漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

続・初めての合格のために その3  ~1級四字熟語への取り組み~

2015-02-15 17:57:09 | 初めての合格のために
 続いては合格へのもう一つのポイント、1級四字熟語への取り組みです。なかなか負担の大きい、時間も精神力も要する項目ですが、克服すれば確実な得点源ともなる分野ですので、しっかり取り組みたいところです。



<なぜ「網羅」することが必要か>

 このブログでも繰り返し書かせていただいていることですが、私が1級配当の四字熟語は「過去問や問題集にあるもの+アルファ」にとどまらず、すべてを網羅して学習すべきと考える理由は以下の通りです。

1. 配点が大きいこと
 四字熟語が直接問われる本試験の設問(五)に30点が配点されているだけでなく、一見新出問題と見えるものも、1級四字熟語の知識があれば正解できる問題が毎回複数出題されており、これを網羅することで50点程度の得点確保が見込めます。その波及先は、(一)読み(二)書き取り(四)語選択書き取り(八)類義語対義語(九)故事・諺(十)文章題と、本試験の設問のほぼ全域に渡ります。

2. 1級配当漢字が学べること
 1級配当とされている四字熟語には、基本的に一つ以上の1級配当漢字が含まれており、四字熟語を一通り学ぶことで、1級配当漢字の半数近くに触れることができます。これによって、最近難化が著しい音読み問題対策としての効果も期待できます。

3. 出題範囲の限定された分野であること
 網羅すべき1級配当四字熟語は、「●●之●」型のものも含めて約1,000語です。学習開始当初の段階でもともと知っている熟語は殆どないと思いますからこれはこれで厖大な数とも言えますが、それでも範囲は明確に限定されています。これを網羅することで設問(五)では28~30点が期待でき、さらに20点分以上の波及的効果も望めるのですから、1級全体の中では非常に効率の良い、「おいしい」分野と考えるべきでしょう。

4. 間接的ながら、(五)の下位級配当四字熟語対策にもなること
 これは少し説明が必要かもしれませんが、1級四字熟語を網羅しておけば、このところ本試験(五)でほぼ必ず出題されている下位級配当四字熟語や「漢検 四字熟語辞典」に載っていない四字熟語の問題への対策にもなるということです。なぜならこうした問題は出題されたとしても1~2問であり、それ以外の1級四字熟語8~9問を正解してしまえば、あとは「消去法」が効くからです。こうして言葉だけで書くと実感が湧かないかもしれませんが、今後の記事で本試験中の思考パターンについて触れる予定なので、そちらで改めて詳しく書きたいと思います。



<1級四字熟語への取り組み方>

 さてそれでは実際の取り組みですが、「漢検 四字熟語辞典」は必ず用意して手元においておきましょう。始めから「『漢検 漢字辞典』を隅から隅まで精読して全部覚える!」という勉強法を取る人には必要ないかもしれませんが、当記事はそういうやり方ではなく、いかに効率よく初合格を達成するかが主眼ですので、やはり四字熟語辞典はあった方が良いと思います。

 最終的には1級配当のものをすべて学習するわけですが、手始めはやはり過去問にあるものからでしょう。「完全征服」と「分野別」には、のべで約260、重複を除くと約190の1級四字熟語が問題として掲載されていますので、その他の分野と同じくこれをひたすら解いて覚えて行きます。直近の本試験ではこれらに含まれないものも毎回出題されていますから、それも含めれば広義の「過去問」で200以上の四字熟語を学習することができるでしょう。この際、もちろん問われていない方の2文字も書けるようにするとか、意味も選択肢がなくても言えるようにするとかに越したことはありませんが、前回書いたように、始めからそのように勉強のハードルを上げて取り組むことはお勧めしません。出された問題をその問題としてそのまま正解できることを目標に数と回数を重ねて行ければ、それで良いと思います。

 そのような取り組みの結果、過去問の学習に目処がついてきたら、次は過去問にない熟語です。ここで念のための留意事項ですが、「漢検 四字熟語辞典」で「1級配当」とされている熟語の中には、漢検配当外の漢字が使われているものが50ほどあります。これはさすがに出題されることはないでしょうから、学習対象から外しましょう。またそれ以外でも、単に人の名前を4つならべただけのものや、地名などの固有名詞の部分、さらには、意味内容が余りに下世話ないし貧弱なものは除いても良いと思います。
 さて、これらを適宜除くとして、学習すべき熟語数は残り約800。こちらは問題形式になっていないのですから、四字熟語辞典から自分で抽出して学習していかなければなりません。ノートやエクセル、単語カードなどに転記するとか、またその際もそのまま書くのが良い人もいれば、問われそうな2文字を隠して問題形式にした方が良い人もいるでしょう。そのあたりは、試行錯誤して自分にフィットしたやり方を見つけていただきたいと思いますが、PCやエクセルが得意な方であれば、私がしたようにエクセルで問題集化するのも良いと思います。

