漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 0041

2019-12-10 18:14:10 | 古今和歌集

はるのよの やみはあやなし うめのはな いろこそみえね かやはかくるる

春の夜の 闇はあやなし 梅の花 色こそ見えね 香やはかくるる


凡河内躬恒






 春の夜の闇は無駄なことをする。いくら梅の花の姿を隠しても、香りを隠すことなどできようか。

 個人的にとても好きな歌です。梅の花を隠そうとするものとして春の闇を登場させる歌ですが、同じ凡河内躬恒の歌に、

かをとめて たれをらざらむ うめのはな あやなしかすみ たちなかくしそ

香をとめて 誰れ折らざらむ 梅の花 あやなし霞 たちなかくしそ

(梅の花の香りを求めて、誰がその枝を折らないことがあろうか。春霞よ、無駄に立ってそんなすばらしい梅を隠すのでないぞ。)


というものもあります(拾遺和歌集)。こちらは梅を隠すものとして霞が登場していますね。


古今和歌集 0030

2019-11-29 19:31:42 | 古今和歌集

はるくれば かりかへるなり しらくもの みちゆきぶりに ことやつてまし

春くれば 雁かへるなり 白雲の 道ゆきぶりに ことやつてまし


凡河内躬恒





 春が来れば、雁が北へと帰っていく。その白雲の道中に言伝を託してみようか。

 遠く北の国に行ってしまった人(友人でしょうか)に、そちらの方向に飛んで行く雁に託してでも言葉だけでも届けたいという思い。
 作者の凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)は古今和歌集の撰者の一人で、三十六歌仙にも名を連ねる大歌人。古今集には60首が入集していて、百人一首(第29番)にも採られた 0277 は有名。


こころあてに をらばやをらむ はつしもの おきまどはせる しらぎくのはな

心あてに 折らばや折らむ 初霜の おきまどはせる 白菊の花



 個人的には、0041 の次の歌が何とも言えず好きです。


はるのよの やみはあやなし うめのはな いろこそみえね かやはかくるる

春の夜の 闇はあやなし 梅の花 色こそ見えね 香やはかくるる