防災ブログ Let's Design with Nature

北風より太陽 ソフトなブログを目指します。

事業仕分け

2009年11月30日 | 維持管理の時代
連日マスコミをにぎわしている事業仕分け、パフォーマンスなのか、意義深いものなのか、、、
現場を見ずに(いや、診ずに)タイトルだけみてバッサバッサとやっているように見えます。
いちばん気になるのは、この平成も22年目に突入し、平成生まれの大卒も出ようかというこの時代になって、初めてこういう試みがなされていることです。
民間では月一、あるいは週一で工程会議でもやっていると思うのですが、国もそのように出来ないことはないでしょう。あと増やすべきこと、目指すべきものをはっきりしてほしいですね。

勘(再掲載)

2009年11月29日 | 技術動向
今日放送された『奇跡の地球物語』は興味深いものでした。機械は定量的であることを技術として求め、人間は定性的であることを技術という言葉がありました。そして、人間の勘が機械を上回る作業として、究極の平面鉄板作りがあげられていました。機械だとどうしても熱変性してしまうので、職人がノミのような道具で平面を作り上げる作業が紹介されました。

以下に、以前書いた記事を再掲載します。

数字というのは、世界共通の言語であり、かつ絶対的・圧倒的な説得力を持っています。しかし、それは木であって、それを支える根や土、さらには循環する大気ではないように思います。数値を与えるべき問題点を見つける能力は"勘”ピューターです。

勘とは経験の集積という言葉があります。経験の集積とはつまり、長年様々な事例にあたって意識の底にたまったデータが事に当たって力を発揮する、それが勘の正体、ということだ。とは、野球評論家の豊田泰光さんの言葉です。野球も観察からすべてが始まり、傾向と対策があるように、地質技術も同じなのかもしれません。

技術って人柄です

2009年11月28日 | 防災・環境のコンセプト
携帯もパソコンもない古き良き日本の風景が残る山奥の現場から帰ってきました。でも、TVも映りが悪く新聞も読んでいなかったので、まったくの浦島太郎です。

そして、以前勤めていた会社の技術者と再会し、昔話にも花が咲きました。そこで話題になってのが”やはり技術って人柄”ということでした。最近では民間同士での取引でも、ISOを持っているか、有資格者が何人いるかなどかたちのこだわる人が増えたととのこと。最近の事業仕分けではありませんが、判断や考察などを伴う”面倒な作業はできるだけ安く外注する”ことが多く、その結果確保した利ざやだけが評価されるようになって、たしかにその場の現金は残るようになったが熱気は減った、、、など

そしたら、穴吹工務店倒産の影にそんな話もありました
http://www.data-max.co.jp/2009/11/14_33.html

最近は、価格に対して厳しいというか、すぐに相見積もりを取ったりして安い方にするという、技術などは二の次の状態になっていきました。それで少しずつ離れてしまいました

土石流とは違うプロセスの岩塊流

2009年11月26日 | 災害の記憶と想像力

今回の現場でよく目にするのは、全面にコケが付着した数mの巨礫が集積している光景です。となりの渡良瀬川流域には、似たような堆積地形があって、地質学的な研究論文も発表されています。

私が学生時代兵庫県の山中でみた麓屑面と呼ばれる堆積地形と似ていると思います。

古峰ヶ原高原では、最終間氷期以前に基盤岩である花崗閃緑岩の深層風化によって、コアストーンやトアが形成された。その後、約5万年~1.4万年の間に、周氷河性のマスムーブメントによって細粒の斜面堆積物が形成され、角礫やコアストーンの一部が斜面上を移動した。この斜面不安定期の末期以降に、緩速度のマスムーブメントによって斜面上の谷沿いを岩塊が移動し、さらにトアからの岩塊の供給やマトリックスの洗い出しの影響も受けながら、岩塊堆積地形が形成された。

瀬戸真之(2004);地理学評論


群発する崩壊を読んでみた

2009年11月25日 | 災害の記憶と想像力
千木良先生の著書ですが、以前勤めていた会社においてきたので改めて購入しました。

群発する崩壊
http://www.d1.dion.ne.jp/~kinmirai/16-Gunpatu-suru-houkai.html

手書きの野帳のスケッチまで掲載されていて、臨場感があります。そして、千木良先生の書籍はあとがきが面白くてためになります。ひとつ引用します。

<比喩的表現>
  ・剛な岩盤の上に砂状のマサが乗っているために摩擦係数が小さく
    ↓
 ・崩壊に対してあたかもすべり台のような役割を果たし

 ・透水係数に著しい異方性があり、斜面内部方向への透水係数の○倍程度と見積もられるために
  ↓
 ・浸透水に対して蓑のような役割を果たし

わかりやすいことは、相手とイメージを共有しやすいことです。読むのも自ずと楽しくなります。

『種の起源』から150年

2009年11月24日 | Design with Nature

今日11月24日は、チャールズ・ダーウィンの「種の起源」が出版された日だそうです。1859年ですから、今日でちょうど150年の節目に当たります。

このような古典的名著を紹介したサイトがあることに気がつきました。金沢工業大学が作成した以下のサイトです。

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世界を変えた書物-「工学の曙文庫」-
http://www.kanazawa-it.ac.jp/dawn/main.html

