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一瞬の勝負。

2005年10月28日 | 

藤沢周平【用心棒日月抄】

許婚の父親を斬り脱藩した又八郎は、
江戸でしがない用心棒暮らし。
国許から送られてくる刺客や、
雇い主を狙う者達との死闘の先にあるものは。

藤沢周平の作品は大好きで、これまでも沢山読んできた。
戦いの描写はまるで目の前で斬り合いを観ているような緊迫感だ。
この作品でも良い戦いのシーンが盛りだくさんだ。
紙一重の勝負を何度も潜り抜ける。
相手の観察と、一瞬の判断、
更には運が勝負を分ける様が絶妙に表現される。

主役の又八郎は実直で筋の通った男だが、
用心棒暮らしをしていくうちに少し荒んだ部分も出てくる。
時に失敗したり、酔いすぎたりしてしまう所や
そんな自分を見つめなおし、反省するところが、
人間的で現実的で感情移入しやすい。

この小説では、
赤穂浪士が仇討ちに成功するまでのストーリーが複線として描かれる。
直接、赤穂浪士を描くのではなく、
雇われ用心棒とその仕事を描くことによって、
あの有名な事件をまた違った角度から見ることができる。

もしもあの時。

2005年10月26日 | 映画

【バタフライ・エフェクト】

記憶が途絶える事が多い少年エヴァンは、
医者に進められて日記をつけていた。
青年になって日記を読み返した事から、
昔好きだった少女を自殺に追いやってしまう。
エヴァンは過去に戻る能力を身につけるが…。

バタフライ・エフェクトとは、
中国で蝶が羽ばたくと地球の裏側で竜巻が起こる、
というほんの小さな事象が思いがけない所で
大きな影響を及ぼす事を表す言葉だ。

過去を少し変えただけで、未来は全く違ったものになるが、
なかなか全員が幸福になるように、思ったようには変わらない。
そして、切なく、美しいエンディングへ。
エンディングでのエヴァンの
ゾクッとするような表情だけでも観る価値ありだ。

この映画では過去に戻って現在を変えてしまうが、
これは逆に過去には戻れないので、
いつも良く考えて行動しなくてはいけない事を示唆している。
人間は常に選択して生きていて、
ちょっとした行いが、自分の人生だけでなく、
色々な人の人生に影響を及ぼし、
若気の至りではすまない事もあるのだ。

自分も不幸にはなりたくないって所が正直。
もう少しうまくできるやろって所もあったけど(笑)。

若干疲れ気味。

2005年10月25日 | 映画
ちょっと疲れがたまって、映画を観るのが少し億劫になっていたので、
あまり考えなくても良さそうな映画をチョイス。思ったとおり。


【サハラ】

南北戦争中に米国からアフリカまで大西洋を渡った装甲艦の
謎を追うトレジャーハンター、ダーク。
内戦中のマリで謎の伝染病を追う女医、エヴァ。
襲われているエヴァを助けた事から、争いに巻き込まれる。

サハラ砂漠を舞台に、
ノー天気なトレジャーハンター&医者トリオが暴れまくる。
一つ一つのアクションのアイデアやノリはすごく良く、
古めのロック&アフリカンミュージックとあいまってカッコイイ。
風景も砂漠の過酷さは全く無く、美しく撮ることに専念している。
ただ全体を通してみるとなんかストーリーがバラバラな印象。
宝探しに命を懸けるほどの動機や、悪人が悪事を働いている動機なんかの、
背景が曖昧なままだからかな。必然性がいまいち無いって言うか。
まぁ、痛快アクション物としては別に良いんだろうなこれで。
最終的には内戦も宝も、病気も全部まとめて解決しちゃって
めでたしめでたしって事で。
マシュー・マコノヒーは最近マッチョな役が多くなってきて、
これが結構良いね。
それと、ペネロペ・クルスはこの映画では若干、影が薄め。
ただ、凛々しさとキュートさが絶妙のバランスで、
こういう映画に結構合うなと思った。

とうとうここまで。

2005年10月21日 | 音楽
岡村靖幸実刑判決(懲役1年6月)

高校時代に好きだった音楽を語るのに、
岡村靖幸は絶対に欠かせない存在だ。
センスの良い選曲でいつも参考にしていた、
【シティーハンター】のテーマソングで知ったのが最初だと思う。
切ない歌詞、必ず入るナルでエロいセリフ、
ファンキーなサウンドどれも大好きだ。
特に少年から大人に変わる時期に聴くとズバーンとくる。
天才肌で異端児っぽく見られがちだけど、
本当に良い詞を、美しいメロディーにうまくのせる、
素晴らしいアーティストだと思っている。
とにかく良く聴いたし、今でもほとんどの曲を歌うことができる。
今聴くとちょっとバブリーだけど(笑)。

ぱったりと表舞台に現れなくなり、
最初は新譜を待ち焦がれていたがそれも諦めに変わり、
もう懐かしいだけの存在になっていた。
しかし、突然復活し石野卓球とコラボするなど、
再始動ということで今後を楽しみにしていたのに。

