防災ブログ Let's Design with Nature

北風より太陽 ソフトなブログを目指します。

盛土の試験問題から

2010年03月06日 | 盛土が安定すれば安心

1級土木施工管理の実地試験問題で、盛土の現場密度試験を行ったところ、規格値を満足しない測定値が得られた。この場合考えられる原因とその対策を3つ記述せよ というのがありました。模範的な解答としては、

施工含水比が最適含水比の近くではない。→含水比を測定し、最適含水比よりも乾燥側であれば散水、湿潤側であれば排水やばっ気により乾燥させ、最適含水比に近づける。

締め固めエネルギーが不足している → 敷きならし厚さを薄くし、十分締め固めをするか、締固め機械を大型のものに変更する

締固め機械が現場の土質に適合していない → 現場の土質に最適な締固め機会に変更する

作業員に作業の方法、検査の方法が周知徹底

なんだそうです。

が、最近の地震災害・豪雨災害後の調査では、長い時間が経過すると、盛土のなかに地下水の水みちができたり溶脱による不同沈下がおこったり、、太田さんのブログによると、盛土構造は上から順に盛土材料→隙間(-->旧表土)-->地山となっている。隙間は施工直後には存在していませんが、時間とともにできてきます。一度変動すると隙間は埋まるかもしれませんが、再び時間の経過とともにできてきますので、地震を受ける時間間隔単位では、いつでも滑動崩落準備OKとなります。

と述べてあります。でもそういう意味での検査は、なかなか難しいでしょうね


住宅環境研究室のサイトから

2010年01月25日 | 盛土が安定すれば安心
千葉県の不動産業者で、住宅環境研究室という機関を立ち上げ谷埋め盛土の防災について詳述されているサイトです。あんしん宅地の先駆者とも言うべきサイトですが、日経ビジネスAssocieの2010年新年号(1/9・2/2合併号)にて、「谷埋め盛土」に関する記事が掲載されたのだそうです。日経コンストやホームビルダーよりもおそらくサーキュレーションが広いでしょう。早速注文しました。

http://f-kankyo.blogdehp.ne.jp/ 住宅環境研究室

東名盛土復旧の舞台裏

2009年12月10日 | 盛土が安定すれば安心
日経コンストラクションの記事より。

①崩落は盛土部分だけで発生した
②現場は道路横断方向が凸型、道路縦断方向に凹型の地山形状で、水が流れこみやすい地形形状だった。
③盛土の下層には風化しやすい泥岩を使っていた。
④崩落箇所は地下水位が高かった。
⑤盛土の施工は規定どおりだった。

画像にUPしたのは、法面崩落のメカニズムとして掲載されていた図面です。私が個人的に知りたいとおもったのは、②に関連すると思いますが、横断形状(特に三次元形状)です。水が集まりやすいかどうかは縦断ではよくわからないと思います。

⑤については、後の方に、建設時には付近の切土工事で発生した土砂を盛土に使った可能性はある。但し1960年以降は、泥岩を使う際には十分に締め固めるなどの規定を設けている、、とあります。規定は正しかったという責任回避みたいで、あまり好きになれない表現です。現場で起こったことが全てですから。太田教授によると、問題はある泥岩とないものが区別がつかなかったのではないか、というコメントが掲載されていて、泥岩だけが犯人のようにかかれていますが、ほかにも要因はあるでしょうに。

流行語大賞

2009年12月01日 | 盛土が安定すれば安心
今日は12月1日恒例の流行語大賞が発表されました。対象はやはり「政権交代」でした。防災はいまのところ殆ど公共事業なので、私たちの業界でもよく口にしました(というよりは 、~の影響という語尾がつきましたが)。

世間では流行らかったものの、私たちの仲間内で流行った???言葉をふたつ。

○軽いジャブ
  8月のお盆前に駿河湾を震源とした地震が発生し、東名高速道路の盛土が崩壊しました。国土交通省は11月20日に道路の谷埋め盛土の緊急点検を始めると発表しました。この地震が起こったとき、私たちは、これは”本番(東海・東南海地震)に向けての軽いジャブだ、という言い方をしました。道路は1箇所でも崩壊したら機能しません。”本番”の前に防災を産業化して備えておく必要があります。

○マニュアル技術者
  このブログで今年いちばん語ったテーマかもしれません。自然に唯一解などありません。

盛土のり面の緊急点検

2009年11月20日 | 盛土が安定すれば安心
国土交通省の報道資料に、以下の内容が掲載されていました。

盛土のり面の緊急点検
http://www.mlit.go.jp/report/press/road01_hh_000095.html

去る8月11日、駿河湾を震源とする地震により、東名高速道路牧之原SA付近において、
盛土のり面が崩壊し、国民生活に大きな影響を及ぼす事態が生じました。
 この事態を受け、以下のとおり、盛土のり面となっている箇所について、緊急点検を実施する
こととしましたので、お知らせ致します。
 