チャールズ・ダーウィンの「種の起源」
http://www.kanazawa-it.ac.jp/dawn/185901.html
 初め医者を志し、エディンバラ大学で医学を学んでいたダーウィンは、麻酔なしの(麻酔はまだ発明されていませんでした)外科手術を経験してから医学が嫌になり、ケンブリッジ大学へ転学して、牧師になる勉強をしていました。ところが、ケンブリッジで彼は博物学に興味を持ち始め、その学習をすすめた植物学教授ヘンズロウと親交を結びました。イギリス軍艦ビーグル号が、南米及び太平洋の調査航海に出る為、研究員として動物学者を探していた時、海軍省にダーウィンを推薦してくれたのは、このヘンズロウです。ダーウィンはビーグル号に、ヘンズロウが「馬鹿げた本だ、中味を信用するな」といいつつくれたライエルの「地質学原理」を一冊携えて乗り込み、5年間の航海に出発しました。これは、科学史上、生物学史上最も重要な航海野ひとつとなったのです。
 航海中、ダーウィンはある地域から他の地域へ移動するに従って、地域変化に応じて動物相や植物相が変化していくのを魅せられたように観察しました。そうして、艦がガラパゴス群島にやって来た時、14種類ものアトリ科の鳥、フィンチの変種が夫々の変種毎に群島のあちこちの特定地域に繁殖しているのを見て、ショックを受けました。この少しずつ違う鳥の種の個々が、独立に創造、あるいは発生したとは考え難い、本土エクアドルの原種のフィンチから、この14の変種は展開したと考える方が妥当であると思ったのです。また、その際に思い合わせれたのがライエルの考えでした。つまり、地球上の険しい山々や海など多様な地理学的自然も、地質学的には何十億年という長いタイム・スパンに於いて、非常にゆっくりと変化して来た結果としてあるという思想です。それならば、同様に生物の種の多様も長い時間をかけて少しずつ変化を続けて来た結果なのではないか、とダーウィンは考えたのです。
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砂防堰堤や床固工は確かに土砂をとめて安全を確保してくれます。しかしそれは一時的なもので、地質の営みから考えると、止められるという発想よりは、土砂は動くものとして譲歩し調和しながら、被害が出ない程度に付き合っていくという発想が必要なのです。技術者や防災担当者が、そのような発想を転換するための航海に出る必要があります。


さざれ石の巌となりて

2009年11月23日 | 災害の記憶と想像力
君が代の歌詞のなかに「さざれ石の巌となりて」という部分があります。さざれ石とは、石灰成分の多い山にあ<WBR>るのですが、川の小石<WBR>や砂利に石灰が付いて<WBR>固まり、小石の塊のよ<WBR>うになった石で、これが更に大きくなり<WBR>、巌(いわお=巨大な<WBR>岩)にまで成長し、そ<WBR>れに苔が生える(苔は<WBR>数ヶ月で生えるけど)<WBR>までという意味です。私がいまいる現場にもこのような渓流が沢山あります(そうえいば”沢山”という字が、”沢”と”山”とからなっているのも面白いですね)。このような地質学的タイムスケールも十分に視野にいれると、自ずとどのような防災対策が必要か、不必要か、わかってきます。

根系層崩壊

2009年11月22日 | 防災・環境のコンセプト
今日の現場で、低溶結火砕流堆積物の地質からなる斜面の典型的な根系層崩壊を見つけました。根系層崩壊は以下のように特徴付けられます。

http://www.kankyo-c.com/konkeisouhoukai.htm
① 表流水や地下水が集まりやすい地盤で生じる。
② 斜面傾斜が40°前後と急である。
③ 表層は軟らかいが直下の岩盤は硬く、根系が入る間隔を持つ割れ目が存在しない(Nd値は2から50以上に急変)。
④ 崩壊の厚さが1m未満と薄い。
⑤ 崩土内の木が立ったままで全体が高速で流下する。

 したがって,根系層崩壊は表層崩壊の中でも,その崩壊土層の内部構造が根系より緊縛された表土からなるものをいい斜面崩壊に対する植生の関与を意味したことばとして用いている。

斜面の地形・地質・地質が三位一体となって動きます。雨が強くなるので土砂災害に注意しましょうとお決まりの文句だけでは、言葉がすくなすぎます。

盛土のり面の緊急点検

2009年11月20日 | 盛土が安定すれば安心
国土交通省の報道資料に、以下の内容が掲載されていました。

盛土のり面の緊急点検
http://www.mlit.go.jp/report/press/road01_hh_000095.html

去る8月11日、駿河湾を震源とする地震により、東名高速道路牧之原SA付近において、
盛土のり面が崩壊し、国民生活に大きな影響を及ぼす事態が生じました。
 この事態を受け、以下のとおり、盛土のり面となっている箇所について、緊急点検を実施する
こととしましたので、お知らせ致します。
 
