防災ブログ Let's Design with Nature

北風より太陽 ソフトなブログを目指します。

平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震(2) - This is the Landslide -

2008年06月15日 | 平成20年6月岩手・宮城内陸地震
今回の地震では地すべりが発生しています。マスコミ報道では山崩れ、土砂崩れ、ひどいものでは山”帯”崩壊という誤字をそのまま(また解説図が幼稚だったこと。。。)使ったりという有様です。しかし、どういうわけか『地すべり』という言葉は殆ど出てきません。

地すべりという言葉が使われるのは、選挙の際『地すべり的勝利(landslide victory)』という言葉をたまに聞きます。こっちの意味は「起こる要因としては、議題、不満、問題等があって、それに対する意見が一気に片方へ寄ることが主な原因」のようです。ここで重要なのは、一気に片方へ寄ること でしょうか。

我々地盤技術者からみると、もう地すべりとしか言いようのない典型的な地すべりです。添付した画像には、昭和40年代から使われている地すべりの模式図を示しました。どちらかというと、これはあくまで模式図であって、実際はこんなにいろんな現象が一気にまとまって発生するもんかいなあ、とすら思っていました。

しかし、映像をみてみると、あまりにも模式図的な地すべりです。やはり、風景の基盤を作る地形は、地震によってもたらされるのだと思います。

平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震(1)

2008年06月14日 | 平成20年6月岩手・宮城内陸地震

2008年6月14日8時43分頃,岩手県内陸南部を震源としたM7.2の地震が発生し、多くの被害が発生しました。特に斜面の落石防護ネットを設置する作業をしていた方が、斜面崩落に巻き込まれるという、同業者の私にとっては痛切・残念の極みのニュースも耳にしました。

火山が噴火し、山が崩れる。この自然の摂理は災害という不幸をもたらし、また、『ひとめぼれ』という美味しいブランド米の生産基盤をもたらす土壌を供給し、温泉で疲れを癒すといった恵みと表裏一体であることを忘れてはなりません。

マスコミ報道は、防災に関して稚拙な報道を繰り返しています。「今後余震が起こるんでしょうか」程度の質問を学者先生に聞いても「はい」としか答えようがありません。なお捜索が続く温泉宿の周辺には美しいブナの原生林に覆われ、豊かな生態系を育んでいる複雑な地形は、実は今回のような地震に伴う地すべりが元であることを認識しなければなりません。

こんなに山が大きく崩れるような地震は、ちょっとなかったんじゃないですかと知った風なことをいうアナウンサーや評論家、2004年新潟県中越地震のことをもう忘れたのでしょうか。台湾やパキスタンでの地震でも同様なことが起こっています。

エンドユーザーやマスコミ報道になにも言わない地盤技術者も問題ですが、必要以上にあおる報道も疑問に思います。


こんな世に

2008年06月13日 | 雑感

先日のブログで、人の心という言葉を使いました。最近物騒な事件がおこり、ネット社会が悪いものであるかのような報道も目立ちます。

このブログにブックマークしている、技術士の今岡さんは次のような意見を述べておられます

匿名の発言なんて、所詮は無責任からスタートした空ろな産物に過ぎない」
と考えているからです(途中略)。
 
責任の追及されない状況から安易に発せられる思いやりの欠如した言葉の数々、それらが消去も訂正もされることなくキャッシュされネットを占拠してゆくのは実に悲しい。そしてそれが大多数となり定説化していくのはなお悲しい(途中略)。 
そういった、匿名の持つ、虚しくて空ろな部分へのアンチテーゼとして、私は実名で情報発信しているんですね。

実名はすなわち真剣勝負の意志表示であり、交流する相手には安心感と信頼感を与えることができていると自負しています。匿名で下手に隠すから、アヤシイ連中が寄ってくるんです。必ず「類は友を呼ぶ」んです。

