富島健夫作品 読書ノート ~ふみの実験記録

富島健夫の青春小説を読み感じたことを記録していきます。

富島研究助手日記(1)

2010-11-29 20:37:17 | 富島健夫研究会

ふみさんは『富島健夫書誌』編著者であり、富島研究家でおられる荒川さんの“押しかけ弟子”として、
書誌第2版刊行に向けて日々情報収集にいそしんでいます。

といっても大したことしておらず、
担当は主にネットと古書店からの情報収集。
ネット情報はおもに雑誌についてのもので、それを荒川さんが国会図書館に行ったときに確認する…ということをしていますが、
国会図書館にないものもあるわけで…。

私は子供のころ「国会図書館には日本で刊行されたすべての本がある」とどこかで聞き、
それを信じていたのですが、違うんですよね。

国会図書館にある本は“納本”によって集まったもので、“納本”されなかったものは存在しない。
そんなわけで、マニア本、特にB級成人誌はお手上げです。

たとえば富島氏はスワップ情報誌『スウィンガー』に対談を掲載していましたが、
古書は高いし、こんな雑誌集めるわけにもいかないしね…(家にあっても困る)。

さて、先日資生堂の広報誌『花椿』に、70年に富島氏が何か書いているという情報をつかんだのですが、
国会図書館には80年代以降のものしかないということで、
資生堂本社にある「HOUSE OF SHISEIDO」へ行ってきました。

ここはワンフロアにギャラリーと図書室が併設され、広告やパッケージが展示されているのですが、
さすが、資生堂。もう美しすぎる。
ビアズリーから毒をとったような山名文夫のイラストは、現代のイラストレーションへの影響力をも感じさせる。
資生堂で使われてるタイポグラフィーも、デザインされてるんですよね。

「過酸化水素クリーム」なんて、きれいになりそう。使ってみたいわ!!


          ああーー!ステキーー!!


と、興奮冷めやらぬなか『花椿』のバックナンバーをごそっとデスクに運び、調査開始。
この雑誌、おしゃれやメイクのアドバイスから小説、書評など、盛り沢山な内容。
60年代くらいまでは、さながら『暮しの手帖』がファッション誌になったような雰囲気。
(あの雑誌も10年くらい前まではその雰囲気を保っていたのだけど…)

目当ての号から記事はすぐ見つかり、コピーはNGなので手書きでノートに写す。
「結婚適齢期についてどう思うか」というアンケートへの回答だった。まあ、回答はいつもの調子で。

で、それだけでは終わりません。1度あることは2度ある…かもしれない。
まずは60年代刊行のものをすべてチェック。そして70年代をチェック。

目次を頼りにしていたものの、それだけでは不十分と気づき、また見直し。
このコーナーだけ見ればいい、と思っていたら別の載ってそうなコーナーを見つけ、また見直し。
そんなことの繰り返し。

目が疲れ、肩がこり…ステキな雑誌もずうっと見ているとさすがにしんどい。
とどめに’80年、’59年を見て、今日は終了!

気づいたら3時間ほどたっていました。
トイレに2回もたち、受付の方も不審に思っていたでしょうね…。


で、収穫は?………最初の1点のみ!!


まあ、古本屋めぐりしててもこんなことはざらですけどね。


しかし、書誌の荒川さんは、仕事の合間をぬい、この何百倍もの苦労を7年以上続けて『書誌』を纏め上げられたわけです。
(国会図書館で、ひたすら新聞のテレビ欄だけを調べるなんてことも!)
私なんてまだ1年足らず。あまっちょろいものです。


好きだからこそ情熱をもってできる…とは言っても、先の見えない作業はやっぱりつらい。
研究とは、たまにわずかな光が差し込む、その一瞬を積み重ねてのものなのですね。


書誌で不詳になっている初出情報お持ちの方は、ぜひご一報くださいませ。


ほんとに、大学生のときより真剣だ。

※「HOUSE OF SHISEIDO」は2011年3月で閉館してしまうとのことなので、訪問はお早めに!

