ふみさんは『富島健夫書誌』編著者であり、富島研究家でおられる荒川さんの“押しかけ弟子”として、
書誌第2版刊行に向けて日々情報収集にいそしんでいます。
といっても大したことしておらず、
担当は主にネットと古書店からの情報収集。
ネット情報はおもに雑誌についてのもので、それを荒川さんが国会図書館に行ったときに確認する…ということをしていますが、
国会図書館にないものもあるわけで…。
私は子供のころ「国会図書館には日本で刊行されたすべての本がある」とどこかで聞き、
それを信じていたのですが、違うんですよね。
国会図書館にある本は“納本”によって集まったもので、“納本”されなかったものは存在しない。
そんなわけで、マニア本、特にB級成人誌はお手上げです。
たとえば富島氏はスワップ情報誌『スウィンガー』に対談を掲載していましたが、
古書は高いし、こんな雑誌集めるわけにもいかないしね…(家にあっても困る)。
さて、先日資生堂の広報誌『花椿』に、70年に富島氏が何か書いているという情報をつかんだのですが、
国会図書館には80年代以降のものしかないということで、
資生堂本社にある「HOUSE OF SHISEIDO」へ行ってきました。
ここはワンフロアにギャラリーと図書室が併設され、広告やパッケージが展示されているのですが、
さすが、資生堂。もう美しすぎる。
ビアズリーから毒をとったような山名文夫のイラストは、現代のイラストレーションへの影響力をも感じさせる。
資生堂で使われてるタイポグラフィーも、デザインされてるんですよね。
「過酸化水素クリーム」なんて、きれいになりそう。使ってみたいわ!!
ああーー!ステキーー!!
と、興奮冷めやらぬなか『花椿』のバックナンバーをごそっとデスクに運び、調査開始。
この雑誌、おしゃれやメイクのアドバイスから小説、書評など、盛り沢山な内容。
60年代くらいまでは、さながら『暮しの手帖』がファッション誌になったような雰囲気。
(あの雑誌も10年くらい前まではその雰囲気を保っていたのだけど…)
目当ての号から記事はすぐ見つかり、コピーはNGなので手書きでノートに写す。
「結婚適齢期についてどう思うか」というアンケートへの回答だった。まあ、回答はいつもの調子で。
で、それだけでは終わりません。1度あることは2度ある…かもしれない。
まずは60年代刊行のものをすべてチェック。そして70年代をチェック。
目次を頼りにしていたものの、それだけでは不十分と気づき、また見直し。
このコーナーだけ見ればいい、と思っていたら別の載ってそうなコーナーを見つけ、また見直し。
そんなことの繰り返し。
目が疲れ、肩がこり…ステキな雑誌もずうっと見ているとさすがにしんどい。
とどめに’80年、’59年を見て、今日は終了!
気づいたら3時間ほどたっていました。
トイレに2回もたち、受付の方も不審に思っていたでしょうね…。
で、収穫は?………最初の1点のみ!!
まあ、古本屋めぐりしててもこんなことはざらですけどね。
しかし、書誌の荒川さんは、仕事の合間をぬい、この何百倍もの苦労を7年以上続けて『書誌』を纏め上げられたわけです。
(国会図書館で、ひたすら新聞のテレビ欄だけを調べるなんてことも!)
私なんてまだ1年足らず。あまっちょろいものです。
好きだからこそ情熱をもってできる…とは言っても、先の見えない作業はやっぱりつらい。
研究とは、たまにわずかな光が差し込む、その一瞬を積み重ねてのものなのですね。
書誌で不詳になっている初出情報お持ちの方は、ぜひご一報くださいませ。
ほんとに、大学生のときより真剣だ。
※「HOUSE OF SHISEIDO」は2011年3月で閉館してしまうとのことなので、訪問はお早めに!
あ、『女人追憶 第四部』今月中にあげようと思っていたのに、まだ半分しか読み終わってない…。