ガエル記

本・映画備忘録と「思うこと」の記録

「少女革命ウテナ」28・29

2018-12-05 07:09:06 | アニメ
さらに細かくなってきました。というか見る時間が少なかっただけですが。
この2話は樹璃・枝織・瑠果という3人の物語、前編後編となっております。


以前にも樹璃の枝織への秘めた想いというテーマは語られてきたのですが、この2編で更に深まります。

以下、ネタバレしますので、ご注意を。



28話「闇に囁く」29話「空より淡き瑠璃色の」
「ウテナ」の話の中でも特別な重みのあるエピソードでした。
樹璃・枝織・瑠果の心理は複雑に絡み合っていてそう簡単に解きほぐすことはできないものでしたね。
見るものとしてレギュラーとして登場してくる樹璃にどうしても視点を落として見てしまいます。樹璃が気高くて美しいからということもあるのですが。

「ウテナ」というアニメシリーズは今までのアニメの常識を打ち破ろうとしているものだと感じます。なにしろタイトルが「少女革命」なのですから当然です。作品はいつも少女の革命を起こしていきます。
この物語も大変な革命の物語でした。
樹璃の枝織への思いは少女期の淡いものではなく永遠を誓った強いものであると語られます。枝織はよくある天然の少女のおおらかさではなく明らかに樹璃の自分への思いを知った上で彼女を揺さぶっています。この2編では枝織の心情は他の二人と比べて奥底を語られることがありません。
思うに、枝織は枝織の流儀で樹璃を愛しているのではないでしょうか。「それは愛ではない」という言い方はできます。無論「よくある愛」ではない。ただ枝織の愛し方はそういう愛し方で樹璃自身もそれと知ってそして彼女を切り離すことはできないでいる。煉獄の中にいるのです。それに気づき、やはり樹璃を愛していた瑠果は彼女を救いたいと思った。レイプのようなキスの場面を嫌悪することもできますが、瑠果には時間がなかった。病で自分の寿命がじきに尽きることを知っていた彼はその行為が死期を早めることも自覚して立ち上がり、やはり彼の流儀で樹璃への愛を表現したのです。

なのでこの物語はぐるりと回る三角関係のようでいて樹璃を挟んだ枝織と瑠果の愛の表現だったのです。
結局・・・瑠果は負けて死にしぶとく生き残った枝織は当然のように樹璃の後ろを歩いていきます。これからもふたりは同じようなことを繰り返し互いの愛を確かめていくのかもしれません。
瑠果の願った奇跡は枝織にそういう愛し方を止めさせたいということだったのかもしれません。
エンディングの樹璃のモノローグ。「あなたは奇跡の力にどんな思いを託していたのでしょうか。そしてその思いは誰かにあてたものだったのでしょうか」この誰かとは枝織のことです。
「願わくばその思いが届きますように」
樹璃は枝織の変質的な愛し方を受け止めながらも瑠果の願ったこと「樹璃を(普通に)愛してほしい」が叶うことを望んでいるのです。
でもそうなるでしょうか?
枝織はその名の通り枝を折る人なのです。樹璃は枝を折られる樹なのです。
それでもいつか彼女の願い通り、瑠果の願いどおり枝織が枝を織る女性へと変わることを願ってやみません。

この物語、とても少女期に見て理解できる深さではあり得ませんよね。
でもそれでもいいのです。判る物語だけを知るのではなく少女期には理解できない物語を知ることは必要なのです。
そして人生の折々に思い出し「あれはこういうことだったのか」と理解する、ということはすごく重要な儀式だと思います。だからこそそういう深みのある作品を子供時代に見て記憶に焼き付けられるほどの衝撃を受けることができるのはどんなに大切な体験であることか。
「少女革命ウテナ」を少女期(むろん少年期のきみも)に見る体験ができた人は羨ましい宝物を持っていますよ。
人生の中でこの物語を思い出し、自分を深めていくことができるのです。


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