防災ブログ Let's Design with Nature

北風より太陽 ソフトなブログを目指します。

地生態学

2009年04月30日 | Design with Nature
今日は地形・地質と植生遷移の関係を研究する学生さんの手伝いとして、山梨県に来ています。崖錐や土石流堆積物、ローム層や風化花崗岩の分布域と、落葉松、ヤナギ、ニセアカシアとの分布域との対応関係をスケッチして回りました。好天に恵まれ、とても気持ちのいい調査でした。どうも最近、この応用地生態学までレーザー計測で自動的に行うという傾向もあるようですが、やはり現場でつねに動きつづける自然環境を読み解いてこその研究であって、測量で刻々と変化する自然の”断片”ばかりを集めるよりは有意義だと思います。

理系のための法律入門

2009年04月29日 | 防災・環境のコンセプト
http://shop.kodansha.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=257636

というタイトルの本が3月に出ていました。講談社ブルーバックスです。まえがきにこんなことが書いてありました。

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法律は論理的にできています。技術者は究極の論理学である自然法則を勉強されたわけですから、法律は難しくないはずです。自然はミステリアスですが、法は人間がつくったものに過ぎないのです。
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私は文系出身ですが、昔からずっと疑問に思っていることがあります。土木系を中心に、学問の体系と役所の組織体系が似ていることです。これは、「究極の論理学である自然法則」といえるのでしょうか。大学で学んでいても、社会にでて「基準書」をたよりに自然を見ることに慣れてしまうと、"人間がつくったに過ぎない”浅い眼力でしか、自然をみることができなくなってしまいます。

地形認知と津波リスク認知の関係について

2009年04月28日 | 災害の記憶と想像力
牛山先生のブログに、以下の論文が掲載されていました。

地形認知と津波リスク認知の関係について
http://disaster-i.net/notes/2009JDIS_ohta.pdf
要旨:過去に津波災害を経験している地域を対象に調査票調査を行い,津波災害と関係が深い空間情の一つである地形(自宅の標高)に対する認知と,避難行動意向など津波災害リスクに対する認知の関係について検討した.調査は岩手県陸前高田市今泉地区を対象に行われ,521 件の回答を得た.自宅標高を全く認知していない人(無回答)は46.3%にのぼり,実際の標高の範囲内を回答した人は16.5%にとどまった.また,13.2%は実際より高い標高を回答し,24.0%は低い標高を回答した.標高の低いところでは実際より低く認知され,標高の高いところでは無回答が多い傾向がある.自宅標高を正しく認知している人や,実際よりも低く認知している人は,実際よりも高く認知あるいは自宅標高を認知していない人に比べ,津波災害に対する危険度認知が高い傾向があった.また,これらの回答者は津波の際の避難意向も積極的であった.自宅標高の理解と,津波災害に対する防災行動などの間には何らかの関係があると考えられる.標高の理解を支援するような情報整備が重要である.

地形分類や地質以前に、現在地を確かめることすら悩んでしまう日本人。楽しく地理に向き合うムードづくりも大切です。

地質の勉強会の反響

2009年04月27日 | 盛土が安定すれば安心

4月25日(土)に行われた勉強会で、有意義な議論をして頂いた方にお礼方々のメールを出していたら、早速返信がありました。

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今後は、<WBR>やはりLCAを意識していかないと(略)
何事も基礎が重要であるとおり、土木構造物の基礎は地盤です。我々地盤のプロが声を大にして
コントロールしないといけないな、<WBR>と改めて感じました。
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我々地質技術者は、現場を生で見る機会に最も恵まれている人種だと思っています。先日の地盤工学会誌に「盛土は(略)材料劣化がないので寿命も半永久的であり(略)非常に維持管理しやすい構造物」なんて文章がありますが、地質を理解している技術者は、なにか根拠をもっていたとしてもこのような言葉は使わないでしょう。もっといえば、盛土は人が造るものなので、地層累重の法則のように素直ではありません。そして何万年ももちません。ですから、「永久」だとか「維持管理しやすい」だとか感想は持ちにくいはずです。

自然科学4分野(物理・化学・生物・地学)のうち、地質は直接モノを生産しないので地味です。知的産業としての地位をもっと高めないと、即物的な、その場しのぎ的な(定額給付金的な!?)勢力に流されてしまいます。地球のLC(ライフサイクル)を読む特技を持っている、地形・地質技術者の持つ役割はとても重要なのです。


建築技術 - 釜井先生の記事 ‐

2009年04月26日 | 盛土が安定すれば安心
昨日の勉強会で、宅地盛土や耐震化の話をしていたら、建築技術という雑誌の2007年4月号「住宅の地盤の診断と補強・補修」に、釜井先生のコメントで興味深いものがあったのを思い出したました。