1.点検対象となる道路
  ・ 東日本・中日本・西日本高速道路株式会社、首都高速道路株式会社、
   阪神高速道路株式会社及び本州四国連絡高速道路株式会社の管理する有料道路
  ・ 一般国道(国が管理する指定区間の国道)
 
2.点検の対象(以下の条件の全てに該当する盛土)
  ・ スレーキングしやすい岩質材料が用いられている可能性のある盛土
  ・ 沢埋め部等の水の集まりやすい地形条件に造成された盛土
  ・ 盛土のり尻から測った盛土高が10mを上回る盛土
   ※ スレーキングとは、塊状の物質(土塊や軟岩)が乾燥、吸水を繰り返すことにより、
     細かくばらばらに細粒化する現象をいう。
 
3.点検の内容
 [1] 現地踏査
   盛土のり面に湧水がないか、平常時及び降雨後に確認を実施。
 [2] 簡易現地調査
   現地踏査により湧水が確認された盛土について、盛土の強度及び地下水位を確認。
 
 なお、今回の調査結果を踏まえ、必要に応じて、詳細な調査又は継続的な観察を実施。

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継続的な調査になるのでしょうか

千年盛土と億年クッション!?に見る災害軽減のロマン

2009年10月22日 | 盛土が安定すれば安心
『家族を守る斜面の知識 - あなたの家は大丈夫? -』 に千年盛土というコラムがあります。

土木学会のHP http://www.jsce.or.jp/publication/detail/detail2386.htm

これによると、直下型地震によって壊れてもおかしくなかったという古墳があり、その要因は土器の層が地下水をよく通し、間隙水圧の上昇を防いだというものです。谷埋め盛土の地震防災対策は21世紀に課せられた大きな課題なのですが、古代の人が図らずも千年続く防災対策をとっていたことに対してロマンを感じます。

一方で、今日次のような興味深いニュースがありました。

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蛇紋岩 沖縄の大地のクッションに
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091022-00000003-maip-soci

 ユーラシアプレートの下にフィリピン海プレートが沈み込む境界がある沖縄諸島付近では、境界深部に軟らかい蛇紋岩が存在することでひずみが蓄積しにくく、プレート境界型巨大地震の発生を抑制している可能性があることが、広島大などの研究チームの調査で分かった。22日付の英科学誌ネイチャーに論文が掲載された。
 研究チームは、沖縄諸島付近の深さ30キロ以上のプレート境界で、地震波の伝わる速度が方位によって異なる現象(異方性)を調査し、プレートと一緒に沈み込んだ水がマントルと混ざり合う過程で境界上に生成された蛇紋岩があると推定。実験室でプレート境界に近い高温高圧の条件で蛇紋岩を変形させた結果、沖縄諸島付近と同様の現象が生じた。
 表面がヘビの模様に似ている蛇紋岩は、地上では地滑り地帯などでみられる。もろくて軟らかい性質のため、ひずみを蓄積することができない。
 研究チームは、蛇紋岩の存在がプレート境界深部での巨大地震の発生を抑制している可能性があるとみて、太平洋プレートがユーラシアプレートに沈み込む東北地方付近と比較したところ、蛇紋岩の存在は確認できなかった。プレート境界の温度が低く、放出される水が少ないため蛇紋岩の生成に至らなかったとみている。
 また、深さ30キロ以上のプレート境界深部が震源となった地震のうち、過去100年間に起きたマグニチュード6以上の大地震の発生状況をみると、沖縄諸島付近は、東北地方付近の数十分の1に抑えられていた。
 広島大の片山郁夫助教(岩石変形学)は「プレート境界での蛇紋岩の分布を詳細に調べることで、巨大地震発生の可能性を探ることができる」と話している。
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前者が千年盛土なら後者は億年クッションでしょうか。こんなところに自然科学のロマンを感じます。

あなたの家は大丈夫?という本

2009年10月01日 | 盛土が安定すれば安心

アマゾンで、”あなたの家は大丈夫”というキーワード検索してみました。そしたら15件ヒットしました。おおむね活断層が家の近くにないか、耐震補強は充分かといった視点です。

しかし、今年の山口県や九州北部、中国地方の豪雨災害がそうであったように、斜面災害から身を守ることは盲点になりがちです。さらに谷埋め盛土に造成された宅地である場合、そこが”斜面”であることに気がつかないこともしばしばです。そこで、もう一度講習会を宣伝しておきます。きっとためになります。


東名路肩崩落 原因は盛り土の下層の劣化

2009年09月29日 | 盛土が安定すれば安心
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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090928-00000022-maip-soci
駿河湾を震源とする8月の地震で、東名高速道路の路肩が崩落した原因を調査する中日本高速道路の検討委員会が28日開かれた。ボーリング調査などの結果、盛り土の下層が劣化し、浸透性が低下していたことが判明。盛り土内に地下水がたまりやすい軟弱な地盤になっていたところに揺れが加わり、崩落したと推定した。
検討委と同社によると、崩落現場で12カ所をボーリングしたところ、盛り土の最下層に使用していた泥岩が粘土のように変質していた。泥岩の劣化は建設当時は知られておらず、対策が講じられていないという。また、現場は尾根状の谷地に盛り土されて造成されており、雨などが流れ込みやすい地形だった。このため、検討委は今後、東名高速の盛り土部分のうち、泥岩使用地点や水が流れ込みやすい類似地形などを優先的に点検する場所として選定する方針。

