富島健夫作品 読書ノート ~ふみの実験記録

富島健夫の青春小説を読み感じたことを記録していきます。

まぎらわしい

2010-09-27 20:43:25 | つぶやき

『初夜の海』『青春の海』『初恋の海』…なんてのもありますが、
この3冊はとてもまぎらわしい!

読んでいないからいっそうこんがらがる。
古本屋めぐりにはチェックリストが欠かせません。

ところで左2冊、立風書房版の『恋慕の海』『情感の海』は、
つい最近、ギターの発表会で浦和に行ったときに100円コーナーで手に入れたのですが、
その数日前、『富島健夫書誌』の荒川さんが同じ古書店で見つけ、買おうかどうか迷っていたとのこと!

浦和なんて生まれてはじめて行ったんですよ!何たる奇縁!

さて『女人追憶』第三部、おもしろく読んでいます。
二部ではほとんど出てこなかった妙子もちゃんと存在感あるし、
美津や安希子も登場するようで…さながら同窓会?
終わりには『十三歳の実験』もはじまりそうですね。

ただ、今ちょっと読書がわき道それぎみなので…読み終わるにはちょっと時間がかかりそうです。

東京は急に冷え込んできました。みなさんもお体にお気をつけて!



※2010年10月15日追記

念のため補足。
荒川さんが「買おうかどうか迷っていた」のは、すでに帯なしのものを所有していたからで、
帯のために蔵書を増やすべきかを考えておられたのです。

「財政難」と思った方はいないと思いますが…。

説明不足でご迷惑おかけしました。まさに「まぎらわしい」記事。
大変失礼しました。
荒川さんごめんなさい~。

女人追憶 第二部

2010-09-13 21:39:10 | 女人追憶
小学館 昭和57年5月初版
※集英社文庫版では 「地球の夜の巻」と副題あり


まず、驚いたこと。

冒頭から、

「男は何もひとりの女を守らなければならないということはない。重心を他の女に移さないかぎり、彼女に知られぬように遊ぶ分にはたいした罪にならない」

という真吾の“思想”が明示されていること。

第二部は女教師美津(22~3歳か?)との出会いで幕を開けるのだが、

いきなり

(あの女教師を犯してみたい)

とは!

第一部は真吾の(性の)成長の物語として読んでいて、それが続くのかと思っていたのに、
もうすっかり性の熟練者になっている。

もちろん、真吾と美津は関係するのだが、

ただの「好きだ」ということばは、唯一のものではないのである。そのことばは、何人に告げてもよい。

(略… おれはそんな単純な男じゃない。余裕もある。この人の中に入らなくても、欲望の処理には困らない。おれが今抱いているのは、純粋な欲望よりもむしろ、あたらしい女を知りたいという知識欲なんだ …略)


真吾に戸惑いがあったから許せたところもあるのに、こう開き直られると?困る。
パンツがゴムだか紐だか…。単なる“娯楽官能小説”になってしまったのだろうか、といささかな失望感も。

いつの間にか真吾と妙子の仲は、二人の母親に周知のものとなっているし(父親の姿は全く出てこない)、真吾は東京の大学に合格しているし…。
大学入学までのいきさつはあってもよかったと思うが、それは別の作品を読めば済むことか?
富島作品の読者なら推測して読むが、そうでない人には背景がわかりにくいかも。
まあ、そういうシーンだけ読めればいいのかもしれないが。


それにしても第二部は挿話が多すぎる。
前半は「エピソード」と題して高校時代の、大学入学後の後半も同級生の話でかなり枚数が割かれ、
青春の匂いを漂わせたかったのかなとも思うが、主人公が入れ替わり立ち代わり…ちょっと感情移入の転換が難しい。

しかし、同級生に性の指南をし(その様子はちょっと作者を連想させる)、安希子との関係まで暴露してしまっては…妙子にバレないのか。


大学に入ると、玄人相手に性の処理をする学生もいたようだ。
美津との関係がかなりしつこく描かれていて、その理由がよくわからなかったが、
真吾がそんな女を相手にせずして、性のテクニック?を磨くことができた…という流れだったとも読める。

ふたりのおんなの性だけを抽出した場合、それでもやはり妙子を第一に考えるであろうか?
その結論によってはじめて、自分が妙子をうらぎっているかいないのかが定まる。


第二部ではほとんど登場しない妙子。
“ベアトリーチェ”よろしく幻想の世界にイメージを保持させるためか?


さて、女性から見るいくつかの疑問点。

登場する女性が口唇愛撫や“浴びる”ことを望むことを、「ロマンチシズム」ととらえていること。
私は逆だと思っていたが(どちらかといえばマゾヒズムかと)…。

避妊具の装着による感覚の違いは“男だけ”に生じるということ。そんなことはありません。

そして、快楽におぼれて「今日は安全」と嘘をつくこと。
行きずりの飲み屋の女、しなのは無責任に「ひとりで生む」だの「中絶する」だの言っているが、それでは困る。世の男性方、信じないように。

言わすもがな、「あたしはあなたを愛さないから」といってからだを許す女もそういないと思います。


第一部とはうってかわって否定的な感想になってしまったが、
最後に第二部の“忘れられたくない女”を振り返ってみる。

まず安希子。“呑んで”真吾の存在を自らにとどめようとした…そのセンチメンタリズムはわかるが、
スエノはただの哀れなおばさんとしか理解できず終わった。

そして後半の中心人物、玄人下宿「金沢荘」の不良娘、アキ。これまたキャラクターとしては好感を持てなかったのに、
数回刃物を持ち出すシーン、最後の最後、真吾へのあてつけで四十男と寝てしまったかなしさに胸痛くなる。

一番は、挿話にでてくるやさしい娼婦、夕霧かしら。
なんとなく私のパターンが読まれてきそうですね。気になる女がみんな脇役というところも何だか…。

真吾はセックスは上手だが女心は全然わかってないな…と思う。え、もしかして作者も?!
今は真吾の“未熟さ”を描いているという可能性を期待しつつ。


真吾が金沢荘を出て行く決意をし第二部は終わる。

2010年9月13日読了

お礼いろいろ

2010-09-08 16:34:02 | 番外編
この数週間、『富島健夫書誌』にまつわるあれこれで充実した日々を送ることができました。

今大学生だったらなあ~と、学問とはかけはなれた大学生活を悔やみますが…まあしかたないですね。

編著者の荒川さん、メッセージくださったみなさん、ありがとうございました。


さて、そもそも書誌の存在を知ったのは、ネットのこの記事でした。

直木賞のすべて 余聞と余分

この記事に出合わなければ、書誌のことを知らずに終わっていたかもしれません。
「国会図書館に行くのは2~3年後かな」と思っていましたから…。

「直木賞のすべて」サイトを運営されている P.L.Bさんにも感謝です。ありがとうございました!


『女人追憶 第二部』読んでいます。真吾は東京に来ました。そしてアキと寝ています。
第一部の感想がくつがえりそうな予感です。

それではまた!