覚醒剤で執行猶予中に、再び覚醒剤を使用したということで、
実刑判決ということだ。
堕ちるとこまで堕ちて、もう浮上する事は無いかもしれないけど、
薬だけは何とかやめてもう一度音楽をやって欲しいなぁ。

昔は麻薬で死んだ伝説的なアーティストなんかの話になると、
“あの音は薬でもやってないと出せない”とか、
何の根拠も無い、カッコつけただけの事を
バンド仲間と言い合ったりしたが、もちろんそんな事は全然無い。
彼が何故麻薬に手を出したか知らないが、
麻薬をやらなくても良い音楽を作り、
プレッシャーに打ち勝っているアーティストは沢山いるのだから。

疑問符。

2005年10月21日 | 日々の生活
朝、駅などで市議会議員が配っている
会報などを読むのが好きだ。
所帯を持つと、税金の使い道が気になるし、
福祉や公共事業への関心が高まる。

そこで、先日ある女性議員が配っている会報を読んだ。
その議員はいつも市民寄りの視点を持っていて、
正論を正論として言うなぁと
これまで何度か読んだ会報では判断できる議員だ。
その会報には先日の議会の様子が書かれていた。
まず、議会において発言の時間が決められていて、
彼女のたった10分の発言中には議長の横槍や度重なる休憩など、
あきらかに妨害と思われる行為があり、
タイムストップも正確にされているか怪しいとの事だった。

おそらく正論を正論として粘る彼女は、
多数派の議員にとってはうっとうしいんだろう。
そんなこと言っていたら市政なんか進まん!
と思っている議員もいるだろう。
しかし、この議員の発言が正しいか間違っているかは別として、
こんな事を本当にしている議会は腐っていると思う。

これだけ天下りが批判され、行政のお金の使い方が問題視されている中にあって、
廃プラ処理施設や公立幼稚園の廃止など疑問符が付くような事が
多数決でどんどん決まっていっている。
まぁ、市民が行政に興味を持たなければ、
利権の絡んだ人が当選するんだから、
僕らにも責任はあるんだが。

公務員にしても、いまだに役所に苦情を申し入れたりすると、
関連機関をたらいまわしにされた挙句返事が無いなんて事も良くある。
相変わらず一般人との常識の乖離が激しい。

血のように赤い。

2005年10月19日 | 

祐未 みらの【マンダレーの夕日】

手放す者を不幸にするネックレス“マンダレーの夕日”。
ある日、建設会社の社長を強請っていたらしい男が殺された。
背景を調べ、強請りのネタをつかもうとする暁子。
そして、戦争で死んだ祖父が残したルビーの行方を追う青年、亮。
それぞれの運命が交錯する時、
ルビーにまつわる愛憎劇が浮かび上がる。

宝石にまつわる伝説や、呪いや幸運をもたらす話は多い。
宝石には金銭的価値以上の魅力があるからだろう。
実際に宝石を、特に希少価値の高いものを見た経験が少ないので、
偉そうな事は言えないが、そんな僕でも、
引き込まれそうになる美しさ・魅力を持った宝石が存在する事はわかる。
いまだに高品質のものは大量生産できず、
元素、地球の圧力、時間、そして職人の技術の
全ての要素が合わさって生み出される宝石。
金が絡むだけに、奴隷や人権問題、犯罪など負の要素も大きいが、
宝石への欲求がついえる事は無い。
美に貪欲な女性の心理、一種の独占欲的な感情、
そして、女性を喜ばせたいという男達の欲望が、
宝石に更なる魅力を与え、人の運命まで左右してしまうのだろう。
それが、血の様に赤いルビーとなればサスペンス的な要素は充分だ。

この小説は勝手に冒険活劇のように感じていたので、
最初に思っていたほどのスケール感は無いが、なかなか深い。
色々な期間、色々な形の愛が描かれ、
最後に1点に集まりそこで決着する。
謎は謎のまま、想像は想像のままだが、
それがかえって人の心の暗部というか、
他人にはわからない事もあるという事実を表していて、
哀愁になっている。

素直な青年、亮と組む事によって、
人間らしさを取り戻していく暁子。
なかなか、感傷的でロマンティックなラストだ。

ラッキー。

2005年10月17日 | 音楽
残念と書いたら、早速音源送ってくれた。
サンキュー、U-SKE。
しかし、「極端に言えばタダででも…」と前回書いたが、
実際に価格の低い御紹介盤だったんだな。

で、じっくり聴いてみた。


mink【mink】

素直に聴けばなかなか良いと思う。
今後、大化けしそうな実力は備えているし、
R&Bに偏りすぎず、聴きやすいジャンルのポジションを取っている。
これは、プロローグ・アルバムという位置づけで、
値段も安いのでクオリティーから言えばお買い得。

