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定性的なモデリング-東北学院大学の宮城先生

2008年06月18日 | 災害の記憶と想像力

昨日NHKのニュースを見ていたら、東北学院大学の宮城豊彦先生がヘリに乗って、岩手・宮城内陸地震で発生した『地滑り』について、解説されていました。我々技術者の間ではひらがなで「地すべり」と書くことが多いのですが、NHKのニュースでは『地滑り』となっていました。やや古めかしい感じですが。

それはさておき、宮城先生とは私もお世話になったことがあります。実は今回の地震で発生したような地すべりの痕跡は、東北地方の日本海側を中心として無数に存在しています。あの有名な世界自然遺産『白神山地』のブナの原生林も、実は地すべりによって形成されたでこぼこしたなだらかな斜面に、豊富な水が蓄えられた土壌の上に成立しているのです。

地震によってすべての地すべり地形が成立するわけではありませんが、今回の地震や2004年新潟県中越地震の例を見ていると、美しい森林の基盤をなす地形の大まかな骨格は、やはり地震によって繰り返しつくられてきたのではないかと思ってしまいます。

先のコメントにも書きましたが、こんな見てきたような絵のようなことが本当に起きるのだろうか?」と思いつつ、『(初生的地すべりは)地震が引き金となって形成されたと考えられる』という文言を書いてきましたが、ほんまかいなあと重いいていました。でも、やはり現場だけが教科書です。

宮城先生のコメントは、放送時間が限られていたためとても短かったのですが、今回の地すべり地形は、実は東北地方の代表的な景観で、いまでこそ地肌がむき出しで生々しいが周囲にこのような地形がたくさんあるとおっしゃっていました。TVに出る学者先生方は、だいたい地震のメカニズム論に終始し、宮城先生のように、地形発達の定性的モデリング、すなわち地表地質踏査と空中写真判読からいまの地形がどういう経緯で出来たかということのイメージトレーニングの積み重ねを感じさせる人はいません。

地質技術者は、実はこの定性的モデリングのプロです。頭の中に映画館のようななものがあって、タイムマシンに乗った気分で、地学的根拠に基づいた地球紀行を製作しています。

そのことはロマンだけではなく防災や環境保全に対して最も実用的であることを、もっとアピールしなければなりません。そうでないと、パソコンの数値計算が答えで現場が間違っているという輩がどんどんはびこってしまいます。


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