 それから、四字熟語分野に限りませんが、先人のブログを教材として活用することもぜひ検討してください。一例をあげれば、and さんが書かれている 「漢検レシピ Season 2」 などは非常にお勧めで、四字熟語の他にも故事・諺、熟字訓・当て字の問題が大変充実しています。

 また、私が良く用いた方法としては、このブログでも時折ご紹介していますが、何かのテーマで四字熟語をまとめ、整理することも、記憶の定着に有用と思います。手前味噌になりますが、当ブログのカテゴリ「四字熟語」の記事なども参考になさってください。


続・初めての合格のために その2  ~過去問への取り組み~

2015-02-15 11:08:18 | 初めての合格のために
 2回目です。今回は、過去問(「完全征服」「分野別」を含む)への取り組みについて、ランダムに思うところを書きます。あまり系統だった記事にならないかもしれませんが、ご容赦ください。


<過去問は何年分必要か>

 これは、「多ければ多いほど良い」という身も蓋もない答になるのですが、一方で前回の記事の「A分類」では、「平成21年度以降の過去問(及び完全征服・分野別)」としていました。理由は二つあります。
 ・平成21年度以降のものであれば、ネット書店などで今でも比較的容易に入手できること。
 ・それ以前の古い過去問は、「完全征服」「分野別」で十分に補えること。
です。逆に言うと「完全征服」「分野別」は教材として必須で、それがあれば無理して古い過去問を入手する必要はないと思います。


<「完全征服」と「分野別」は両方必要か>

 両者は問題の重なりも少なくないですが、同じ問題があってもやれば復習になりますし、重なっていない問題も相当数あるのですから、私はこれは両方持っておいた方が良いと思っています。となると、「分野別」が出たことで、「完全征服」はもう増版されないでしょうから、「完全征服」は今のうちに入手しておいた方が良いかもしれません。


<前年の過去問はいらない?>

 過去問は「5回前」の分以前から出題される、と良く言われます。ただ最近は 25-1 で出された「恃(たの)む」の読みが、25-3 でまた出たなんてこともあるのと、年度の第3回のときの「5回前」というと前年度の第1回ですから、結局年度内に前年度の過去問も必要になります。ですから、前年の過去問もできれば手元にあった方が良いと思います。


<過去問への取り組み方>

 さて、過去問を入手したらいよいよ勉強開始です。前回書いた通り、過去問は「100%の正解」を目標とするのですから、1度や2度の学習ではとても足りません。何度も何度も反復して取り組む必要があります。それに際してどんなやり方が自分にフィットするかは最終的には人それぞれだと思いますが、私としては、
 学習当初からひとつひとつの問題に深入りすることは避け、とにかく問題数と回数をこなす
ことを強くお勧めします。

 過去問は重要問題・出題ネタの宝庫であり、最終的には「読み問題も書けるようにする」とか「問題文の中にある、直接問われていない箇所も覚える」とかいった取り組みをすれば、「E分類」問題の対策としても非常に有用です。しかしながら、厖大な数の問題(「完全征服」2500問、「分野別」2390問、これに直近の過去問数年分が加わります)をこなすのに初めからそうした取り組みをするのは相当強靭な精神力を必要とし、普通の人であれば、途中で嫌になってしまうリスクが大きいと思います。「意味内容までしっかりと理解し覚える」「読み問題だが書ける」「問われていない箇所を次回問われても正解できる」といったことへの取り組みは一定以上の基礎力がついてからで十分ですし、またその方が、そうした発展的な力をつけるのに必要な時間・労力も少なくて済むはずです。

 ですので私としてはとにかく「過去問とまったく同じ問題が出たら反射的に正解できる」状態まで繰り返し学習することが、特に基礎力作りの段階では極めて重要と考えます。実際にそうした状態に近付き、過去問は飽きてしまってつまらない、もう余りやりたくないといった気分になれればしめたもの。そうなったら、上に書いたような発展的な取り組みに移る機が熟したということではないでしょうか。

