防災ブログ Let's Design with Nature

北風より太陽 ソフトなブログを目指します。

気象庁が「震度階級関連解説表」見直しへ

2008年11月30日 | 盛土が安定すれば安心

気象庁が震度階級を見直しました。全面的に震度計の観測データを使用する形に変わり、客観性や迅速性が高まったとしています。

気象庁のホームページ
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/shindo/kaisetsu.html

ただし、項目が増えたために後から震度5だった、いや6だったともめたりしなきゃいいのですが
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太田さんに、資産5000万円の壁という概念を示した論文を紹介していただきました。

高坂健次(2005):中越地震1年 進む階層化社会のなかで「被害の階層性」は克服できるか-総資産5,000万円の壁をどう考えるか-,世界(岩波書店),pp.190~198

あんしん宅地のコラムで、太田さんの解説を交えてわかりやすく説明されています。

http://www.あんしん宅地.jp/col3/col3.cgi?mode=dsp&no=7&num=
日本語ドメインなので、IE7以上です。

普通に生活している中間所得者層が一瞬にして貧困層になってしまう、というのが災害の怖さです。命さえ助かればよいというのは、被災後は何とかなるという楽観論者と言わざるを得ません。関西学院大学の高坂健次先生という方が、「総資産5000万円の壁」ということを見出されました。災害前総資産が5000万円より多い人は災害後でも災害前の暮らしに戻ることができますが、それ以下の人はスッカラカンになった上に負債を抱える危険性が高く、マイナスのスパイラルに陥る可能性が高くなるのです。

気象庁の震度階級では、ライフラインなどの項目が追加されていますが、地震発生時の一瞬はそうでも、その後の人生設計の階級は、こちらの区分の方がリアルです。そして、地盤技術者は、もっと世間や災害の社会学的背景を知る必要があるのでしょう。


銀座地すべりを求めて

2008年11月29日 | 防災・環境のコンセプト

先日銀座地すべりに関する記事を書いていたら、太田さんからメールを頂戴し、実は銀座地すべりは日本地すべり学会誌の随想<第17巻第1号(通巻61号)(1980年6月)に出ていることを教えて頂きました。

http://www.landslide-soc.org/publications/gakkaisi/soumokuji.html

実はそのメールを頂戴したとき私はなにをしていたかといえば、地すべり防止工事士の面接試験を受けておりました。面接官は2名で、そのうち私から左側の方は、何年もまえからよ~く知る大学の先生でした。なんともカミカミの他人のふり。そして、会場である砂防会館のすぐ近くには、国立国会図書館がありますので、高野秀雄(1983)『斜面と防災』を読んで見ようと思い足を運んでいたのでした。著作権の関係で、本の前半部をコピーしてきました。

テーマの選びかたや文章もとてもわかりやすい本です。先日太田さんのブログで、「盛土は地震で船になる」という格言がありましたが、『斜面と防災』の22-23ページにも「船と船台」というタイトルの文章がありまして、

全国各地で行われている裸祭りの際、押し合っている若者たちの体にバケツの水を浴びせるのは、体と体の間のm札を少なくして、けがをしないために行うものであり、---(中略-いろんなたとえ話あり-)土と土の間、岩と岩の間に水膜が形成されても同じことであって、必ずしも大量の水が必要であるとはいえない。

このように身近な事例を使って解説されると、とてもイメージしやすいですね。

出版されたのは1983年、私はマサ土からなる雨の日の校庭に形成されるリル・ガリーのシステムを教室のベランダからみて楽しんでいる変わった小学6年生でした。

その後四半世紀がたちましたが、このような優れた教科書がなくなることは、とても大きな損失です。ンット記事のコピペの集合体がいかに薄いか、PCの自然観がなんで誤りにつながるのか、、考えるヒントさえ失われるからです(ただ、粘着力のところで”ハエ取り紙”のたとえがでるのは、”古さ”を感じます。今の学生はまず知らないでしょう)。

実際の銀座では、高級ブランド品が10%値下げしたそうです。売りたい本音と価値がさがったと思われないという境目が10%なのだそうです。『斜面と防災』は、定価は3000円弱なので、当時学生以上だったら”安い”と判断してかったでしょうが、いまはネット上で13,600円になっています。ショーウインドウにはないのに価格が高くなっています。悲しいことです。