私の好きな詩に、茨木のり子さんの『自分の感受性くらい』という詩があります。

ぱさぱさにかわいていく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて

気難しくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか

苛立つのを
近親のせいにはするな
何もかもへたくそだったのはわたくし

初心消えかかるのを
暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志にすぎなかった

駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄

自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ

防災技術も、魂をいれてこそ成り立つのです。


コンクリートは人の心が造るもの

2008年06月12日 | 維持管理の時代
森林浴の季節は過ぎ梅雨になりましたが、雨上がりの空に虹が出るのもきれいですよね。
ドライブをしていると、海、森、空といった綺麗な景色だけでなく、時折一見無機質、あるいはごついコンクリート擁壁が目に入ることがあります。特に防災に関わる仕事をしていると、そのコンクリートの表情にも目を配ることになります。

道路沿いのコンクリート擁壁は、落石・落盤が道路交通に影響を及ぼすことを防ぐために造成されるものですから、まずは見た目よりも『安全(頑丈)であること』が大事になってきます。ところが、この間写真にしめしたような、対象的なコンクリート擁壁を目にしました。

写真左側と右上にしめしたものは、昭和30年に施工されたコンクリート擁壁です。JRの斜面防災を目的として設置されており、55年を経過したいまでもひび割れや補修の跡がほとんどありません。以前、斜面防災に関わる学会で、鉄道総合研究所の方が『我々の防災技術は99点でも不合格だ、ひとつの落石があったら電車を止めることになるからです』とおっしゃったのを聞き、使命感の高さを感じました。

一方、写真の右下は、コンクリートの癌とまで言われるアルカリ骨材反応(通称アル骨)によるひび割れです。このような丈夫なコンクリートとぼろぼろのコンクリートが、すぐとなりに隣接しているのです。

なぜ、こんなにぼろぼろになっているかといえば、周辺の地質が安山岩というシリカ(ケイ酸)を多く含む、セメントの鉱物と反応すると膨張しやすい性質の岩石が多く分布している地域で、安易に”テキトーにその辺にある石”を配合してしまったんではないかと思っています。

21世紀は維持管理の時代ですが、構造物だけでなく、技術者魂も維持管理しなければならないようです。

ハザードマップ

2008年06月11日 | 防災・環境のコンセプト
私にとってはちょっと考えさせられる記事を見つけてしまいました。

http://dsel.ce.gunma-u.ac.jp/modules/research0/index.php?id=7

■災害イメージの固定化

 洪水ハザードマップに示される予想浸水深は、ある条件に基づく一つの氾濫シミュレーションの結果にすぎず、将来にわたって洪水氾濫がそのシミュレーション結果の範囲にとどまるという保証はない。しかし、住民が洪水ハザードマップから自宅の予想浸水深を読み取ると、それがその人の予想する浸水深の最大値を規定してしまうのである。特に、浅い浸水深、もしくは浸水しないことを読み取った住民は、その情報に安心感をもち、洪水災害時において避難の意向を示さなくなってしまうおそれがある。

■前提条件の欠落

 洪水ハザードマップで、色が塗られていない地域(予想浸水深がゼロの地域)には、与えられたシナリオに基づく洪水氾濫シミュレーションにおいて、その解析の対象外となり結果として浸水が生じないと判定された領域がある。このような氾濫解析の対象外となった流域では、洪水ハザードマップで予想浸水深は示されず、それをみた流域住民が「ここは洪水に対して安全な地域」として受け止めてしまうことがある。

テクニカルコンポーネンツとプレゼンテーションのバランスを、技術者がうまく取るべきなのでしょう資格


やっぱり基本は変わっていない

2008年06月10日 | 技術動向

私の手元に、山田剛二・渡 正亮・小橋澄治『地すべり・斜面崩壊の実態と対策』という本があります。地すべりの発生しやすい地質構造、調査、設計、施工、施工の際気をつけるべきことなどひととおり分かるのですが、なんと昭和46年9月出版。。。私が生まれる1ヶ月前です。


横浜市地震マップ

2008年06月09日 | 盛土が安定すれば安心
先日地すべり学会関西支部に参加し、「地震時の盛土地盤の地すべり」シンポジウムに参加してきました。その際、阪神・淡路大震災や新潟県中越地震、2007年新潟県中越沖地震などで、このブログでも何度も取り上げている「谷埋め盛土」の話題提供や研究報告がなされました。

