防災ブログ Let's Design with Nature

北風より太陽 ソフトなブログを目指します。

鹿沼軽石の載る40°の崖錐

2010年05月17日 | 災害の記憶と想像力
先日行った現場で、勾配40°以上ある崖錐(急傾斜地などから剥離した岩屑類が下部斜面に堆積して出来た地形です。一般には半円錐状を示します。そういえば宅建にも出ていた記憶があります)の上部に鹿沼軽石が載っている露頭を見つけました。

鹿沼軽石とは群馬県の赤城火山を給源火山(更新世約3万前)とする約1mの厚さの軽石層がで、見られる。全体として黄色に見え、園芸用として市内各地で採掘されていて、ホームセンターでも売っています。これが最上部に近い位置にあるとおいうことは、基本的にはその堆積面は3万年間安定していたことを物語っています。勾配が40°もあるので表面は落石・小崩壊で乱れてはいますが、なかには全面にコケの付着した2mくらいの岩塊も多く残っています。地表水はありません。

最近は30°、高さ5m以上の崖を一括してレッドゾーンとして法的な力を持つようになっていますが、このような地形発達史的背景や地表・地質踏査の成果をなんとか生かせないものでしょうか。

今週の防災格言

2010年05月05日 | 災害の記憶と想像力
[今週の防災格言]

 『 あのときの私は、他の多くの人とともに自分が死ぬであろうとは、
また、これまでの短い一生、<WBR>これからの長く大きな可能性のすべても
今ここで私とともに失われるとは、<WBR>少しも頭に浮かんでこなかったの
だから不思議である。
あのときの状態を考えれば、生きるよりも死ぬほうが、
より大きな安らぎをもたらしたであろうに。 』

 小プリニウス(AD61~112 / 古代ローマ帝国の文人 元老院議員 学者)

 AD79年8月24日、イタリア・<WBR>カンパニア州にあるヴェスヴィオ(Vesuvio)火
 山が大噴火し、古代ローマ帝国のポンペイ市(当時の人口2万人)<WBR>は10mの
 火山灰に埋もれ壊滅した。その後、<WBR>歴史とともにポンペイの災害は忘れ去ら
 れたが、1700年後に遺跡が偶然発見されることになる。
 この災害で伯父(大プリニウス)を亡くした甥の小プリニウス(<WBR>ガイウス・
 プリニウス・カエキリウス・セクンドゥス / Gaius Plinius Caecilius Sec
 undus)は、<WBR>友人のタキトゥスの求めに応じ伯父が亡くなった時の様子を書
 簡にしたためて送っている。<WBR>今ではヴェスヴィオ火山噴火を知る貴重な資料
 となっている。格言は、塩野七生著『ローマ人の物語 VIII 危機と克服』(
 新潮社 1999年)第六章より。

幸田 文 「崩れ」

2010年04月22日 | 災害の記憶と想像力
今日は長野県小谷村の稗田山大崩壊の現場を見てきました。幸田文さんの文学碑もありました。

幸田文「崩れ」
http://www.amazon.co.jp/%E5%B4%A9%E3%82%8C-%E8%AC%9B%E8%AB%87%E7%A4%BE%E6%96%87%E5%BA%AB-%E5%B9%B8%E7%94%B0-%E6%96%87/dp/4061857886/ref=sr_1_1/249-0465322-8205130?ie=UTF8&s=books&qid=1194481969&sr=8-1
何も美しいもの、いいものだけが人を惹くのではない、大自然の演出した情感はたとえそれが荒涼であれ、寂寞であれ、我々は心惹かれるのだ」。72歳にして崩れを目にし、心の中の種が芽を出し幸田文。各地の崩れを取材し、自然とそこに生きる人々のくらしを淡々と語りながら自分を振り返る。一つ一つの景色のたしかな描写。引き締まった緊張感がある。

日本列島”お豆腐”論

2010年04月18日 | 災害の記憶と想像力

以前、ある地質屋さんとの酒の席での話です。

 藤田和夫先生の名著に「日本列島砂山論」というのがある。その内容をざっと言うと、六甲山の東西の圧縮の力で断層ができ、本来固いはずの花崗岩山地が岩盤が砂山のようにぼろぼろになっていくことを指摘したものだ。
 