裁判員制度

2008年11月28日 | 防災・環境のコンセプト

来年から裁判員制度が始まります。いまのところ素人に重大犯罪の判定の責任の一部を丸投げする精度にしか見えません。そんなことは法学部の大学院生に研修的に行った方がよほどためになると思います。

さて、これからは土石流・がけ崩れ・地すべりの著しい危害の恐れのある区域(いわゆるレッドゾーン)に指定されたら、こうなります。

<建築物の構造規制>
 居室を有する建築物は、作用すると想定される衝撃に対して建築物の構造が安全であるかどうか建築確認がされます。

<特定の開発行為に対する許可制>
 住宅宅地分譲や災害弱者関連施設の建築のための開発行為は原則禁止となります。ただし、基準に従ったものは許可されます。

<建築物の移転>
 著しい損壊が生じるおそれのある建築物の所有者等に対し、移転などの勧告が図られます。

ここで、地盤の専門家のセカンドオピニオンが求められるのですが、それこそ客観的な判断を下す裁判員みたいなものでしょうか


ああまたか

2008年11月27日 | 雑感

オリエンタル白石の会社更生法申請がでておりました

建設的な議論という言葉をつかうことがありますが、ここまでくるとマイナスイメージですね。
独創的なのがいいのでしょうか。今年はノーベル賞も相次いだことですし


銀座地すべり

2008年11月26日 | 維持管理の時代
先日紹介した銀座地すべりなる言葉がつかわれている『斜面と防災』があるかとうか検索してみました。そしたらジュンク堂でもなし、紀伊国屋書店でもなし、丸善書店でもなし、アマゾンでは何と13600円。よい教科書が消えていく。。維持管理の時代なのに。。。

私は貝になりたい

2008年11月24日 | 雑感

中学のときに「ビルマの竪琴」を見ていらい、重厚な戦争映画を見ました。仲間由紀江さんの凛とした表情と、風雪、陽だまり、四季折々の表情をみせる大自然と、中居正弘さんの演技力も光るすばらしい映画だったと思います。

故郷に帰りたい、土佐清水に帰りたい

最近の観光ブームで四万十川は多少飾られたとも言われていますが、やはり段々畑と夕日は日本の自然の原点ですね。

その段々畑は地すべりの産物ということになるわけですが、銀座地すべりに興じる人たち、一度原点に戻ってみては


銀座地すべり-いまはドバイか?-

2008年11月23日 | 防災・環境のコンセプト

いつものように遅く起きた日曜日サンデーモーニングを見ていたら、アラブ首長国連邦のドバイに、一泊250万円もするスィートルームを持つ超高級ホテルが現れたようです。映像をみると、私たちの世代なんかは『巨大なばぶるだあ』と思ってしまいますが、石油産業以外の目玉商品はリゾートというわけでしょう。世界的なステイタスシンボルにしたわけでしょうね。

さて、ステイタスシンボルといえば、銀座があります。そして、太田ジオリサーチのサイトには『銀座地すべり』なるサイトがあります。1980年の論文で、私なんかは「大都会に果てしない夢を追い続けえ~えええ~」ですが、それはさておき。。。

銀座地すべり 
http://www.ohta-geo.com/ginza.html
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銀座地すべりというのは泥臭さを忘れて、ただ格好だけ良い地すべりの研究や、対策のことである。まずその代表的なものは模型実験と、コンピューターを使ったやり方であろう。ただし、模型実験やコンピューターを駆使することを揶揄しているわけではない。模型実験を行うからには、その実体が正確に解明されていなければならないことであり、コンピューターにかけるためにはその資料が信頼されるものでなければならない。そういう基礎的なものを軽んじてただ実験や計算を精密に行ったとしても得られる結果は何の役にも立たないばかりでなく害をまくばかりであろう。」
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まさしくそのとおりです。この時代は、パソコンではなく「マイコン」という言葉が使われていた時代です。
いまの調査方法は、パソコンのなかで崖の線を引いて、まさに一粒の泥、一握の砂にも触れずに、調査とも視察ともいえない仕様書上の「現地調査」を満たすだけで、人生を変えるレッドゾーンを『決めなければならない』システムとなっています。

