富島健夫作品 読書ノート ~ふみの実験記録

富島健夫の青春小説を読み感じたことを記録していきます。

映画「君たちがいて僕がいた」

2011-07-18 22:43:47 | 映画

※2012年12月4日追記:原作を読んで評価が変わりましたのでこちらもお読みください。

1964年東映 監督:鷹森立一  

富島作品原作の映画を見るのは「おさな妻」「黒い河」についで3作目。

しょっぱなから、無意味なパンチラや、そそる?水飲み場のショットにびっくりしてしまった。「おさな妻」とは違ったエンターティメント性を感じさせる。

原作を読んでいないものの、どの筋を借りたのかは何となく推測される。けれども、富島作品の持つメッセージ性はあまり表現されていないように感じる。これは富島ファンならでの感覚なのだが、「原作のイメージとは違う」という噂どおり。舟木一夫という当時の大スターの主演ということで、ストーリーはおまけみたいなものなのだろう。

映画「黒い河」はすごく良かったし、原作を読むときもイメージの助けになりそうだという印象だったのだけど、「おさな妻」もこの映画も、どうも富島作品の描く“青春”とはズレがあるような気がしてならない。
「黒い河」をフィクションと考えたときに、ジュニア小説はノンフィクションに近いからだろうか。だから作品が発表された時代でも、すでに作者の見ていた風景とはズレがある。舟木一夫がぼろぼろの服を着ていたら、イメージが違うのかもしれない。

まあそれなりに笑うところは笑え、おもしろかったのだが…。これが富島健夫の小説の中身と思われては困る、という感じ。

ところでこの映画に先生役で登場する俳優が富島氏に似てるな、と思ってそっちばかり見ていたら、千葉真一だった! そのカッコよさと、そんな古い俳優だったのかということに驚いた。

それから、ビデオに「宮島健夫原作」と書いてあった。売りものにこれはないだろう。それにしても「宮島」という誤植は他でもよく見る。

次は「雪の記憶」ファンに悪名高い?「北国の街」を見るつもり。


※しょうさんにビデオを貸していただきました。いつもありがとうございます!


元 『ジュニア文芸』編集長、林力さん

2011-07-12 21:41:00 | その他

7月10日、元 『ジュニア文芸』編集長、林力さんにお会いしてきました。

1966年から71年まで、集英社『小説ジュニア』に続いて小学館より創刊され、ジュニア小説全盛期をリードしてきた『ジュニア文芸』。“小説”でなく“文芸”という誌名からもうかがえるよう、富島氏が特に力を入れて作品を提供してきたと思われるこの雑誌の、しかも編集長にお会いできるなんて、なんという幸運でしょう。

幸いにもある方にご紹介をいただき、荒川さんとの対面が実現。ありがたくも撮影・録音班としてインタビューに同行させていただきました。

林さんは富島氏より2つ年下の昭和8年生まれ。退職後は別荘地に移り住み、現在78歳ながらも若々しく、映画や音楽、読書に忙しい毎日を送っておられるとか。

富島氏とは仕事だけでなく、プライベートでも親交深くともに旅行をすることも。毎晩のように飲みに誘われたりというご苦労もあったようです。林さんの温厚なお人柄もあったのでは?


S44年、鳴子でのスナップ

あけっぴろげで秘密がなく、それでいて慎重。いつもその場の中心でいたいことから、しばしば飲み屋で騒ぎを起こすことも。作家としてのプライドは高く、編集に頭を下げることがない。仕事に酒に忙しくとも締切は必ず守る…作品やエッセーからうかがえる作家像とさほど隔たりはありませんでしたが、中にはびっくりするような裏話も!?

裏話といえば当時の文壇、出版界は相当なヒエラルキー社会だったようです。十万部の売り上げを誇った『ジュニア文芸』の廃刊は「おさな妻」論争が原因と思っていましたがそうではなく…そんなことで?と悲しくなりました。


窓から見渡せる美しい海が壮観!

当時十代の読者だった荒川さんは感無量(かつて『ジュニア文芸』に投書が掲載されたこともあるのですから!)。知識の豊富さもあいまって、林さんとの文学談義にも花を咲かせていました。
それにしても、ブログ「花と戦車」や“評伝”での考察の的確さにはおどろかされました。推測が林さんの証言とほとんどブレていませんでした。

林さんも書誌を丹念にお読みいただき、関連する新聞記事の切り抜きなども準備してくれていました。中には当時の読者から寄せられた、「ジュニア文学論争」で作品も読まずに富島氏を批判する某氏への抗議と編集部への応援レターも!

かなりの年月がたっているはずなのに、旅行の想い出や数々のエピソードを細にわたりお話いただいた林さん。ご本人も「ぼくは彼が好きです」とおっしゃっているように、作家としても、友人としても富島氏を愛していることがひしひしと伝わってくる感動的な時間を過ごすことができました。


『ジュニア文芸』は5年分のほとんどを保管されていました。この圧巻の資料を、なんと、すべてお譲りいただけることになりました!感激です!

詳しいインタビュー内容は、荒川さんが何らかの形で発表してくれると思いますのでご期待ください!

林さん、長時間ありがとうございました!