防災ブログ Let's Design with Nature

北風より太陽 ソフトなブログを目指します。

エンジニアリング

2009年07月31日 | 雑感
技術動向にしたいところですが、雑感にしました。
このところ渓流の土砂調査を繰り返す毎日が続いているのですが、以前とは明らかに違う点があります。

以前の渓流の調査は、確かに限られた時間のなかでの調査でしたが、現場で自分が考察した結果をそのまま伝えることができました。ここの土石流堆積物がある、、新しい侵食痕跡がある。歴にコケは生えているが細粒は抜けきっていない。。沖積錐があるということは、、、などなど

こういった仮説をいろいろたてて、検証する楽しみがありました。

しかし、いまの調査は、PCのシミュレーションの初期条件のためだけ、誰がやっても同じような答えしか求められない。だからとても淡々としていて体の疲れだけ残ります。

山口県の土石流災害で、『老人ホームがあるのだからレッドゾーンにしておくべきだった』なんてコメントも報道されましたが、現場におけるエンジニアリング・ジャッジメントの意義が薄れたなあという想いです。

当たり前のこと

2009年07月30日 | 防災・環境のコンセプト
牛山先生のブログから

「あまり知られていないが、昨年は台風の直撃がなく、例年と比べて降水量も被害も記録的に少ない年。死者や行方不明者、建物の全半壊などのデータからも、『大した雨が降らない』年だった。(児童ら5人が流された)神戸市の都賀川で起こった事故の衝撃が大きかったために、注目を集めたと言える」

 ―国が検討会を設置するなど、本格的な対策に乗り出しました。

 「都賀川の事故で、安全と思っていた公園で小学生の犠牲者が出るという衝撃性に、焦点が当たったのだろう。事故以来、ゲリラ豪雨は『特殊な自然現象』という認識が生まれたが、本当は『起こり得る当たり前の現象』。外力のせいにして思考停止するのは問題だ。人間側の対策で被害は軽減できる

 「自然現象に目を向ける以前に、いる場所の地形や地質、気候、人口など、土地が持っている性質を知っておく必要がある。この場所でどういう災害が起こり得るのか。地の脆弱(ぜいじゃく)性を知ることは、あらゆる災害対策の第一歩。過去にどのような被害があったのか。既にある情報を最大限に生かすべき。指定された危険個所やハザードマップなどを確認することが重要だ」

※ただし、指定された危険個所やハザードマップにこそ、地形・地質的背景、土地の成り立ちを充分に踏まえた定性的予測を含めておくべきなんです。

 「04年以降の風水害の死者を調べると、用水路や田畑の様子を見に外出して流されるなど、自らの意思で危険な場所に接近して被害に遭う『事故型』が22%以上を占めているのが分かる。大雨警報と土砂災害警戒情報、記録的短時間大雨情報の3情報がセットになると危ない。豪雨のメカニズムを知ることよりも、自分がいる場所の特性をよく理解した上で、災害情報を知る心構えが大切になる


冷夏

2009年07月29日 | 地球温暖化・寒冷化?人類の課題

今月は現場に出ずっぱりですが、いつもに比べて汗をかきません。冷夏です。曇りばっかり。
冷夏といえば1993年、鹿島を中心とした西日本の豪雨や奥尻島の地震があった年です。

まあ、16年ぶりってことなんですが、自然のサイクルにしてみればマスコミが騒ぐほどのことでハアないようです。そのまえの1980年の冷夏(セントへレンズ火山が噴火)の方が寒かったような気がします。

現場のカーラジオで、温暖化して亜熱帯的になったから豪雨が増えたんだというヒョーロンカがおりましたが、地球規模の気候変動サイクルなど少し勉強して頂いたほうがよいでしょう。


あんしん宅地のHPがリニューアルされました

2009年07月28日 | 盛土が安定すれば安心
あんしん宅地のホームページがリニューアルされておりました。

あんしん宅地 http://www.あんしん宅地.jp/index.htm

コンテンツの豊富さは失わずにすっきりまとめられており、わかりやすいと思います。
あんしん宅地は、昨年のリーマンショックによる住宅バブル崩壊の影響をまともに受けてしまい、かつこちらが思っていたほど世間は宅地のあんしんや、それにまつわる専門的知識をもち合わせていなかったこともあり、正直空振りに終わった感は否めません。

しかし、ホームページの更新するということは、それでも脈動していることを示すものです。なんとかビジネスにしなければなりません。

国土情報ウェブマッピングシステムの混雑

2009年07月27日 | 雑感

空中写真判読で土地の成り立ちを考察し、防災や環境保全策を構築しようとする私にとって、国土情報ウェブマッピングシステムはとてもありがたいものです。なにしろ一枚3,600円するカラー空中写真が無料ダウンロードできるのですから。

国土情報ウェブマッピングシステム
http://w3land.mlit.go.jp/cgi-bin/WebGIS2/WF_AirTop.cgi?DT=n&IT=p

ところが、今回の山口県の土石流災害被災地周辺では、

只今、大変混雑しております。
しばらくたってから再度アクセスして下さい。

とのこと。専門性の高いサイトでは珍しいことです。


道路はつながってこそ

2009年07月26日 | 各地でのTOPICS

九州北部の豪雨で、九州の大動脈の高速道路が災害を受けたようです。

http://mainichi.jp/select/jiken/news/20090727k0000m040001000c.html

どうも法面上の斜面から崩壊し、斜面全体の崩壊に至ったようです。この場合、日本のインフラが更新時期に差し掛かっていることを如実に物語っています。この場合、生き埋めになった方だけが被害者だけではなくて、経済活動の停滞という長期的な影響も講じなければなりません。