これはいかにも関西の山々を歩いていおられた藤田先生らしい。ところが赤石山地や東北の山地を歩いていると、いわゆる二重山稜やその周辺の山頂小起伏面、”山ひだ”や谷の少ない岩盤クリープを反映した斜面に出くわすことが多い。そんな斜面はいかにも”ゆるい”いう印象がある。地すべりなんかは水を多く含んでいる豆腐の山のような印象だ。水が抜けて固くなって”高野豆腐”のようになってしまえば、山は安定するんだろうけど。でも固くなったら、景色も固くなって、日本独自の美しい唱歌やメロディーなんかもなかったかもしれないねえ

豆腐の山論の是非は別として、現場を歩き山の気持ちになるとはこういうことかなあ、と思います。定数やシミュレーションの結果では、酒は進みません。


絵図も公開される時代

2010年04月14日 | 災害の記憶と想像力
山梨県身延山にある七面山には大崩壊地があって、安政年間の地震によって崩壊したのではないかといわれていましたが、最近になってそれ以前から崩壊地として存在していた事が絵図の検証によって明らかにされました。

http://www4.ocn.ne.jp/~onagai/album2.html

現在は絵図もスキャンされて公開されるようになりました。
http://www.d1.dion.ne.jp/~s_minaga/sos_minobusan.htm

数値化できないものに価値を見出さない人もいますが、貴重な資料です

脱・ゆとり教育

2010年03月26日 | 災害の記憶と想像力

4月から教科書の内容がずいぶんと増えるんだそうです。増えるというか元に戻るだけなのですが。私が得意だった地理教育に関してはどうなるのでしょうか。質実的な内容の充実をしないとまずい状況です。情報はあふれかえっていますし、地震が起こるとGoogle Eeathをみれば震源分布も中央海嶺も全てわかるのです。地図帳や教科書よりも詳しく最先端の情報が掲載されているわけです。

そうなると、地理の教科書は、”考えるヒント”集にした方がよいのではないかと思います。例えば、下山先生のブログにあったように、最も地盤が悪く、揺れも大きい地区が密集地区である、ということが分り、さらに、比較的安全な地区ほど都市化が進んでいないこと:地盤の良いところほど人口が少ない、これはなぜなのか


南海地震にそなえちょこ

2010年03月25日 | 災害の記憶と想像力
以前の会社に勤めていた先輩が結婚されるということで、お祝いに好物だったワインを送ったら大変喜ばれ、お返しに”南海地震に備えちょこ”というお酒が送られてきました。防災っていえば、ネガティブに捉えられがちですが、こうやって楽しめるものに、酒の肴にするのもいいかもしれません。

防災格言より

2010年03月10日 | 災害の記憶と想像力
助けを求めると助かりにくい逆説もあるようです。

------------------------------------------------------------------------------------------------------------

『 防波堤があろうがなかろうが、自分の命は自分で守る意識が大切だ。 』

山下 文男(1924~ / 作家 津波災害史家 代表作「津波ものがたり」)

山下文男(やました ふみお)氏は岩手県三陸海岸生まれの作家。
1896(明治29)年の明治三陸地震津波(死者・行方不明者21,959人)では、山下氏の一族8人が溺死しており、自らも少年時代に津波や昭和東北大凶作(1930~34年)を体験した。1986(昭和61)年から歴史地震研究会の会員として津波防災の活動に従事されている。

格言は、明治三陸大津波から百年追悼式典(岩手県田老町で1996(平成8)年開催)に出席したときの言葉より。

―――この式典の約4ヶ月前(2月17日)に発生したニューギニア沖地震(M8.2)で太平洋沿岸に津波警報が発令された。ところが三陸沿岸の住民の96%が避難勧告を知りながら「我が家だけは安全だと思った」という理由から、実際に避難した人はわずか19%だけだった。高さ10mの防波堤があるからといって安心してはいけない、と警鐘を鳴らしたもの。

週間防災格言

2010年03月02日 | 災害の記憶と想像力
タイトルのようなサイトを知りました。

週間防災格言 
http://yaplog.jp/bosai/


『 どんな災害、天変地異も、人間には防ぎようがない。 』

立松 和平(1947~2010 / 作家 日本ペンクラブ会員・理事)


