々の地域においてこのような種類の災害が起こりうるといった情報,すなわち災害素因の情報はある程度把握できると思われます.こういった情報を,単なる「危険情報」として示すだけでなく,「学びの情報」として提示するなどといった方向は,効果は限定的ですが,一つの可能性ではないかなと思います.
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私も高校・大学と受験を経験していますが、「得意」としていた科目でも覚えたものはあっという間に忘れてしまいます。ところが、自分で興味を持ったテーマについては、ほぼ完璧に知識が残っています。

ですから、技術者や防災担当者が"上から目線”で、行政からこんな箇所が危険として指定されています、覚えといてねという感じで情報提供をしても、実質的に根付く知識にはならないと思います。

本当に分かりやすい、実用的な知識・情報提供のあり方は、ハードルを下げることではなく、高いレベルの知見まで理解したいというモチベーションを喚起することにあると言えるでしょう。


定性的なモデリング-東北学院大学の宮城先生

2008年06月18日 | 災害の記憶と想像力

昨日NHKのニュースを見ていたら、東北学院大学の宮城豊彦先生がヘリに乗って、岩手・宮城内陸地震で発生した『地滑り』について、解説されていました。我々技術者の間ではひらがなで「地すべり」と書くことが多いのですが、NHKのニュースでは『地滑り』となっていました。やや古めかしい感じですが。

それはさておき、宮城先生とは私もお世話になったことがあります。実は今回の地震で発生したような地すべりの痕跡は、東北地方の日本海側を中心として無数に存在しています。あの有名な世界自然遺産『白神山地』のブナの原生林も、実は地すべりによって形成されたでこぼこしたなだらかな斜面に、豊富な水が蓄えられた土壌の上に成立しているのです。

地震によってすべての地すべり地形が成立するわけではありませんが、今回の地震や2004年新潟県中越地震の例を見ていると、美しい森林の基盤をなす地形の大まかな骨格は、やはり地震によって繰り返しつくられてきたのではないかと思ってしまいます。

先のコメントにも書きましたが、こんな見てきたような絵のようなことが本当に起きるのだろうか?」と思いつつ、『(初生的地すべりは)地震が引き金となって形成されたと考えられる』という文言を書いてきましたが、ほんまかいなあと重いいていました。でも、やはり現場だけが教科書です。

宮城先生のコメントは、放送時間が限られていたためとても短かったのですが、今回の地すべり地形は、実は東北地方の代表的な景観で、いまでこそ地肌がむき出しで生々しいが周囲にこのような地形がたくさんあるとおっしゃっていました。TVに出る学者先生方は、だいたい地震のメカニズム論に終始し、宮城先生のように、地形発達の定性的モデリング、すなわち地表地質踏査と空中写真判読からいまの地形がどういう経緯で出来たかということのイメージトレーニングの積み重ねを感じさせる人はいません。

地質技術者は、実はこの定性的モデリングのプロです。頭の中に映画館のようななものがあって、タイムマシンに乗った気分で、地学的根拠に基づいた地球紀行を製作しています。

そのことはロマンだけではなく防災や環境保全に対して最も実用的であることを、もっとアピールしなければなりません。そうでないと、パソコンの数値計算が答えで現場が間違っているという輩がどんどんはびこってしまいます。


間隙水圧

2008年06月17日 | 技術動向

昨日の記事ですごく長くなった部分は、ひとことでいうと『間隙水圧の急上昇』です。

間隙水圧に関して分かりやすい解説のあるサイトを調べて見ました。

岩の割目に水があることが良く分かる
雪は日中気温が上がると、溶けて岩盤表面の割れ目に浸透します。最低気温は氷点下になっているので、割れ目中の水は凍結し、岩盤を緩めます。そのまま凍っておれば良いのですが、今年は例年にない暖冬。これが溶けると、水に変わり、緩んだ処に間隙水圧が働いて剪断強度が低下し、部分的崩壊に至る。
http://www.geo-yokoi.co.jp/geoslopex/Kamikita196.htm

豪雨によってもたらされる崩れの模式図
http://www.pu-toyama.ac.jp/AE/labo/go/fwmngmt/figs_fw/lslide1.jpg

間隙水圧と液状化
http://www.city.iida.nagano.jp/bosai/prepare/soutei/src/img_ekijouka_step.gif


平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震(3) - ダムの近くの地すべり -

2008年06月16日 | 平成20年6月岩手・宮城内陸地震

平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震では、5,000万m3とも言われる地すべりの土量もさることながら、ダムが近くにあったことです。

映画にもなった史上最悪のダム災害(
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=240867)である、1963年イタリアのバイオントダムでは、ム貯水池にすべり込んだ地すべりは, <大波>を引き起し,その波はダム天端を乗り越えて下流のロンガローネ村などを襲い1190名の死者を出し、地すべり地や下流域を総計すると死者2125名にのぼりました(アーバンクボタ第20巻より)。

実は、今回の被災地の近いところで、バイオントダムの6年前にダムの貯水池地すべりが問題になっている場所がありました(以下、アーバンクボタ第20巻より引用します)。宮城県栗駒市の鳴子ダムです。

《地学的要因》
空中写真判読で認められた過去の地すべり変動地を図に示した.問題の地すべり7ヵ所は,明らかに過去の種々な地すべり変動地域に発生している.これは,過去に滑落した,安定ないし準安定状態にあった地すべり移動体の一部が,ダム湛水によって再び不安定になった事を示すものである

《水位下降時》
最初の湛水時に移動を起して一時停止し,6年後,地すべりの対策工事のために貯水位を8日間で6m
降下させた直後に再移動した.

ダムでは放水により水位が低下することがあります。そのときに、水位の低下が急激だと、土の中に地下水が大量に残った状態になってしまいます。土のなかにはすき間に水をたくさん含みながらも砂粒同士が接触していることによって安定しているのですが、急激な水面低下によって地下水がぬけたりすることによって、土砂をつなぐ役割をしていた水がなくなりすき間に水をたくさん含みながらも砂粒同士が接触していることによって、ついには地すべりに至ります。

今回の被災地は、長年にわたり火山灰が積もった地域で、大量の水を含んでいたようです。奥羽山脈にはダムが多いだけに、活断層ばかりに気をとられているわけにはいかないようです。