ただ、突き抜けるためには課題も多い。
まず、ハスキーな低音と伸びのある高音のブレンドが彼女の魅力だと思うが、
この低音の声量と魅力がちょっと足りない。
アレンジだけの話なのか、実際そうなのかはわからないが、
せっかく良い曲でもこの低音部分で曲から頭が離れてしまう。

それからカバー曲が何曲か入っていて、
メジャーな曲をうまく消化しているとは思うがが、
これはあくまでアレンジャーの力量の様な気がする。
結構、ドラマティックで大胆なアレンジが気持ち良い。
良い曲を良いアレンジで、というところは良いんだけど、
最後の表現のところで芯まで歌い切れていなく、
頑張って歌ってますという印象が残ってしまう。
ドリカムの【好き】をカバーしている事から、
どうしても吉田美和と比較してしまうが、
懐の深さというか、歌の奥行きと言うところで
やはり見劣りしてしまう。

あと、今回はプロローグ・アルバムという事だし、
これは全く個人の好みなので別に良いが、
【おまじない】の様なアジアンテイストの曲は好きじゃなく、
アルバム全体のバランスが崩れる気がするので、
今後一曲だけ放り込むのはやめた方がいいと思う。

と否定的な意見を書いたけど、これはなかなか期待できるから。
なんていうかやっぱ場数が必要なんだと思う。
【Glory of Life 】はすごくスケールが大きくて何度も聴きたくなる曲だし、
【more than words】をナチュラルアレンジで歌っているのも嬉しい。
次のアルバムでどうでるか期待しよう。


残念だなー。

2005年10月15日 | 音楽
残念だなー。
楽しみにしていた【mink】のCDが、
ひと月ほど前にレンタル開始となったが、
しばらくレンタル中の状態が続いていた。
昨日やっと見つけて、さて借りようと思ったが、
これがCCCDじゃないか!
どうもレンタル用のみの様だが。

有名プロデューサーに褒められたぐらいで、
ほとんど実績の無い新人としては、
少しでも、極端に言うとタダでも良いから、
多くの人に聴いてもらった方が今後のためだと思うのは僕だけだろうか。
まずは気軽に聴いて好きになってもらわないと。
それがセルCDを買ってくれた人の特権で、
レンタルの人はCD聴くだけでがまんしてって言うのは、
プロモーションとして損をしていると思う。
とくに【mink】の様なアーティストに興味を示す人達は、
今、MP3のプレーヤーを使用している比率がかなり高いと思うのに。
ということで、聴いてません。

雨が降る。

2005年10月11日 | 音楽

山下達郎【SONORITE】

山下達郎はいつまでも才能の輝きを失わないアーティストの一人だ。
常にポップであり続ける事にこだわり、日本語の響きを大切にし、
自分のスタイルを守りながら実験的なアプローチも忘れない。

しかし、このアルバムはちょっと退屈だなぁ。
なんのきらめきも無い、ただ流れていくような曲が多い。
つい口ずさんでしまうようなサビも、
ぐっとくるメロディーも少ない。

そんな中でこれはと思ったのは、
ケツメイシのRYOをフィーチャーした
【KISSからはじまるミステリー】だ。
ただ、RYOとコラボしているという事が良いのではない。
確かに、二人の声が良く似ていて、最初「達郎がラップ!?」と驚かされたし、
佐藤竹善+SOFFet、はたまたmflo+和田アキ子と、
大御所+若手MCの作品が続いて、山下達郎も?と言う驚きもあった。
しかし、この曲の良さは山下達郎らしい絶妙な声の重ね方と
“恋はミステリー”や“胸のナイフを静かに抜いてくれ”などという、
微妙な(?)歌詞をすんなり聴かせるサビがとてもいい。
こういうのを望んでいるんだけどなぁ。

観て良かった。

2005年10月10日 | 映画

【いま、会いにゆきます】

梅雨が訪れたある日、息子と暮らす巧の前に、
病気で死んだ妻・澪が現われた。
澪は死ぬ前に、1年後の雨の季節に戻ってくると言い残していたのだった。
巧たちは記憶を持たない彼女と再び家族としての生活を過ごすのだが…。

はっきり言って、この映画は観るつもりが無かった。
【世界の中心で、愛をさけぶ】
からのプロモーションの流れが嫌だったし、
中村獅童と竹内結子の結婚にいたっては、
どうしても先入観をぬぐえなさそうだったから。
いかにもお涙頂戴的な陳腐なストーリーかなと思っていたから。

実際は、とても良い映画だった。
美しい日本の風景。
非現実的な設定だが、
それは伝えたいことを一番効果的に伝えるための手段であり、
最後には全てがすんなりと心に入ってくる。

一番大切な事を忘れかけている。
クールな恋愛感に逃げようとしている。
確かに映画や小説に出てくるような出会いができる人は少ないかもしれない。
現実は全く違う世界かもしれない。
だが、そんな現代人のために、こういうファンタジーがある。
こういう映画を観て少しだけでも振り返ろう。