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「現在行われている斜面の安定に関する調査は、地質が第三系の何々層であるというような地質調査や、ボーリングによる地質柱状図、電探による比抵抗値、弾探による弾性波速度、地下水の成分の分析、移動層の中を流れる地下水の経路、検層、ボーリング孔内水の用水試験というようなことが行われているが、このようなことは斜面の安定にはおよそ無関係のことであって、こんな結果から斜面の安定問題を考えようとしているのだから難しいのは当然のことであるといえるのであろう。つまり、何も役に立たないガラクタ材料を集めて家を建てようとしているような問題であって、どうやって測定値の誤差を少なくするかという問題である。
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土石流なんかは、土石流の真っ最中に現場にいけないのを逆手にとって、机上の空論が地上の正論を上回っています。

1980年にはやった言葉で言えば、どうあがいても、それなりに写ります


重要な指摘-釜井先生の論文から-

2008年11月22日 | 平成20年6月岩手・宮城内陸地震

今年6月に発生した岩手・宮城県内陸地震。皆さん覚えていますか。
ここ数年直下型地震が多く発生しているので、比較的記憶の薄いほうになってしまったでしょうか。
注目されたのは、キラーパルスの”低さ”によって、大規模な地すべりが発生した割には木造家屋の被害がほとんどでなかったことです。

ところが、

自然科学学会誌の最新号で、宅地防災の第一人者、京都大学防災研究所の釜井先生は、以下の重要な指摘をされています。

築館の舘下地区で谷埋め盛土の崩壊が発生した。この崩壊は,2003年三陸南地震の際に発生した谷埋め盛土崩壊箇所(幅約40m,長さ約200m)の西に隣接しており,その当時は滑らなかった谷埋め盛土が,今回のより強い地震動(K-net築館で3 ch合成約800Gal)によって,崩壊した事例である

この地区の斜面は,1970年代の農地改良事業によって造成された斜面である。造成の目的は畑地とも宅地への転用とも言われているが,結果的に造成後の利用が放棄され,長い間適切な維持管理がなされていない斜面であった。谷埋め盛土料は,尾根部を形成していた更新統の軽石流堆積物であり,多孔質なため土粒子の比重が軽く,有効上載圧が小さいうえ,地下水を貯留しやすい特徴がある。ただ,今回の事例では,2003年の崩壊よりも地下水の量が少なかったため,完全な流動化には至らなかった。転圧不足のため,盛土の締まりは悪く,大部分がN値3以下である。旧谷底付近の地盤強度は,特に小さく,しばしば,N値も測定不能(自沈)である。
2003年の崩壊箇所の盛土厚さ(旧谷地形の深さ)は,約4 mであった。隣接する谷埋め盛土の厚さ,これよりも厚く,今回崩壊した西側(向かって左)の盛土は約6 m,東側(向かって右)は約8 mである。すなわち,厚さの薄い谷埋め盛土ほど,不安定であり,順番に崩壊したといえる(但し,東側の盛土には排水施設が新設済)。この斜面の様に,盛土底面付近の地盤が液状化する場合,底面での抵抗はほとんど失われるので,崩壊の発生を左右するのは,側部抵抗の大きさであると考えられる。2003年と今回の地震によるこの地区での谷埋め盛土の崩壊事例は,そのメカニズムを実証した事例として貴重である。


備えよ いろんなことに

2008年11月21日 | 災害の記憶と想像力
牛山先生のブログをとおして、こんな記事を見つけました。

備えよ 宮城県沖地震
http://mytown.asahi.com/iwate/news.php?k_id=03000000811170005

「30年以内に99%」。三陸沿岸を襲うとされる宮城県沖地震の発生確率だ。いずれ来る大災害に備えようと、陸上自衛隊がこの地震を想定して大規模実動訓練をするなど、関係機関は実践的な準備を続ける。専門家は、6月の岩手・宮城内陸地震のような集落の孤立などに加え、押し寄せる大津波の恐ろしさをあらためて強調する。家屋を押し流し、多くの人命を奪う脅威にどう備えればいいのか。

牛山准教授は「沿岸に限らずどこでも、津波や土砂崩れといった非常時に自分の家がどのような危険にさらされるのかを、個別に確認してほしい」と呼びかけている。

防災化学?

2008年11月20日 | 雑感

よく4LDKで家賃8万円というチラシが入っています。
何でも最大の売りは地震に強いことなんだとか

でも
×防災化学技術研究の地震動予測図によると

○防災科学技術研究所の確率論的地震動予測地図

×出展

○出典

こんなの見てると素人ぶりがばれてしまう。
安いのにはわけがある?


