富島健夫作品 読書ノート ~ふみの実験記録

富島健夫の青春小説を読み感じたことを記録していきます。

二年二組の勇者たち

2010-05-23 12:27:56 | コバルト
集英社文庫 コバルトシリーズ 初版:昭和53年12月


東星高校に存在する結核菌のごとき不良分子が、他のまじめな生徒に悪影響を及ぼさぬよう、
一クラスにまとめて閉じ込めてしまえ、というもくろみで生まれた二年二組。

金八先生に「腐ったミカン」の話があったが、物語にそんなドラマチックさはなく、
のほほんと、愛すべき“二年二組の勇者たち”の姿を描き出している。

みんなを笑わせることが生きがい?であるピエロの三平、
いつもイライラして、その矛先をわけなく周囲に向けることで恐れられる熊野良吉、
校内一の暴れん坊 国原新次、
プレイボーイの佐々木、ギャンブラーの由弘、その他なんとなくブラブラしている不良たち…。

そんなつわものたちが揃うクラスの中に、なぜか花のような少女、知子がいる。
あばずれでも不良でもなく、誰にでもにこにこと話しかけ、時にクラスメートの愚行をしかりつける。
知子は大人たちのつまらない偏見で二年二組に入れられたのだが、
実は、知子が一番の変わり者で、つわものなのだと思う。

知子を形容するには、まじめとか優等生とか、思いやりがあるとか誰にでも優しいとか、女らしいとか
そういう言葉ではちょっと違う気がする。

なんというか、人間らしくない…妖精のような感じか?
知子は非常にミステリアスな二年二組のマドンナなのだ。


良吉と新次が決闘のあと語り合う


「こんなおれたちを、西川知子はなぜおそれないんだろう?」

「おれは西川に恋をしてるんじゃないぜ」
「わかるよ、おれもそうだ。おれはただ、あの子にきらわれたくないだけなんだ」
「あの子にきらわれちゃ、おれたちはおしまいだぜ」

「朝、あの子に会う。あの子はにこやかに『おはよう』といってあいさつしてくれる」
「それがなくなっちゃ、おしまいだ」



二年二組には連帯感などない。
しかし、「半年で半分は退学する」という教頭のもくろみがはずれたのは、
そこに、彼らがひとつの“居場所”をみつけたからではないか。

ラスト、知子に思いがけないことが起こるが、知子は飄々として教室から去っていく。
知子のいなくなった教室は精彩のない、まるでただの箱のようだ。

花瓶の花はいらない。けれども教室には花が、人が生きるには太陽の光が必要だということか。


また読み返したい一冊。


2010年5月22日読了


>>次は…『制服の庭』


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