 検討委では、本復旧工事に水はけの良い土を使うことや、盛り土の安定性を確保するためくいを盛り土内部に打つなどの工法案が了承された
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政権交代やオリンピックなどの話題にすっかり隠れてしまいました。しかし、東名高速は日本の大動脈です。切れたらCO2削減や子供手あてなど悠長なこととなるでしょう。地味で確実な防災をすることは、経済活動の基盤を支えます。

高速道路無料化

2009年09月02日 | 盛土が安定すれば安心
報道ステーションを見ていたら、高速道路の無料化による経済効果を力説されていました。それを含め国民の皆様が心配している財源も確保できるのだと。

しかし、みているとかなり綱渡りの感は否めません。そして、私に言わせれば肝心要の道路防災対策が語られることがありませんでした。東海地震は手ぐすね引いて待っています。そして、盛土の間隙水圧がテロリストのごとく暴れだします。最大のドル箱路線の東名高速道路がどうなるか、、あえてタブー視しているようでもなく、念頭にないのが心配です。

鳥取県の盛土造成地盤調査

2009年08月28日 | 盛土が安定すれば安心
地すべり学会の話をもうひとつ。
飲み会で、太田さんが「重鎮ばかり質問に立ってたらだめだ、若い人がやらないと」といわれたからではありませんが、鳥取県の宅地盛土地盤の調査結果を報告していた方に質問をぶつけて見ました。

私は太田さんや釜井先生と付き合いがあるので、盛土を滑らせる主因が側部抵抗力にあるため、二次元安定解析と三次元安定解析では違った答えが出るのではないか、そういう意味では斜面を薄く盛ったところと沢筋を厚く盛ったところひとつの二次元側線で解析するのは、今後の対策にも影響をあたえるのではないか、といった質問をぶつけてみました。

発表された方に、それはそうなんだけどガイドラインが。。。という表情を読み取ったのですが気のせいでしょうか。

あんしん宅地のHPがリニューアルされました

2009年07月28日 | 盛土が安定すれば安心
あんしん宅地のホームページがリニューアルされておりました。

あんしん宅地 http://www.あんしん宅地.jp/index.htm

コンテンツの豊富さは失わずにすっきりまとめられており、わかりやすいと思います。
あんしん宅地は、昨年のリーマンショックによる住宅バブル崩壊の影響をまともに受けてしまい、かつこちらが思っていたほど世間は宅地のあんしんや、それにまつわる専門的知識をもち合わせていなかったこともあり、正直空振りに終わった感は否めません。

しかし、ホームページの更新するということは、それでも脈動していることを示すものです。なんとかビジネスにしなければなりません。

斜面の健康診断

2009年06月11日 | 盛土が安定すれば安心
昨日は地すべり学会関西支部で、「斜面の健康診断」というシンポジウムが開かれていました。去年は参加したのですが、今年は現場のために行けません。毎年このシンポジウムは実用的で楽しみなので、いけなかった年は、テキストを購入することにしています。

斜面の健康診断という響きですが、我々地質コンサルタントは、地球の医者というように自らを医者にたとえることはよくあります。しかし、世の中のニーズが全然ありません。斜面の健康診断、地質を知ることによるメリットを事業化しないと、マイナー分野からの脱却はありません。

長期優良住宅

2009年06月05日 | 盛土が安定すれば安心
に関する法律が今日施行されました。元旦の日本経済新聞に大々的にのったので、もう少し話題になるかなと思ったのですが、意外と地味でしたね。先ほど報道ステーションで少し触れられましたが、少子化問題の解決なくしてなにが200年住宅か、という視点でした。災害の観点は、まだまだですね。

地すべり学会での発表

2009年06月02日 | 盛土が安定すれば安心

今度の地すべり学会では、このところ休日を利用して歩いていた擁壁のチェック法についてまとめてみようと思っています。これまで宅地や擁壁の危険度判定といえば、被災宅地危険度判定士という資格に代表されるように「事後」の点検が主体だったと思います。この点検は、大きな地震が起こった後ですので、亀裂や段差が相対的に小さいものでも、結構目立つものです。そのため、幅3cmだとかある程度定まった値が出てくる訳です。

そうなると、昨日の記事にも書きましたが。「誰でもできる」「個人差がなくなる」という、技術者の存亡に関わる大問題が出てきてしまいます。

この問題を避けるために、技術者のための調査票を作成したつもりです。特にスケッチに重点を置いています。対象となる宅地だけでなく、そこが谷埋め盛土であった場合、宅地耐震化などの公的補助も必要だからです。公共事業の対象とならない場合、自主防災組織などの共助も必要でしょう。いずれにしても、エンドユーザーたる住民に、専門家が直にその力を発揮できるようなきっかけのひとつとしたいと思っています。