宮沢賢治ジオツアー

2008年11月19日 | Design with Nature
日本のDesign with Natureは宮沢賢治です。
もともと森と岩清水、そして星空を愛でる文化の国ですから、ジオは当たり前すぎて、あえて意識しなかったのかも知れません。

http://www.kousakusha.co.jp/planetalogue/kenji/kenji.html

赤のあらゆるphase

ルビー
ルビーの鉱物解説 >>>

赤もやはり暖色の1つですが、また興奮感色でもあり「情熱」「暖かさ」「愛」「激怒」などを連想させるとされています。盛岡中学で賢治の10年先輩であった石川啄木(1886~1912)の「詩稿」にある「赤!赤!赤といふ色のあるために どれだけこの世が賑やかだろう。花、女、旗、それから血!砂漠に落つる日」という一節もよくそれを表しています。賢治も『口語詩稿』所載の「心象スケッチ 林中乱思」で

柏の枝と杉と まぜて燃すので こんなに赤のあらゆるphaseを示し もっともやはらかな曲線を 次々須臾に描くのだ
とあるように、炎のさまざまな赤さを理解していましたが、どういうわけかその他の色ほど作品中で多様な表現は使われておりません。やはり賢治の色は「青」だからでしょうか。したがって赤い鉱物の引用も少ないのですが、ピンク色や紫色など赤系統の色もあわせて紹介しておきましょう。

うちでもできます

2008年11月18日 | Design with Nature

今日の報道ステーションの特集で、「二重行政の無駄」というのを放送していました。広島の太田川の河川整備の事例が紹介されましたが、私たちの仕事ではある意味見慣れた光景で、災害復旧バブル、国、県の順序で整備されていきます。

そこに「防災のため」の意識はあまり汲み取れず、「事業のため」の意図がありありありと見えてきます。地すべりだと、地すべりによって何が被害を受けるかによって、建設省・農水省・林野庁(あえて古い言い方をします)の見事な三色図面が出来上がります。

そんなことは戦後ずーっとかわらなかったのですが、今ごろになってやっとテレビが取り上げてくれました。

印象的だったのは、広島県の課長さんが、全部県でできます。的確に地元の事情を踏まえて適材適所の整備をしていきますと、自信と国に対するイラつきみたいな表情を浮かべていたことでした。あたりまえのことがあたりまえに言っただけんなんですが。。。


内定取り消しが招く被害-Design with Future-

2008年11月17日 | Design with Nature
私が学生のころは、内定取り消しが話題になり始めましたが、ここにきてまたまた話題に上っています。

大学生の「内定取り消し」始まった 理由は「経営が悪化したため」 http://www.j-ast.com/2008/10/31029660.html 「6月に内定、8月末の今になって内定取り消し。建設コンサルタントです。これはひどいのでは?」

同業者でありながらこれはひどいです。先見の明もないし、この先この会社は一気に高齢化していきます。おそらく知恵も硬化するでしょう。 給付金のごたごたを見てもわかるように、政治の知恵も硬直化しています。

公共事業として地質調査、防災調査もどんどん減らされそればかりにこだわっていては消耗戦になるのは目に見えています。 基準書に従い最終判断は役所に任せればいい、項目を満足することに慣れすぎて一般の人にわかりやすいこととはどういうことなのか考える癖がつかなくなります。

イマドキの社員は情報は与えられるものだという傾向が強いのも考えものですが、逆にどのような情報、プレゼンテーションがありがたいかを判断するセンスをもっています。

若者を遠ざけると人件費ばかりが高騰し、本当に困っている人たちが専門家の知見を仰げないという不利益が生じ、地学離れがますます進み。。。。

風を読む

2008年11月16日 | 維持管理の時代
今日のサンデーモーニングの『風を読む』のコーナーで、若者の車の購買意欲が落ちているという話になっていました。年配の方は「ダイハツミゼット」や「アメ車:キャデラックとか」を持つこと自体がステイタスであり「男」であったとのこと。私も高校時代をバブルの絶頂期で過ごしましたから、そんな価値観もわからないではありません。

しかし、ここまでくるとそんな精神論は通じなくりました。いまある”中古”状態のものを、質実にこだわり少ない力で長持ちさせる方向にいかねばならないでしょう。先日の地すべり施設の維持管理がまさにそうです。

でかくてきらびやかである事がかっこいい時代は完璧に終わり、無駄がなく洗練されたデザインがかっこいいと思われる時代になったということでしょう。しかし、防災に関わる公共事業は、いまだキャデラックにのりたがっているし、燃費も悪いようです。