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大都市では東京直下型地震(略)などの災害の発生が危惧されている。これらの地震の発生を防ぐことはできない。しかし、宅地(敷地)の地盤災害リスクを知ることによって、被害を大幅に軽減することは可能である。このリスクを規定する宅地の条件は、一見すると様〃であるが、じつは時間軸上でみると容易に整理できることが分かってきた。
すなわち、重要なヒントは広い意味での土地の歴史の中にある。時間軸を自由に行き戻りしながら、過去から十分に学び、命を守る想像力を養うことが重要である。
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時間の概念がないと、地盤は変化するものという概念がないと、一次的な調査で得られた定数を信じ込み、誤った方向に走りだし止まらなくなります。なんでその現象は、その場所に、その規模であるのかということを常にイメージしておかないと、イニシャルコストにだけ目を奪われて、ライフサイクルコストの壮大な無駄を生みだしかねません。

例えば、盛土にしても、時間がたつほど圧密して強くなと言われているのですが、古い街並みを歩いていると擁壁の石の間から水や土が大量に湧出していることも少なくありません。これは、盛土内部で微妙に地下水の流動が変化し、内部が落ち着かない状態にあると考えざるを得ません。

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辞書で、「建設」と「建築」をひいてみました。

建設:施設・道路などを、新たに造ること。「ダムを―する」
    新しい機構や組織を作り上げること。「平和な社会を―する」
建築:家屋などの建物を、土台からつくり上げること。また、その建物やその技術・技法

時間軸の概念、それに応じた空間軸の概念、それに基づく事象の想像力などは、建設の方でしょうね。「建築」的な議論とは言いませんからね。多くの地質技術者が目指しているのは建設ですが、”売れるものを作る”という意味では、建築的センスがいるでしょうね。

今回の記事はちょっと抽象的でした。

地質の勉強会

2009年04月25日 | 維持管理の時代
今日は同業の技術者同士での勉強会があり、私も「防災対策施設の維持管理と今後の取り組み方」という内容で発表しました。地すべり対策施設が荒れ果てていることや、宅地の擁壁の老朽化などについて話しました。

維持管理が進まない一因として、それが防災施設であり、どのような役割を果たすべきものなのかということを説明しなければならないことを述べました。だいたい土石流危険渓流にしても、急傾斜地崩壊危険箇所、地すべり防止区域にしても、その区域と現在地を簡単に表示しているだけですから、なんのことだかわからないのが実状だと思います。

単に模式図だけでなく、アニメーションでもつくって、親近感のある絵でも描いてみましょうか。

地質技術の勘所は(勘所というのも古い言い方ですが、ポイントだと心に響かないですよね)、限られた情報(露頭や転石など)から、地球の歴史を想像し、それに基づいて今後どうなるのかを定性的に予測するところにあるからです。

斜面の健康診断

2009年04月24日 | 技術動向

地すべり学会の関西支部は、6月にいつも面白い企画があります。といっても太田さんが主催されることが多いので、実用的で興味深いテーマとなるのも自然にうなづけます。

今年のテーマは「斜面の健康診断」です。私もそろそろ体の健康診断があります。堂々たるメタボです。それはさておき、案内はこちら。

http://www.landslide-soc.org/branch/kansai/2009kansai_sympo.pdf

特別講演の松岡先生は、文献調査でよく目にしました。場所は大阪です。社長は経費節減といってましたが、やすい夜行バスで行きたい気分です。土日であれば、高速代1000円ですからねえ。でも時間がかかるなあ。


話のわからない人たち

2009年04月23日 | 雑感
スマップの草なぎさんが逮捕されたニュースが流れまくっています。よ~く聞けばただの酔っ払いなのですが、総務大臣はしゃべるは、家宅捜索はするわ、

でもどうなんでしょう。いい人であることはわかっているので、暴れたからこうしなさいといったマニュアルでもありそうな感じです。

マニュアルといえば、最近自然現象がマニュアルどおり動いてくれないと困ると本気で言う人がいることです。裸になりたいという気持ちはわからんでもないがねという都知事のしゃれはよかったです。

サイエンス・ワールド 地滑り

2009年04月22日 | 災害の記憶と想像力
サイエンス・ワールド 地滑り
http://www.lohas-plaza.com/goods/AHBN-10014.htm
ナショナルジオグラフィックチャンネルで放映され反響を呼んだ科学実験番組のDVD化第9弾。地上でもっとも危険な天災と言える地滑り。なぜ地滑りが起こるのか、予測、対処することは可能なのか、地滑りが引き起こす津波などを専門家たちが検証する。

社長がレンタルDVDを貸してくれましたので、ちょこっとみました。見ただけですぐに買いました。地滑りといかにも古い日本語で書いてあるので、土塊が原型を保ちながら緩やかに滑る”狭義の地すべり”をイメージしていたのですが、落石や土石流もあるようです。

表現力係数

2009年04月21日 | 技術動向
太田さんのブログに、「理系のための人生設計ガイド」という本が紹介されていましたので、早速買ってみました。http://www.bk1.jp/product/02997185

このうち興味深かったのが「表現力係数」です。

実力J×表現力H=社会的評価

どんなにすばらしい発明をしたとしても、それを論文として発表するなどの表現活動を行わなければ、それは社会での評価につながらない。そういうケースは、J10×H0=0

ブログをつくることも表現力を高めることに直結すると描いてあります。私も調子が悪くなると「雑感」のカテゴリーが増えてしまいます。

特に、地盤や地質などど言う現象は、とても限られた情報から目に見えない地下の世界を表現する技術です。しかも、現在は専門家ではない人にもわかりやすい説明が求められているので、どちらもバランスよく鍛えておく必要があるでしょう。

アオダモ…ないんでしょうか?

