富島健夫作品 読書ノート ~ふみの実験記録

富島健夫の青春小説を読み感じたことを記録していきます。

純愛一路

2010-02-07 00:04:52 | コバルト
集英社コバルト・ブックス
初版:昭和45年9月
カバー:長島リツ子
挿絵:中沢潮

これもオークションにて落札。小口のシミが予想以上にきつかった。
状態の基準は主観に過ぎないので判断が難しい。
実際見て買いたいけど、なかなかそうもいかないし。


<純愛一路>
通学電車の中で出会い、いつしか恋が芽生えた(このパターン多い?)、順子と信一。
しかし厳格な順子の父は二人の交際を認めない。
信一が東京の大学へ行くと、順子の父は地元の有力者、山本の息子と順子を結婚させようとする。
学生運動にのめりこみ、帰省もしなくなる信一。
そして信一の「同志」、愛川友子からの「信ちゃんは私のもの」との宣戦布告。
順子は信一への愛を貫きたいと思いながらも、紳士的な山本にも心魅かれるようになる。


まずなんてステキなカバー絵!

 信一へのいちずな愛が大きく揺れて、
 実業家山本にひかれる順子は、真実の愛を求めて!


セクシーなイラストとこのリードで、
自由奔放な女性の話かと思ったらぜんぜん違い、まさに「純愛一路」。


収録されているのは表題作のみで、なかなか凝った作りの長編。

特にラストの山本の正体が暴かれる場面では、
80年代のドラマ、「少女に何が起こったか」とか「乳姉妹」とかを見ていたときのように
興奮してしまった。

学生運動という背景も私の心をくすぐる。
私はあの時代に生まれて、そして死んだと信じているが、
会社の同僚に「ふみさんは前世赤軍で“総括”とかやってたよな~」と言われたときには笑った。
でも愛川友子には感情移入しなかったよ。
ちなみに後に文庫化されているが、その時読んだ若い子は
この背景が理解できたのだろうか。


さて、ストーリーとしても十分楽しめたのだが、
またもや性の心理描写で、「えっ!」と驚いた一文がある。


信一が東京に行く前に二人が「旅館」でお風呂に入るシーンだ。

 さっきから順子は、肌に何かを感じていた。抱きしめられてあまい接吻を受けながら、それは急速に順子の意識をとらえはじめた。
 そうではないだろうか。そうかもしれない。わからない。迷いながらもそれはたしかなものになっていった。


わかりますかこれ!
どうしてこんな表現が男の人にできるのか!
ここまで女の気持ちがわかるのか!
…自分の心をのぞかれたような気がした。

とにかく、愛を貫いた二人だ。
ラスト二人は結ばれることを示唆して終わっているが、
ここもまたムーディに私の心をくすぐるのであった。


一人の人を思い続ける。
自分にはできるだろうかと振り返ってみた。どうだろう。


2010年2月5日読了


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