 

あ、『女人追憶 第四部』今月中にあげようと思っていたのに、まだ半分しか読み終わってない…。


制服の胸のここには(コミック版)

2010-11-23 22:10:55 | コバルト

漫画:井上洋子

集英社漫画文庫
昭和55年7月2刷(初版:昭和51年12月)

もとはセブンティーンコミックス。
STコミックスは何世代か装丁変えているので、
初代の金枠?のと2代目のピンクの背表紙の2種類あると思われる。


富島作品を読んで幾度となく胸がふるえたが、
制服の胸のここには、なんでこんなタイトルが思いつくのだろう…。
タイトルだけでなんだかわからないけど涙が出てくる。一番好きな作品名。


さて、富島作品といえば美しい挿画だが、それといかにも40年代な少女マンガの絵柄とのギャップ。
あまりあてにしてなかったのだけど、意外にも原作に忠実で違和感なく読めた。

という意味ではこのマンガ化は成功と思う。

でも、私は会社によく古いマンガを持って行ってみんなに読ませているので、
(最近は楳図先生の『恐怖』。不評だったのは諸星大二郎『アダムの肋骨』)
これならどうかと思いながら、ちょっと躊躇してしまった。


原作に忠実すぎるというのか、少女マンガにしては台詞が多い(三原順みたい?)のでつまらないかも
…というのがわかりやすい理由のひとつなのだが、


逆にいうと、やっぱり「富島健夫の言葉の力はすごい!」と感嘆してしまったのだ。


京太の

おれの正体を知ったらおれをきらいになるきみでなきゃいかん


不良少女の由起子が京太の胸に耳を当て

これは竹中京太の生きている音
ときには希望に大きく高鳴り悲しみに震え


と涙するシーン。


美しい言葉の数々が、マンガだとさらっと流れてしまう。
それは作者の力量というより、マンガの特性だと思う。
また内容がはしょられることで魅力が半減しているのも惜しい。


もし、私が富島健夫のファンでもなく、原作も知らずにこれを読んだなら、
「ただの少女マンガ」とたかをくくり、セリフの一つひとつに気をくばることもなかったかもしれない。

(逆に一コマ一コマじーーーっくり読む作品もあるのでわからないが)


かなりエピソードを削っていながら(肝心な「一緒のクラスにしないでくれ」というのも抜けている)
駆け足に内容をぎっしり盛り込んだ印象がある。
まるまるマンガ化したら、この倍以上にはなるのではないか。
小説で読んだときは気づかなかったが、かなりサービス精神旺盛な作品だったのだ。
(ほかの作品も挿話が多いけど)


私は今までマンガの可能性に傾倒していて、あまり小説や文学を読まなかったが、
富島作品については「ああ、言葉の一つひとつをかみしめて読んでいたのだな」と改めて気づかされた。


このマンガは、原作を読んだ後に楽しむものだと思う。
これで満足してしまうのではもったいない!
言葉を味えればもっとおもしろいんだから!

立ち読みだけでいうのも何だが、原作を“アレンジした?”印象の『初体験』のマンガよりずっとよかった。
映画もアレンジしまくりで別物かな…。いつか見てみたいけど。


2010年11月22日読了

リクエスト募集します

2010-11-14 13:22:37 | つぶやき
冬になり、ブログのテンプレートも一巡してきました。

ごく少数の人に見てもらえればと思って始めたこのブログ。
おかげさまで、みなさまに支えられて続けてこられました。ありがとうございます。
やっぱり誰にも気づかれないのはさびしいものです。

さて、今後も手に入る限りの富島作品は読み続けていこうと思っていますが、
作品数も膨大ですし気の長い話です。

せっかくブログを開いてくれたのに、いつも知らない作品ばかりではつまらないかもしれません。更新も遅いし。
もし、取り上げてほしい作品がありましたら、そのリクエストにお応えするのもいいかなあ
なんて思いました。

当分『女人追憶』四部にかかりきりになりますが、
お気軽にコメント欄やメールでお知らせくださいね。

不安定な気候で風邪ひきさんが増えています。みなさんもお気をつけて!