1.点検対象となる道路
  ・ 東日本・中日本・西日本高速道路株式会社、首都高速道路株式会社、
   阪神高速道路株式会社及び本州四国連絡高速道路株式会社の管理する有料道路
  ・ 一般国道(国が管理する指定区間の国道)
 
2.点検の対象(以下の条件の全てに該当する盛土)
  ・ スレーキングしやすい岩質材料が用いられている可能性のある盛土
  ・ 沢埋め部等の水の集まりやすい地形条件に造成された盛土
  ・ 盛土のり尻から測った盛土高が10mを上回る盛土
   ※ スレーキングとは、塊状の物質(土塊や軟岩)が乾燥、吸水を繰り返すことにより、
     細かくばらばらに細粒化する現象をいう。
 
3.点検の内容
 [1] 現地踏査
   盛土のり面に湧水がないか、平常時及び降雨後に確認を実施。
 [2] 簡易現地調査
   現地踏査により湧水が確認された盛土について、盛土の強度及び地下水位を確認。
 
 なお、今回の調査結果を踏まえ、必要に応じて、詳細な調査又は継続的な観察を実施。

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継続的な調査になるのでしょうか

ポメラ - 知的生産の技術

2009年11月19日 | 技術動向
先日「野帳」の記事を書いていて思い出したのが「知的生産の技術」という言葉です。私の生まれる前に出版された本ですが、古典的名著として読まれ続けているようです。

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梅棹 忠夫 「知的生産の技術}
http://www.amazon.co.jp/%E7%9F%A5%E7%9A%84%E7%94%9F%E7%94%A3%E3%81%AE%E6%8A%80%E8%A1%93-%E5%B2%A9%E6%B3%A2%E6%96%B0%E6%9B%B8-%E6%A2%85%E6%A3%B9-%E5%BF%A0%E5%A4%AB/dp/4004150930

私たちが「手帳」に書いたのは、「発見」である。毎日の経験のなかで、なにかの意味で、これはおもしろいとおもった現象を記述するのである。あるいは、自分の着想を記録するのである。それも、心覚えのために、短い単語やフレーズを書いておくというのではなく、ちゃんとした文章で書くのである。そのような豆論文を、毎日、いろいろな現象をとらえて、つぎつぎと書いてゆくのである。たまってみると、それは、私の日常生活における知的活動の記録というようなものになっていた。私はこの手帳に、自分で「発見の手帳」という名をつけていた。

「発見の手帳」には、なにごとも、徹底的に文章にして、書いてしまうのである。小さな発見、かすかなひらめきをも、逃がさないで、きちんと文字にしてしまおうというやりかたである。「発見の手帳」をたゆまずつけつづけたことは、観察を正確にし、思考を精密にするうえに、非常によい訓練法であったと、私は思っている。
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現在はポメラという機械があり、デジタル版「発見の手帳」というべきでしょうか。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091126-00000005-rbb-sci


市町村合併の功罪

2009年11月18日 | 各地でのTOPICS
いまは出張で栃木県日光市(旧栗山村)にいます。災害情報データベースによると、栃木県において「栗」という言葉は崩壊・侵食ということを意味するんだそうです。

http://www.saigaidensho.soumu.go.jp/saigai/import.2007-03-13.185708/?searchterm=None

【内容】地名「栗」は崩壊・浸食地形を意味する地名である。
【ポイント】地名につく「栗」は動詞クルの連用形の名詞化で、抉る、転がるの意であり、主として山間地の「栗」のつく地名は崩壊地形の名称であると考えられる。

語り継がれるべき地名が、どんどん減っています。

野帳

2009年11月17日 | Design with Nature

踏査をするときは、上の画像の野帳を持ち歩きます。雨でも大丈夫。最近「調査票」や「カルテ」などの書式ものが多くなったので影が薄くなったのですが、知的生産には野帳にメモすることがいちばん。

そういえば、スケッチの定義としては、今岡さんの以下の定義がいちばんです。

現場から読み取れる無数で多様な情報源から、経験と直観力によってノイズ(調査目的に対して無用なデータ)を削ぎ落とし、抽出したシグナルのみを、非専門の人々にも「見える化」する。その作業が現場の技術者の脳内で瞬時になされる。

それこそがスケッチです。

改めて、かっこいい定義です。


雨は夜更け過ぎに、、、

2009年11月16日 | 各地でのTOPICS

平家伝説の残る山里で、ささやかなささやかなクリスマスツリーを見かけました。ポツンといかにもさびしげです。クリスマスといえば、高校時代をバブル絶頂期にすごした私は、山下達郎の名曲『クリスマスイブ』を思い出すわけです。特に出だしの

雨は夜更けすぎに雪へと変わるだろう

この自然の繊細さ、微妙さを過不足なく、そして詩には必要な軽さも備えていて、、
最近は”ゲリラ豪雨”などどいった、味も素っ気も科学的根拠もな言葉が跋扈していますが、このころのロマンから20年になります。