これを聞いて、改めて昨年8月に改定された「横浜市地震マップ」を見てみました。
そうすると、ほとんどの地域で震度6以上になっており、建物の倒壊が顕著になってくる震度6強以上の地域も多く分布します。特に観光名所にもなっている、金沢八景周辺は、やわらかい地層が厚く堆積しているためか、谷沿いの平野部は殆ど震度7以上の赤色で示されています。

でも、このスケールでは、どうも「谷埋め盛土」は浮き出てきません。

まあ、いきなり、あなたの家は危険ですよといわれても、人間には正常性バイアスが本能的に存在していて、自分に都合の悪いことは起こらないだろうと思い勝ちですよね。

実際、地震のエネルギー(マグニチュード)はどうにもなりませんが、被害は「手の打ちよう」があります。
このブログにブックマークを貼っている『しぶさんの防災日記』の管理人、渋谷和久(国土交通省九州地方整備局総務部長)さんもご講演をいただいたのですが、

谷埋め盛土の滑動崩落現象は、旧地形に沿って分布する地下水の影響が大きいと考えられることから、事前に、地下水位低下、間隙水圧消散等の工法を導入することで、崩落防止に大きな効果があるもの

なのです。いま、私もこの谷埋め盛土の防災に関して、努力している最中です。

ロジックとデザイン - 宅よりも「地」の方が得意?-

2008年06月08日 | 資格に関すること

私たち地盤にかかわる技術者、特に私のように地図に表現してナンボの仕事をしているものにとっては、土地はデザインの対象です。デザインの絵の具は地球科学の成果です。

でも世間一般の「土地」は取引の対象です。そのロジックとの接点を持たないと、本当の地盤技術者ではないだろうとの発想で、「宅地建物取引主任者」いわゆる宅建に挑戦しようとしています(しようとしているというファジーな言い回しが腰が引けていますでしょうか。。。。。。)

さて、この宅建の内容ですが、私たちの仕事と接点があるとすれば、法規制関係です。でも、試験独特の引っ掛けみたいなものはあります。例えば、

・学校や道路も公共「施設」である。施設=建物ではない
・都市計画区域は国土交通大臣の許可を得た場合、二つ以上の都府県にまたがって指定できる。
・市街化区域は既往の市街地か今後10年程度で市街地化を図る区域、市街化調整区域は市外地化を抑制する区域

などなど

 私が持っている宅建の参考書でいきなり書いてあることは、「権利および権利の変動」民法の理解です。はあ、、、自然はうそをつかないし、AもBも甲も乙もないのになあ。。。。。。


こんなディべロッパーにご用心

2008年06月07日 | 技術動向
今日は大阪で地すべり学会関西支部シンポジウム『地震時の盛土地盤の地すべり』に参加してきました。http://japan.landslide-soc.org/branch/kansai/index.html

我々調査業者や研究者のほか、熱心な住民の方も参加しておられました。
少し年配の女性がこんな話をされていました。

「この間、近所の宅地開発でディべロッパーがやってきた。手際よくボーリングの櫓を組み立て調査を始めた。そして、

 コアが濡れてへんから地下水ないですわ

 ちょっとまて、ここは盛土される前は沢でぬかるみもあった。以前きたディべロッパーは、地盤の表情はさまざまやから言うて、地下水があったことを確認した。地下水が上昇すると地震や豪雨がきたとき崩れやすい。もう少し詳しく調べてくれませんか

 そしたら、もうひとこと 

 コアが濡れてへんから地下水ないですわ

 地盤の声を聞けない業者よ、、、恐るべし

横浜市の緑新税

2008年06月06日 | Design with Nature
横浜市 緑新税を創出か?
http://www.kanaloco.jp/localnews/entry/entryxiiijun080694/

 横浜市税制研究会は緑の保全・創造に向けた課税自主権の活用策として「緑新税」の創設を市に提言、内容を五日公表した。多くの市民に広く薄く負担を求める個人市民税、法人市民税の均等割による超過課税の方式。年間で個人が1300円程度

