富島健夫作品 読書ノート ~ふみの実験記録

富島健夫の青春小説を読み感じたことを記録していきます。

2011年読書ベスト5

2011-12-31 17:44:18 | 番外編

あとわずかで2011年も終わりですね。
目標としていた『女人』完読はなりませんでしたが、正月休みにがんばって読もうと思います。

今年最後のブログ更新は、「2011年読書ベスト5」にしたらあ、と某Aさんから提案を受けたので、そうすることにしました。でも、富島以外に読んだ本ってギリギリ5冊しかないんですけれど…。

4月~5月 桐野夏生『グロテスク』(別記事参照)


初桐野体験、その緻密さに感動。

6月~7月 春江一也『プラハの春』


名前だけは聞いたことのあった「プラハの春」。外交官の作者は、経験や資料から当時の状況を緻密に描きつつ、ロマンスとアクション、個性的な登場人物とエンターティメント性を豊かに盛り込み、とても面白く読めた。それこそ、仕事と食事と睡眠時間以外にはずっと読んでいたくなるほど。ヒロインであるカテリーナは、ジャンヌ=ダルクか「ベルばら」のオスカルか、というほどの、ある種神格的な戦士。金木犀が香る、非の打ちどころのない“女神”に対し、主人公の亮介が弱々しく見え、それも作者の一面なのか?と思わせられた。

一番胸打たれたのはクライマックスではなく、ラジオ「ミレナとワインを」に出演を決めたカテリーナに向けた、亮介のこのセリフ。

カテリーナ! ぼくがカテリーナのためにできることは何だろうね。番組を成功させるために……

読中、ちょうど写真展「ジョセフ・クーデルカ プラハ1968」が開催中だったが、他国の関係ない風景に見えた。小説を読んで頭で作り上げたイメージは“リアル”なのに。これも政治や世界情勢に対する無関心のあらわれだろうか…。


100円で買ったら署名本!

7月 春江一也『ベルリンの秋』


『プラハの春』続編。「ベルリンの壁崩壊」までのラブロマンスにドキドキさせられたものの、娘シルビアのキャラクターはカテリーナに及ばず。『プラハ』と比較するとちょっと粗い。シルビアが自暴自棄になり、男遊びしてできた子供を、亮介が何の葛藤もなく受け入れるところはちょっと解せぬ。
『モスクワの冬』も読みたいと思いながら、某新古書店で見つからずそのまま。

10月 桐野夏生『東京島』


Aさんに貸りて読む。発行当時新聞で書評を読み、この作品のモデルとされるアナタハン島事件に興味を持ったので、とりあえずフィルムセンターで「アナタハン島の真相はこれだ!」という映画を見たことがある(技術的にひどいものだったが)。
『グロテスク』と同じく、悪意に満ちた文章は読んでいて気分が悪くなる。桐野作品は特に女性の唾を吐くような言葉がおぞましいのだが、そこにまたリアリズムを感じる。実際女の腹のなかなんてそんなものなのだが、いざ外に出して突きつけられるとおっそろしいものだ。

主題…なんだろうか。ラストは現実社会と仮想社会の対比になっていて、作中、精神世界や新興宗教への皮肉も垣間見えたので、「自然回帰」とかなんだか言っていても、しょせん、社会ができればヒエラルキーができ、法ができ、教育ができ、暇つぶしの儀式や反乱がおきて、歴史を繰り返すだけだ。ユートピアなんてありゃしない。(悪意的に言えば)そんなに今の社会が嫌ならつまはずきの土地で好きに生きてろよ、ということ、または、現代社会は放射性廃棄物や社会を逃げ出した難民に象徴される排他物を生み出すということだろうか。と、これは私なりの読み取り。

11月 二村ヒトシ『恋とセックスで幸せになる秘密』


筆者はAV監督、カバーはエロマンガ(でいいのか)の山本直樹、でこのタイトル。でも男を喜ばせるテクの本ではありません。むしろ逆にそんなことするなと書いてあります(なぜか「ですます調」)。自己啓発やカウンセリング本では、必ず「自分を愛しなさい・大事にしなさい」っていいますが、それができない女性の落とし穴が的確に書いてあります。すごい、すごい本!

今の女性は生きづらい。昔の女性も生きづらかったかもしれないが、逆に“(恋)愛”については、生きやすかった部分もある。ここに『女人』を読んで散々書いてきた疑問を説くヒントがあったので、それは七部の感想を書くときに合わせて書こうと思います。


その他の今年の積読(果たしていつ読むのでしょうか):
ヒューイ・ニュートン自伝『白いアメリカよ、聞け』
森村誠一『悪魔の飽食』(気持ち悪くて読めなくなった)
清水知久『ベトナム戦争の時代 戦車の闇・花の光』(どっかで聞いたことある?)
中谷宇吉郎『雪』
樋口一葉『にごりえ・たけくらべ』
鴻上尚史『ぼくたちの好きな革命』
五木寛之『青年は荒野をめざす』

最後におまけ。昨日買った本を…

花森安治のデザイン


うつくしい永遠のつんどく本となることでしょう。

パトリック・マックール『ザ・シークレットローズ』


久しぶりに買ったトンデモ本。十数年来書棚に眠っている、イェイツの『ヴィジョン』を読む原動力となるか?

 

今年は読書は少なかったものの、冨島家に訪問したり、林力さんにお会いしたり…といった、思いもよらない展開になり、大変充実した一年となりました。
来年は生活のための仕事との折り合いをうまくつけながら、サイト立ち上げられるようにがんばります。

みなさま、今年もありがとうございました。来年もお付き合いのほどよろしくお願いします。
どうぞよいお年を!