2009年04月20日 | 雑感

イチロー選手が困ったことになっているそうです。

イチローの名刀ピンチ
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090421-00000523-sanspo-spo
天才打者のバットを17年間作り続けるミズノ社のバットマイスター・久保田五十一さん(66)の証言だ。イチローに渡される相棒の数は、年間で10-12ダース。この本数を供給するには、アオダモの角材1万本が必要だ。数年前のピーク時は角材6年分の備蓄ができていた。だが、最近では1年分のストックしかない状態が続いているという。

野球のバットに使えるアオダモは、北海道の日高山地が名産地なんだそうですが、バットに使える成木になるまで80~90年くらいかかるらしいのです。日高山脈は,約5,000万年前から1,400万年前につくられた変成岩や深成岩からできています。これらの岩石が山脈の稜線にそってほぼ南北方向に帯状に分布し,「日高変成帯」と呼ばれています。ここは,北米プレートとユーラシアプレートのちょうど境界部に位置します。日高山脈の浮き上がり(山脈上昇)は,約1,300万年前にはじまり,地質構造の解析から「北米プレート南縁の千島弧が西進して南西端が西側に衝上したためとされています。

日米の狭間で、こんなドラマもあるんです。


宅建の試験内容変更

2009年04月19日 | 資格に関すること
朝日新聞にこんな記事がありました。

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今年から宅建業法の出題を増加
http://www.asahi.com/housing/jutaku-s/JSN200903160002.html

 不動産適正取引推進機構によると、宅地建物取引主任者試験は09年度から、出題内容が大幅に変更されることになった。 取引主任者の業務に即した実務的試験の性格を強めるため、宅地建物取引業法から出題を増やす。これは、今年の宅建試験について検討する第1回試験委員会で決まった。
 具体的には、現在50問中16問となっている宅建業法分野からの出題が20問程度になる模様だ。その場合には、民法が2問、税務が1問、法令上の制限が1問減らされることになる。

 同推進機構では、不動産取引リスクが高まっているため消費者保護の観点から、従来以上に業法に精通した主任者を輩出する必要があると判断した。
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 これまで宅建業法の分野は、一般的に得点源とされ満点を目指すべきという参考書も多くあります。それだけに平均点があがり、合格者最低点もあがるのではないかという噂(私にとっては懸念、、、汗)もあるようです。地価の下落に伴い、不況の間は受験者が減るのでねらい目。さらにインテリアや建築とあわせて専門性を高めるとよい(日経WOMENより)。

 私は、いまの建設コンサルタント業界に勤めてからは、法令上の制限(土砂災害防止法、都市計画法、宅地造成等規正法)と土地(地形・地質・地盤)ですが、こちらは減るようです。不動産取引に関わった事がないので、問題文をよんで具体的なイメージを持つ事ができませんのでちょっと不利です。

 実際には地域ぐるみで無意識のうちに地すべりを誘発していたような事例もありますので、むしろ幅広い知識を問うた方がよいと思うのですが。。。


文系的センス

2009年04月18日 | 雑感
この間気になることを言われました。

「下河さんのような文系的センスは私にはない」というものです。確かに、技術職の人は職人気質か、あるいは地質やっているひとは、知力・体力を振り絞って見つけた知見を簡単に伝えたくない(思いっきり語弊がありそうですが)という想いが強いのでしょうか。

どうも、サイエンスとビジネスとの間に距離を置いているひとが多いと思います。

芥川賞作家 津村記久子 さん

2009年04月17日 | 雑感
妻が愛読する日経Womenに、芥川賞作家の津村記久子さんという女性が、地質調査会社に勤められていることを知りました。技術職ではないようですが。しかし、会社名は伏せられていました。ウィキペディアでは、土木系のコンサルタント会社勤務と書いてありました。

閉鎖的なんですかねえ。わたしなら、こんな豊かな感性の持ち主がいると、大きくアピールしますが。。。

漢検

2009年04月16日 | 資格に関すること
最近「漢検」が話題になっています。テレビで見た限りでは、漢字の読み書きの延長戦が続いているような試験問題です。正確に漢字を使えることは大変意義深いことだとは思いますが、試験である限り断片的な知識があればよいのであり、会話のムードをよくするしゃれた使い方は問われないようですね。例えばスポーツジャーナリストの二宮清純氏が使った言葉で「地上の正論」というのがあります。もちろん「机上の空論」に対抗した言葉だと思います。

ただただ試験で知識の量を問うだけ。いまのエコブームにも感じるのですが、知求の慣例化が顕著になってきています。こんなのもだめでしょうか。

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一級土木施工管理技士の替え玉受験の問題も発覚しました。