ガエル記

本・映画備忘録と「思うこと」の記録

「尚衣院-サンイウォン-」イ・ウォンソク

2019-02-21 21:12:23 | 映画


先日観た「「空と風と星の詩人 尹東柱(ユン・ドンジュ)の生涯」の悲劇と違う思い切り楽しむ悲劇であり実に存分に悲劇を堪能させてくれました。

以下、ネタバレですのでご注意を。




アマゾンプライムで見かけてふらっと見始めたのですが面白くて観てしまいました。悲劇の様式美は韓国映画の醍醐味と言っていいのでしょう。
前半コメディで観客を惹きつけ途中からぐっとドラマチックになり悲劇へ突き落していく技巧は日本映画にはあまり見られない上手さであります。
何と言っても映画の主題である尚衣院-サンイウォン-の豪華な衣服が素晴らしい美しさです。衣服に興味がある者ならそこを見ているだけでも楽しいはずですね。特に韓国の歴史的衣服はそれほど見慣れていないのでとても興味を持って見てしまいました。これは実際にあった昔の衣服から物語を発想したということなのでしょうか。それともそこも含めてフィクションなのでしょうか。どちらにしても面白い演出です。
物語の焦点が王妃と若き天才仕立て屋の恋なのか、モーツアルトとサリエリのごとき天才と凡才の戦いなのか、はたまた「王の男」のような物語なのかどれも描こうとしたところが楽しくもあり分散してしまった感もありでした。
とはいえ、やはり律儀で伝統通りの御針匠(オチムジャン)と奔放な天才仕立て屋イ・ゴンジンの関係を描いた部分が一番印象的であります。天才、というだけでなく二枚目で女にモテモテという仕立て屋を演じるコ・スの屈託のない笑顔が魅力的でした。
不遇な王妃を演じるパク・シネも美しく、王以外の男に触れられてはいけないという規範の中でイ・ゴンジンに採寸を任せる場面がなんとも色っぽいのでした、

以前の韓国映画は露骨な暴力と残酷描写と性描写が多くて時に辟易してそのために一時離れてしまった部分もあるのですが、本作はそういう場面も抑えた演出になっており韓国映画も随分変化したように思えます。勿論今のほうが断然良いのです。様々なモラルの変化もあったのではないでしょうか。
しかし画面の美しさや見る人を惹きこんで楽しませるパワーは変わらずというかこちらもより良い方向へ行っていると感じました。

これからも韓国映画見ていくのが楽しみになってきました。
イ・ウォンソク監督も注目ですね。


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