 緑は環境保全だけでなく、防災にも役に立つのです。阪神・淡路大震災の時は、森が火災の延焼を防ぎました。

 市民に負担を求める前に、Design with Nature です。

中田市長さん。これを呼んでみてはいかがでしょうか。
http://www.kankyo-c.com/column/inagaki_3.htm

現地調査の基本は変わらない‥されど‥

2008年06月05日 | 技術動向

先日ポケットブックが手に入らないという話をしていたら、
http://blog.goo.ne.jp/geo1024/e/a88e5283c0169ceda9b3d66e86236550

上司が『じゃあおれのをあげるよ、古いけど現地の見方や地すべりの主犯である地下水排除なんかの基本は変わらないよ』と言って

『現場技術者のための砂防・地すべり防止工事・急傾斜地崩壊防止ポケットブック 昭和58年版

たしかにポケットサイズです。でも、この時代はパソコンをマイコンと呼んでいた(っけ?)時代で、ワープロでなく『タイプライター』でした。

その意味でちょっと不安なのは、斜面安定解析で3次元の説明がないこと、GPS測量の説明がないことです。そのころCADなんてのももちろんなかったので、地図はデータという感覚ではなく「絵図の延長 ‥
 ジアゾの香りなんて言い出すと”世代だねえ”なんて。」

時は移り、本来(特に現場の)情報は自分の五感で稼ぐものというコンセプトが色あせ、ネットからコピペするものという頭の運動不足のおこりやすい状態になってしまいました。

もう、現場服のポケットに入る教科書はでないのでしょうか。


地面の聴診器?-地下流水音探査技術

2008年06月04日 | 技術動向

○山崩れ探知機:森林総合研究所が開発 地下水の音から予測
http://ss.ffpri.affrc.go.jp/labs/kouho/Press-release/2008/yamakuzure20080529.html#1
独立行政法人森林総合研究所

森林総合研究所では地下水が流れるときに発生する曝気音の強弱を測定する技術を開発し、山崩れの起きる危険性が高い地下水の集中する場所を探知することに成功しました。

曝気音:地下水が流れる際に、岩盤の亀裂や土粒子の間隙にあった空気と水が交換される。このとき泡が発生し、これが割れる際に「コロコロ」・「ボコボコ」・「ゴー」という音が発生する。

先日竹内先生の水ミチの話をしましたが、これも水ミチ発見の試みのひとつだと思いまます。崖をちょっと上ってみると、樹木の根っこが露出している下に水が抜けた穴(パイピングホール)が存在し、そこで山崩れが発生したことを物語っているのですが、その主犯である地下水のアジトを探る方法です。

ただし、地質によって、あるいはほかのノイズ(雑音)とどう区別するのか、かなり興味があるので実際やってみたいと思ってきました。


今年何十年目かの災害周年

2008年06月03日 | 災害の記憶と想像力

私の住んでいる川崎や横浜は、大きな被害をもたらした狩野川台風から今年でちょうど50年を迎えます。実は2008年は、歴史に残る大災害の○周年にあたります。

>150周年‥立山鳶崩れ(4月28日)
  オランダ人技術者デ・レーケが『これは川ではない、滝だ』という言葉を残した、富山県の常願寺川の大土石流災害。土砂崩れダムが決壊し大きな被害を出した。理科年表や地理の教科書には、急流河川の日本代表として、河床縦断図が常に掲載される河川。

>70周年‥阪神大水害(7月3~5日)
   いまでは震災の方が有名ですが、水害も忘れてはならない災害です。都市水害の先駆けと言われ、土石流氾濫等による死者616名を出した。谷崎潤一郎『細雪』、手塚治虫『アドルフに告ぐ』、妹尾河童『少年H』でもどりあげられた。
 
>60周年‥福井地震(6月28日)

   戦後復興間もない福井市を直撃した都市直下型地震。死者・行方不明者 3,769名。この災害を契機に気象庁震度階7(激震)が設定された。 

>50周年‥狩野川台風(9月27日)
   横浜を中心に都市郊外の崖崩れ災害がクローズアップされた。死者・行方不明:1,269名。『宅地造成等規制法』『急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律』の契機となった。

