漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

平成25年度 準1級の本試験から

2014-03-22 10:38:22 | 本試験
 今年度の準1級の本試験3回分を一通りやってみました。感想を一言で言うと、「難しかった!」、です。
 1級同様、長期的に難化傾向だなとは思っていましたが、今年度、中でも 25-3 はかなり難易度が高かったのではないでしょうか。いずれにしても、高得点を取ろうと思えば1級とは別に準1級用の勉強をすることが必要ですね。漢検の1級と準1級は、対象範囲という意味では1級が準1級を包含する関係ですが、実際の本試験は「別のもの」という感を改めて強くしました。


 さて、それでは実際にやってみて気になった問題を少しご紹介します。


<音読み>

官を辞して田園に 【棲遅】 する。   (25-3 (一)12)
 正解は「せいち」。
 お気づきの通り、同じ 25-3 の1級で、【閑居】 の類義語として問われた熟語です。意図してなのかたまたまなのかわかりませんが、同じ熟語が準1級と1級で同時に問われるなんてことがあるんですね。1級の試験が終わったらすぐに正解を調べておけば、それから50分後の準1級で良いことがある? (笑)

万事 【亨通】 ならんことを願う。    (25-3 (一)14)
旧市街は城壁に 【匝囲】 されている。    (25-3 (一)15)
 正解は「こうつう」と「そうい」で、どちらも「漢検 漢字辞典」に掲載されていない難問。この熟語が載っていないというだけでなく、そもそもどちらの漢字にも見出しの熟語が一つもありません。加えて、【亨】 には音読みが「コウ・キョウ・ホウ」と3つありますから、正解に辿り着くのはさらに難しいです。私は「きょうつう」と読んでしまいました。満点阻止系の問題でしょうか。



<訓読み>

天から授かった 【禄】 いである。    (25-2 (一)27)
 正解は「さいわ・い」。これも読めなかったのですが、正解しなければいけない問題ですね。訓読みが弱いのは相変わらず。「要覧」のみに記載されている読みは覚えないと割り切って、「辞典」記載のもののみに絞って勉強していますが、まだまだ穴だらけです。



<書き取り>

平安 【カンテキ】 の生活が・・・    (25-2 (十)1)
 正解は【閑適】。知らない熟語でした。「辞典」の見出しにはありませんが、漢語林によれば意味は「静かに楽しくくらすこと。間適。」とのこと。知らなくても何とかその場でひねり出したい問題ですが、ちょっと出てこなかったです。

【カンゼン】 とするところのない名文である。    (25-3 (五)16)
 正解は 【間然】。これも知りませんでした。不勉強ということではありますが、常用漢字の熟語を網羅するのは難しいです。意味は「非難されるような欠点のあること」(「辞典」P.235)。

胸の 【ス】 く思いがする。    (25-3 (五)19)
 正解は 【空】。【透】と誤答しました。難しい・・・。



 などなどというところで、準1級に取り組むのも勉強になりますね。1級とのダブル受検にもちょっと食指が動きますが、「二兎を追う者は」にならないか・・・。両方となると受検料も毎回8,500円ですしねぇ。うーん。



平成26年度版 過去問題集を購入

2014-03-19 19:56:15 | 雑記
 最新版の過去問題集が発売されましたので、さっそく購入しました。





 今回は初めて3回とも実際に自分が受検していますので必ずしも必要ないかとも思ったのですが、準1級の問題も入っていますし、手元に書籍として揃えておきたい(←こちらの気持ちの方が強いかな?)思いもあり、例年通り購入することにしました。準1級の3回分をやってみるのが楽しみですが、せいぜい180点くらいなんだろうなぁ・・(苦笑)


 しかしいつも思いますが、協会の出版物は価格が高いですよねぇ。。。 とは言っても4月からは消費税が上がって更に高くなりますから、買うのであれば今のうちが良い???

