ガエル記

本・映画備忘録と「思うこと」の記録

「草原の記」司馬遼太郎

2018-08-29 06:02:44 | 評論・随筆


司馬氏の「モンゴル高原は天にちかい」という言葉から始まり、モンゴルの一女性であるツェベクマさんの物語が記されている一冊です。


以下、内容に触れます。




私はこのそんなに厚くはない本を読んですっかり天に近い草原とツェベクマさんに心惹かれてしまいましたが、まさか後にNHKのオンデマンド放送で彼女を見ることができるとは思いもよりませんでした。

NHKスペシャル「街道をゆく」第一シリーズの第二回「モンゴル紀行」で見たツェベクマさんは司馬氏が描いているとおり毅然とした女性でありました。驚いたのは現に映像でも彼女の話す日本語はくっきりと明晰でよどみもないことでした。
ツェベクマさんは少女の時に日本人の女性教師(高塚シゲ子先生)から日本語で教育を受けたのですが、その記憶だけでこんなにしっかりとした美しい日本語を後年までも話せるものなのでしょうか。大体においてモンゴルの方は日本語を訛りなく話せるのがいつも不思議なのですが(お相撲さんがそうですよね)どこか日本語と共通する言葉なのでしょうか。としか考えられない無学の私でありますが。
よく実際の人物を見てしまうとがっかりということがありますが、ツェベクマさんの映像はむしろ「草原の記」をより鮮明にしてくれたように感じました。

ツェベクマさんは過酷な人生を送ってこられた女性です。
そんな彼女に司馬氏は言う。

「ツェベクマさんの人生は、大きいですね」

「私のは、希望だけの人生です」

希望だけの人生、と言える女性とは、希望だけを胸に生きてきた人生とは、と考えてしまいます。

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