テレビ朝日系の報道番組「ニュースステーション」の出演で有名な作家の立松和平(たてまつ わへい)氏は、早大政経学部在学中に「自転車」で第1回早稲田文学新人賞を受賞。宇都宮市役所などで勤務の後、1979(昭和54)年から文筆活動入りし、1980(昭和55)年「遠雷」で野間文芸新人賞受賞。2002(平成14)年には歌舞伎上演台本「道元の月」で大谷竹次郎賞を受賞。パリ・ダカールラリーに出場するなど行動派の作家として知られる。
格言は、浅間山噴火による天明の大飢饉を描いた著書『浅間』(新潮社 2003年)について、2006(平成18)年2月28日に都内で開催されたスピーチ(「日本ペンクラブ 名スピーチ集」(集英社 2007年))より。

――――いい世の中だったら最小限の被害にとどめられても、悪い世の中だったら、天明の飢饉のように被害が限りなく増幅していってしまう人災ともなっていくのです。
歴史上最悪の火山噴火による災害があったが、人は生きているかぎり最後の生命力をつないでいかなければならない。災害にみまわれた時に最後の生命力をつないでいけるような、そういう物語をつくりたいと思いました。
希望は語らなければならない。絵空事ではなく、ひとつひとつ「生」を積み上げていって、登場人物が生きられるようにできる、それが文学の力だと思います。

大陸移動説

2010年02月28日 | 災害の記憶と想像力
私は地理屋ですからウェゲナーが提唱した大陸移動説など好きで、大陸の分裂する図はいつまで見ていてもあきません。今回発生したチリ地震は、地球の定期的な鼓動のひとつに過ぎないのですが、その津波が日本でも浸水被害を及ぼすあたり、地学を学ぶきっかけのひとつもあります。

防災格言より

2010年02月27日 | 災害の記憶と想像力

『 どんな災害、天変地異も、人間には防ぎようがない。 』

立松 和平(1947~2010 / 作家 日本ペンクラブ会員・理事)

テレビ朝日系の報道番組「ニュースステーション」の出演で有名な作家の立松和平(たてまつ わへい)氏は、早大政経学部在学中に「自転車」で第1回早稲田文学新人賞を受賞。宇都宮市役所などで勤務の後、1979(昭和54)年から文筆活動入りし、1980(昭和55)年「遠雷」で野間文芸新人賞受賞。2002(平成14)年には歌舞伎上演台本「道元の月」で大谷竹次郎賞を受賞。パリ・ダカールラリーに出場するなど行動派の作家として知られる。
格言は、浅間山噴火による天明の大飢饉を描いた著書『浅間』(新潮社 2003年)について、2006(平成18)年2月28日に都内で開催されたスピーチ(「日本ペンクラブ 名スピーチ集」(集英社 2007年))より。

――――いい世の中だったら最小限の被害にとどめられても、悪い世の中だったら、天明の飢饉のように被害が限りなく増幅していってしまう人災ともなっていくのです。
歴史上最悪の火山噴火による災害があったが、人は生きているかぎり最後の生命力をつないでいかなければならない。災害にみまわれた時に最後の生命力をつないでいけるような、そういう物語をつくりたいと思いました。
希望は語らなければならない。絵空事ではなく、ひとつひとつ「生」を積み上げていって、登場人物が生きられるようにできる、それが文学の力だと思います。

立松和平さん、、、、すきだったなあ

斜面崩壊の75%は風倒木地

2010年02月07日 | 災害の記憶と想像力
太田さんのブログに神戸新聞の記事が掲載されていました。

------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
斜面崩壊の75%は風倒木地 - 04年台風被害で不安定に
http://livedoor.2.blogimg.jp/ohta_geo/imgs/0/1/01e0fa35.jpg
 調査団長の澁谷啓(しぶやさとる)・神戸大大学院工学研究科教授(53)は「強い雨で土の強度が低下し、安定性を失った斜面が相次いで崩れた」とみる。
 斜面崩壊が起きると、土砂が道路をふさいだり河川を埋めたりして、被害が拡大する恐れがある。澁谷教授は「崩壊個所を局所的に修理するだけでなく、風倒木地のように潜在的な危険性がある場所については、予防にも力を入れるべきだ」と強調する。
 神戸大では、斜面崩壊を防ぐため、排水材などを地中に埋めて雨水を素早く排出する低コストの工法を開発中で、今後、実証研究にも取り組むという。
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
昨年ついた大量の補正予算でいま砂防事業が大忙し、砂防計画基本土砂量の見直し(何度やるんでしょう)の一環で、過去の崩壊、土石流の実績を空中写真判読していますが、崩壊が集中しているのは伐採跡地、倒木地が多いなという印象は持っていました。