本試験(六) 熟字訓・当て字の解答

2014-03-17 21:06:34 | 本試験
 3/6の「熟字訓・当て字の解答」の記事で、熟字訓・当て字の解答はひらがなとカタカナを書き分けなければならないかどうかということを書きましたが、漢検協会に問い合わせたところ、特に指定がない場合は、どちらで書いても正解とするとの主旨の解答をいただきました。私の他にも気になっておられる方もいらっしゃるかと思いますので、ご報告します。

過去問からの気づき

2014-03-15 13:30:15 | 雑記
 過去問からの気づきのお話しの続きです。

 1級は市販の問題集が少ないことが受検者の悩みの種でもあるわけですが、その数少ない問題集の中で、やはり過去問題集は重要です。最近特に感じているのは、過去問で直接問われている箇所はもちろんなのですが、問題文に含まれている他の部分も含めて、過去問を文字通り隅々まで教材として活用すべきだということです。今までそんなこともしてなかったのかと言われそうですが、自分のこれまでを振り返ってみると、やはりまずは問われている箇所そのものに目が行き、答がわかれば解答して前後など見ずに次に行くというのが通常だったように思います。書き取り問題が分からない時に文脈から考えようとして初めて周囲を見る、という感じでしょうか。試験本番では時間の制約もあるのである程度いたしかたないと思いますが、「過去問全体を教材として活用する」という観点で改めて見て行くと以下のようにさまざまな発見がありますので、普段の勉強で心がけていきたいと思います。



<同じ故事・成語の別の箇所が問われている例>

【目は毫毛を見るも マツゲ を見ず。】   16-2
【目は ゴウモウ を見るも睫を見ず。】   25-2

【痘痕も エクボ。】  15-3、18-2
アバタ も靨】  20-3、25-2、準1級23-3

ガイフウ 南よりして彼の棘心を吹く。】  19-1
【凱風南よりして彼の キョクシン を吹く。】  22-1

【奔車の上に仲尼なく、フクシュウ の下に伯夷無し。】  19-1
ホンシャ の上に仲尼なく、覆舟の下に伯夷無し。】  22-3


<他の形式の設問のヒントになっている例>

【衆口金を鑠かし セッキ 骨を銷す。】  25-2 故事・諺
【衆口鑠金  25-3 四字熟語



 先月の 25-3 で 【勖勉して名を虎榜に連ねた。】 という問題がありました。今回問われたのは 【勖勉】 の読み(正解:きょくべん)ですが、後半部分は 【名を コボウ に連ねる。】 と、書き取りの問題になりえますね。「漢語林」によれば 【虎榜】 とは官吏登用試験に及第した者の姓名を記す札のこと。【名を虎榜に連ねる】 は試験(もともとは科挙)に及第することを言います。中島敦「山月記」にもこのくだりがあるようですから、文章題にもなるかもしれませんね。なお、「漢検 漢字辞典」にも、【榜】 の項(P.1406)の「下つき」欄に小さく 【虎榜】 と出ています。



 勉強していると、このように次から次へとやりたいことが出てきてしまい、困ってしまいます。エクセルの「自分辞書」作りも、準1級は終了しましたが続いて常用漢字にも取り組みたいですし・・・。楽しくて嬉しい悲鳴というところでしょうか。




【禿筆を呵する】

2014-03-14 19:20:08 | 故事・成語・諺
 寒い日と暖かい日が行ったり来たりですが、着実に春が近づいて来ていますね。南の方から桜の便りが聞こえてくるのも、もう間もなくでしょうか。



 さて、ここ数日、最近(昨年度及び今年度)の過去問を眺めています。過去問の大切さはかねてから痛感しており、何度も見直しているのですが、それでも見る度にまた新しい気づきがあります。きょうは 【禿筆を呵する】 について。


 これは 24-2 で、 【禿筆をする】 の形で、故事・成語・諺の問題として出題されました。この回は私は受検していないのですが、これ以外にも 【キケンを被って稚児を威す】 (正解は「鬼臉」)、【君はの如く、民は水の如し】 (正解は「盂」) など故事・成語・諺は難問揃いで、合格者の平均でも20点満点中11.7点という恐ろしい回だったようです。

 で、24-2 をやってみた時、もちろん私もこの問題はできなかったですし、そもそも何をどうやって勉強していたら正解できたのかもわからなかったのですが、今回改めて調べていて、「漢検 漢字辞典」の 【呵】 の項(P.142)に小さい字で 【呵筆】 が掲載されているのに気づきました。「辞典」特有(?)の記載の仕方で、読みも意味も書かれていないのですが、「漢語林」を調べたところ


【呵筆】
 息を吹きかけて筆をあたためる。寒い時に詩文の下書きをすること。転じて、詩文に力を用いること。


とありました。まあ、24-2を見る前にここまで調べていたとしても、それでこの問題が正解できたかどうかはかなり怪しいですが、それでもやはり「辞典」の中に何のヒントもないような問題はほとんどないのだな、と改めて思いました。「辞典」を渉猟し尽くして、こんな問題もその場の連想や類推で正解できるようにいつかなりたいものです。