これまでよくあったのは”災害復旧”ということで、”以前とまったく同じ形に戻す”というもので、補強やルート変更といった観点はありませんでした。そして、崩れて”抜け殻”になった箇所にだけ投資し、他の崩壊予備軍というべき斜面をケアしてきませんでした。

先の地形発達史の話しではないですが、時間軸をどう考えるか、技術者に求められているように思います。


空中写真で読み解く土地の歴史

2009年07月24日 | 災害の記憶と想像力

山口県の土砂災害被災地の空中写真を見てみました。国土地理院が1970年代半ばに撮影したカラー空中写真は高解像度で、地域によっては耕地整理前の土地利用がのこっており(言いかえれば地形なりに農地がつらなっており)、土地の成り立ちが読み取りやすいのです。

結論から言えば、被害を受けた老人ホームは扇状地上に位置していました。しかし、いわゆる教科書的な(土石流危険渓流の看板の絵にあるような)扇状地ではありません。老人ホームの上流域には段丘化した扇状地があり、その上流域が山地になってます。そして、渓流は真尾(まなお)川に合流し、真尾川はさらに大河川である佐波川の低地に扇状地を作っています。

このことは国土地理院が撮影した空中写真をみるとさらによくわかります。
http://photo.gsi.go.jp/topographic/bousai/photo_h21-0721ooame/orthophoto/image/C1_N.jpg

災害は確かに悲惨な出来事です。しかし、こうしてみてみると、災害となる現象は、私たちが暮らしている土地を形成するヒトコマであることがよくわかります。


砂防ダム

2009年07月23日 | 災害の記憶と想像力

山口県の豪雨災害では、砂防ダムが決壊した例や、逆に砂防ダムが機能を発揮した例が報告されました。

途中2カ所に設置された砂防ダムが機能せず下流まで流れ込んだとみられる
http://www.daily.co.jp/society/national/2009/07/23/0002155307.shtml

砂防ダムが機能を発揮した例は牛山先生のホームページにUPされていました。

想定を超える土砂量が、、と記事にはありますが、実際に土砂量の想定は実に難しい(本当は不可能)のです。しかし、その流域や地形がどのような成因をもっているか、ということは想定できます。数字にした方が確かに事業は成立しやすいのですが、質的な側面を考える機会を奪ってしまいます。


山口県の豪雨災害(2)

2009年07月22日 | 災害の記憶と想像力
牛山先生のブログにこんなコメントがありました。

  • 老人ホームの被災によるまとまった犠牲者の発生は,1998年那須豪雨の福島県西郷村での事例と共通しているように思われる.

    1998年の豪雨災害では、障害者施設が被災しました。渓流の勾配は10度程度だったものの、かなり土壌化、風化した凝灰岩がういた状態で滑ってきたのでした。

  • 山口県で豪雨災害

    2009年07月21日 | 災害の記憶と想像力
    山口県で豪雨災害がありました。まだ詳しいことは分かりませんが、かなり花崗岩の深層風化が進んだ地域の崩災によるものと思います。地形を見る限り、堆積性(扇状地の一種)のなだらかな斜面が広がっているようで、多分歴史時代に数回程度、同じような大崩壊があったのかと推察します(表層崩壊なら多分にあるでしょう)。

    ニュース映像を見る限り、1997鹿児島針原、2003年熊本宝川内の災害に似ているような印象を受けます。被災された方のお見舞いと、一日も早い復旧を願うばかりです。

    鹿と土砂災害

    2009年07月20日 | 維持管理の時代
    だいぶ前に、日本の植生は今が一番良好な状態にある、といった論文を紹介したかと思いますが、渓流調査をしていると、とても不安になってきます。

    もともと保水力の低い植林が多い上に、最近では管理されないので鹿やイノシシがさらに木を食い荒らし折れやすくなっているというのです。流木災害は、土砂をあらぬ方向に撒き散らしますから、とても心配な状況です。

    天然芝と人工芝

    2009年07月19日 | 維持管理の時代
    噂の!東京マガジン という番組で、「校庭の人工芝化」について取り上げていました。私は福岡県の背振山系の花崗岩の土砂を敷き詰めた校庭で育ちましたから、こけるたびに石英や黒雲母をひざにたっぷりつけて、石英の白と黒雲母の黒と赤い血のまじったキズが絶えませんでした。

    今日の番組では、天然芝はとにかく維持管理に手間ひまがかかるということがデメリットとして紹介されていました。しかし、これからは維持管理の時代ですし、自然は微妙なバランスから成り立っていることを教える意味からも、コストを負担と考えないで、未来への投資と考えることはできないものかと考えました。

    メタンハイドレードへの期待

    2009年07月18日 | 技術動向
    http://mainichi.jp/select/today/news/20090716k0000m020065000c.html
    政府は、次世代の燃料資源として期待される「メタンハイドレート」の商用採掘に向けた取り組みを本格化する。今年度から海底に眠る資源を採掘する技術開発に着手、12年度後半をめどに海洋で世界初の試掘を実施し、18年度の商用化を目指す。日本近海には国内天然ガス消費量の100年分に相当するメタンハイドレートが存在すると言われており、資源小国の日本にとって有力な国産エネルギーとなる可能性がある。

    このような技術開発の話は、なぜ表立った話にならないのでしょう。対象となっている南海トラフは地震を解明する構造地質学的見地からも非常に重要なフィールドであり、もっと国を挙げて取り組むべきです。景気対策を良いですが、それを支えているのは産業であり科学技術です。

    現場もブログもマラソン

    2009年07月17日 | 雑感
    暑い中、毎日毎日渓流調査です。水が豊富でとてもおししい。しかし、裏を返せば土石流化しやすいのです(洪水か)。

    毎日といえば、私のブログもそうですが、体が疲れるとどうも有益な情報を出せなくなります。。。。。ってあくびが。。眠い。。