>30周年‥宮城沖地震(6月12日)
   丘陵地の宅地造成が進んだ斜面都市の地震災害事例のさきがけ。

>20周年‥宮城沖地震(9月11~13日)
   地球温暖化、オゾン層破壊など、環境関連の国際会議が相次いで開催され、地球環境元年とよばれた。
 
 防災といえば、ほぼ大地震がイメージされ、想定被害に壮絶な数字が並びます。また、環境に関しては「地球温暖化の防止のために」というフレーズとイメージだけが先行し、地球科学論、技術論の裏付けがどれだけあるか、疑問視されることも多い現状です。
 私たち地質技術者は、徹底した現場の観察に基づき自然の力を考察することを繰り返してきています。まれに起こる大災害の現場と、いつもの風景がどのように関わってきたか、頭のなかでデザインし、そのデザインにかなった防災対策・環境保全策を考え続けることを生業としています。そう

『Design with Nature』

 そして今年、四川大地震。。。『日中友好元年』となるのでしょうか。


地すべり防止工事士

2008年06月02日 | 資格に関すること

竹内先生の技術の関連でいうと、水ミチと暮らしとの関連のお話を伺いました。

いくつかの地すべり地で地下水は面的に存在すると思い込んだ自然観によって、過剰に地下水を抜きすぎて、井戸が枯れたり、家が不同沈下を起こしたりする例が見られたとのことでした。

心ゆくまでの調査が認められたならば、地下の構造と水の流れを詳しく調べて見たいものです。
例えば、竹内先生の地温探査法では、地下水脈(水ミチ)の分布をある程度正確に把握できるものの、竹内先生も1mといっていおられるように、結構浅いところに限られます。

弾性波探査(地震探査)や電気探査、自然放射能調査などを併用して、地質構造をしっかりと捉えることが重要となってきます。

弾性波探査(地震探査)は、弾性波動の伝播特性を利用して、地下構造を推定する物理探査技術です。利用する地震波の種類や測定形態(震源や受振器の設置場所)によって、いくつかの方法に分類されます。地表あるいは地下で発生した地震波(地震探査の場合は、人工地震波)は地層中を直進して行きます。しかし、地層境界など、地震波の伝播特性が変化するところに達すると、そこで、反射、屈折、回折などの現象を起こします。

自然放射能調査は、可能深度数mから数十m程度の範囲で破砕帯など空隙に富む部分の検出が可能で、硬い岩盤向きの弾性波探査の弱点を補完しています。

しかし、結局すべりの引き金は水なわけで、竹内先生はこれは足で稼げとおっしゃっているわけです。


ポケットブックが手に入らない-出版不況のなかで-

2008年06月01日 | 技術動向

ITや医療をはじめとした科学技術は日進月歩で進んでいきます。

しかし、防災や環境保全に必要な経験値(知ともいうべきか)は、団塊世代の技術伝承論ではありませんが、現場の見方は昭和40年代、50年代の大規模な開発に伴って見えた地質の露頭・岩盤の性状が明らかにされ、その時の知見はとても価値のあるものになっています。

そのころは、現場の見方、それに伴う防災工事のノウハウに関する書籍も多く出版されました。
そのうち私が座右においているのが、次の2冊です。

①『現場技術者のための砂防・地すべり・がけ崩れ・雪崩防止工事ポケットブック』
 初版は昭和58(1983)年に出版されました。
②『建設工事の地質診断と処方』土木工学社
 これも同様です。

特に①の初版本は、本当にポケットサイズでした。今でこそ緑化工など、環境や生態系に配慮した技術が取りざたされていますが、基本は変わりません。ところが出版もとの山海堂が昨年倒産してしまったため、最新版でも書店やwebで買えなくなってしまいました。

最近はネットの普及により、出版業界は軒並み不況のようですが、現場に携帯できる教科書ともいうべき本が手に入らなくなったのは、残念であるとともに、技術の後退をもたらすのではないかと心配でなりません。