このブログでもなんどか紹介しましたが、こういうことです。

「砂防とは何か?ということについて本質的に理解している人は決して多くない!」 地球は「植生連続」と「浸食輪廻」という二つの大きな営力の釣り合いで保たれている。人間の営みは「浸食営力」にあたる。「砂防」とはその終局において「緑化」を目的とするものである。」 「緑化と言っても、草でも木でも何でも良いから見たところの緑化になればよい、という意味ではない。植生連続における極盛相climax phase、すなわち理想の森林を目指すものだ

豪雪の年は

2010年02月06日 | 災害の記憶と想像力
新潟県では27年ぶりの豪雪だそうです。豪雪の影響は冬だけではありません。春先突然気温が急上昇したりする日があると、たっぷりたまった地下水が解け、間隙水圧が急上昇→地すべりの発生につながります。また、夏季にも地下水がたっぷり残っていることになると、同じく地すべりや大規模な山腹崩壊が発生します。雪崩が同時多発すれば、山肌の表層土がはがれ裸地が形成されます。

地すべりは棚田として利用され、豊富な地下水は豊穣の大地をもたらしますが、その裏にこういった災害もあるのです。

15年前

2010年01月16日 | 災害の記憶と想像力

明日で阪神・淡路大震災から15年です。以前に書きましたが、当時私は学生でした。卒業論文がひととおり目途がついたので、これからは少々残していた後期試験に向けて勉強、そのまえの小休止といったことを思っていました。

-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
TVで神戸新聞の7日間を見ていました。写真を暗室で現像し乾かすシーンがありました。昔は一枚一枚に心を込めていました。いまデジカメ時代になって、忘れていたことを思い起こしました。


土地履歴マップ公開へ

2010年01月06日 | 災害の記憶と想像力
埋め立て地、洪水あった土地履歴マップ公開へ(読売新聞) - goo ニュース

 国土交通省は、全国の主要都市の自然災害に対する安全性がわかる地図作りに乗り出す。過去の土地造成の歴史や、地震や洪水などの被災歴を調べて5万分の1の地図に反映させ、インターネットで公開する。2010年度、首都圏の人口集中地区から始め、10年間で30万人以上の都市を網羅する計画だ。

 東京など都市部では、開発によって自然地形が大きく変わり、湿地や旧河川など住宅に適さなかった土地も、盛り土や埋め立てなどで宅地化されている。こうした土地の改変歴や、過去の河川のはんらんなどによる災害の資料は、省庁や自治体などがばらばらに所有しているため、土地の安全性を総合的に判断することが難しかった。

 国交省は、地震による被害や、集中豪雨による土砂崩れ、高潮による浸水など地域ごとの自然災害の歴史を、関係機関に問い合わせて収集する。

 地形の改変歴については、地形分類図のほか、国土地理院が保管する明治時代の地図、終戦後に行われた米軍による空撮写真などの資料も活用。100年前と50年前の土地利用分類図を作り、現在と比較できるようにする。

 被害などの情報がつかみやすいように、地図に災害年表や、解説文も加える。

 高度成長期に開発した宅地などでは、昔の地形を知る人も少なくなってきた。同省国土調査課によると、地図を公表することで、防災に配慮した土地開発や、適正な土地取引を促す狙いがある。

----------------------------------------------------------------------------------------------
肝心なのは最後の一文です。地図を公表することで、防災に配慮した土地開発や、適正な土地取引を促す狙いがある。国土調査課は旧国土庁の流れなので、河川局や道路局に比べ少し影が薄かったので、本当に資産価値を客観的に評価できる影響力を持ちうるでしょうか。