何とか休暇をとって目当ての3作品を観ることができました。
客層は…いつもかなり年配。なぜか「君たちがいて」のときだけ小さな女の子連れの母子が。
では見た順に感想を。
君たちがいて僕がいた
1964年東映 監督:鷹森立一
以前ビデオで観たのと感想はさほど変わらない。前ここで「パンチラ」と書いたのが「短パン」の間違いだった(短パン逆上がりのアップ。ラグビーボールを蹴り上げるところはパンチラだったけど)という発見はあったけれど。
本間千代子はかわいいけど、わたしの富島ヒロインのイメージとはちょっと違うかな?(富島研究会のメンバーには人気ですけれども:笑)
※2012年12月4日追記:原作を読んで評価が変わりましたのでこちらもお読みください。
高校三年生
1963年大映 監督:井上芳夫
この映画の原作が富島健夫と聞いたときびっくりした。わたしでも幼い時から歌だけは知っていたものだから。
富島ファンになってからは、Wikipediaで「ヒット曲に便乗しての小説・映画化」といったような誤った情報を流されたために、出版物の記述にまで影響したことに気をもんでいた。Wikipediaに加筆・修正したり、荒川さんがTwitterでつぶやいてくれたことから、だいぶ事態は好転したと思う(推測)。
→役名を確認するためにちょっと検索かけてみたら、「原作は富島健夫の『明日への握手』で…」となっているブログなどが多いですねえ。これは『福岡文学事典』、直さないとまずいんでないかい。「美しい十代」のオークション出品画像でも「『明日への握手』を映画化。題名に舟木一夫のヒットソングを借り」というような文面を確認。
さて、映画自体については、娯楽映画だから「君たちがいて」みたいな感じだろうとさほど期待はしていなかったのだが、これがなかなかいいのである。富島ジュニア小説を読んでいる時の「ときめき」感が、映画のなかにあふれている。
主役が二人の美少女なのも大きな理由だと思う。姿美千子と高田美和は、どちらも芯のある和風美人の顔立ちで、わたしのイメージの中の「富島ヒロイン」に近い。舟木一夫は脇役。ユーモラスでちょっといいやつ、といったキャラクターで、なかなかいい味を出している(存在感はあるので舟木のためにわざわざ作った役だと思うが)。
教師に対するほのかな恋心、友達から一歩進みたい心の葛藤やじれったさ。性への不安、社会の理不尽さ。原作とは若干異なるようだが、「まじめ」さからはずれていない。知子(姿美千子)が姉と恋人のキスシーンを目撃して動揺するシーンは、あまりにも純粋でほほえましい。街並みやインテリアも時代を映し出していて、じっくりと観てしまった。ラストもさわやかで、小路(高田美和)を見送るクラスメートのひとりになったような気持ちになった。
おそらく、富島はこんな乙女チックな物語は書かないだろう。「原作者」本人にしては一人歩きした映画作品になっているかもしれない。けれども、ファンが富島作品を通じて求めているものが、よりわかりやすく描かれているのではないだろうか。
※ところで、パンフレットに原作者名が記されていない件は、荒川さんがツイッターで一つの仮説を立てているのでご覧ください。→富島健夫研究者のつぶやき(やりかたよくわからなかったので…1と2に分かれています)
北国の街
1965年日活 監督:柳瀬観
富島ファンからの評判が一番悪い作品。そもそも、原作となった『雪の記憶』自体ファンの思い入れが強いものだから、そんなこともあるだろう。『おさな妻』程度の崩れ方かな、くらいに思っていたのだが…。
これはひどい!
これで「原作」なんて言えるのだろうか。原作の何を生かしたかったのか。
独創性を出したかったのだろうか、しかし「芯」を抜いて解体して、再構築に失敗したとしか思えない。
『君たちがいて』にしても、娯楽性は強くなっているものの、姉のために大学進学をあきらめようとするところなどに富島作品の根っこが少しは残っている。けれどもこれは…
もう箇条書き
・雪子(和泉雅子)と海彦の印象深い出会い→海彦の落とした万年筆を雪子が拾ってあげるというありきたりなエピソードになってがっくし。
・時代設定が昭和40年代の豊かな時代のため(いちおう海彦は新聞配達しているが)、男女交際がはばかられたり、貧困に悩むということがない、ただの男女のほれたはれたになっている。
・帽子が飛ぶシーン→雪子が落ちないように必死にかばうのではなく、人ごみに揉まれてもだえる雪子をぼーっと見ていたら、帽子が飛んでっちゃった、みたいな感じ。
・海彦がよわっちい。芯があるのが富島キャラなのに。ラストのへたり込むシーンは、怒るよ。
・雪子が「白血病」である理由があるのか。ただ「私は白血病なのー」って台詞だけが浮いていて、雪子が倒れたり鼻血を出したりするわけでもなく、何のために余命を縮めたかったのかわからない。
・「6年」?という中途半端な余命は、大学に行かないで海彦と結婚すればいいのに、という展開から逃れるため? それに、病気のひとり娘を親が東京にいかせるものなのか?海彦への愛より学問を選んだとして、その理由も曖昧。
・藤田(山内賢)のほうが好感的に描かれ、海彦の魅力が半減(どころか薄い)。主役はひとりでいいのでは? 藤田を盛り込んで友情を描きたかったのか。でも『雪の記憶』を使ってそれをすることないんじゃないの。
とにかく、富島哲学と言うべき点がすべて覆っているところがファンには許せないのである。
『故郷は緑なりき』も「死」という点で共通するが、雪子を潔く殺してしまったことがかえって良かったと思う。根本的には原作を良くわかっているし、ラストで男女がサイクリングを楽しんでいるシーンに、わたしはとても感動した。
脚本家の倉本總は、果たして原作に感動したのだろうか…。
同時上映の「絶唱」(監督・脚本:西河克己 原作:大江賢次)との落差がはげしい…。
ちなみにこれは荒川さんと観に行ったのだが、出演者のクレジットに富島の名が?ということで注意深く観ていたら、汽車のシーンでそれらしき人物が…。ビデオで確認したらクレジットはなかったのだけど、左の人物何となく似てる?
似てない?
ちなみにこの映画のキャッチコピーは…
舟木だ、強いぞ、愉快だぜ!
山内だ、パンチだ、イカシたぜ!
ムードとセンスで勝負するぼくらのドラマ!!
舟木弱いが…。
舟木は全然アクションしてないのに、ビデオのジャケットには「青春アクション・ロマン」ともあり、よくわからない映画。
もう観なくていい。
------
正直言うと、舟木一夫という俳優にあまり魅力を感じていませんでした。特に美男子でもないし、八重歯だし…。けれども、絶唱含めて4作も続けて観ると愛着が湧いてきて、ファンになりかけてしまった…。
未だに現役というところもすばらしい。今度テレビで観かけたら、テレビの前に座るとしよう(うたえる歌も増えたし:笑)。
つい買ってしまった…。
舟木ファンにも富島ファンにもうれしい企画だったと思う。
あとは『制服の胸のここには』『青春の海』(以下ロマンポルノ)『初夜の海』『火照る姫』『ひめごころ』を観れば完璧!ロマンポルノはいろいろな映画館で特集されているけど、残念ながらプログラムには入っていないな。機会を楽しみにまとう。
『君たちがいて僕がいた』と『高校三年生(明日への握手)』は原作を未読。ぼちぼち読もうと思います。年内に『黒い河』も読めるといいのですが…。
貴重な秋元ジュニアシリーズの『君たちがいて』はお借りしたもの。大切に読みます!