 繰り返しますが、過去問は「100%正解する」ことが目標です。合格には全体で80%正解しなければならず、新出・初見の問題も必ずたくさん出るのですから、過去問の正解率が80%といった状況では、到底合格はおぼつきません。そして過去問そのままの問題は、難化が著しい今年度でも84点~97点分、近時では非常に易しかった 25-2 ではなんと114点分も出題されています。これらの問題を100%に近い正答率で乗り切れば合格に大きく近づけることは間違いありません。



続・初めての合格のために その1  ~過去問と1級四字熟語が大切~

2015-02-15 00:08:23 | 初めての合格のために
 「初めての合格のために」の続編を、ぼちぼち始めて行きます。書きたい内容はいくつかありますが、私の主張の要点は1年前と同じです。


 漢検1級に合格するためは、

1. 過去問、「完全征服」、「分野別精選演習」を徹底的にこなすこと。
2. 1級配当四字熟語を、「○○之○」の形のものも含めて、すべて自分のものとすること。

の2つを達成することが最短かつ最重要であり、これらをものにした上で、あと少しのプラスアルファを積み重ねれば1級に合格できる。


まずは、25-3 以降の1級本試験の難化にあってもこのことに変わりはないことを実際の本試験問題に基づいて確認し、その上で思うところを書いて行きたいと思います。


 先週実施された今年度第3回の本試験問題を、いつものように次のA~Eに分類します。

分類A   「平成21年度以降の過去問」 「漢検1級 完全征服」 「漢検1級 分野別精選演習」 にある問題。

分類B   Aとまったく同一ではないが、Aを勉強していれば正解できる問題。

分類C   A・Bには含まれないが、1級配当の四字熟語(「●●之●」形のものを含む)の知識で正解できる問題。

分類D   A~Cには含まれないが、平成15~20年度の過去問にある問題。

分類E   A~Dのいずれにも含まれない問題。


 結果は以下の通り。数字は左から順に、A~Eそれぞれに分類された問題の配点です。

(一)   6  11   1   0  12
(二)  12   2   0   0  16
(三)  10   0   0   0   0
(四)   4   0   0   0   6
(五)  10   0  12   0   8
(六)   6   0   0   0   4
(七)   4   1   0   0   5
(八)  10   0   2   0   8
(九)   2   0   6   0  12
(十)  20   2   0   0   8

 計   84  16  21   0  79

 
 つまり、私が「ここが重要」と考える分類A~Cの問題で計121点分(84+16+21)が出題されているということになります。私がこの形の分析を開始した 25-2 以降のこの数字の推移は

 25-2  146 点
 25-3  143 点
 26-1  122 点
 26-2  118 点
 26-3  121 点

となっており、明らかに今年度は試験の難易度が増していることがわかります。また、前回と今回は3点だけの違いにもかかわらず、私も多くのリピーターの皆さんも「今回は前回よりかなり易しい」と感じている理由の大部分は、分類Eに属する問題が前回よりかなり易しかったという点にあるものと思われますが、この点はまた次回以降の記事のどこかで触れることになると思います。

 さて、参考までに私の今回の自己採点結果を上記分類に対応してご報告しますと、

分類  私の得点  配点  得点率
A    84点   84点  100%
B    15点   16点   94%
C    21点   21点  100%
D     0点    0点   -
E    53点   79点   67%
計    173点   200点

となっています。要するに、こんなブログを立ちあげていつも偉そうなことを書いていますが、過去問と1級四字熟語以外の問題は7割も正解できていないということです。逆に言えば、過去問と1級四字熟語をしっかりと学習して分類A~Cで満点に近い得点ができれば、その他の問題は7割でも170点代が取れ、5割取れば合格点の160点に達するということになるのです。「え~、いくら過去問って言っても、100%正解は難しいよ。まして1級四字熟語は、過去問だけじゃなくて全部でしょ??」と思われる方がいらっしゃる(多い?)かもしれません。もちろん、1級はこうした分類など関係なく、すべての範囲・すべての問題を万遍なく8割正解すれば合格です。しかし、過去問と四字熟語という「限られた範囲」のことを100%近くまで習熟することと、それ以外のすべての範囲のもの(6000字の漢字の組み合わせですから、無数にあると言うべきでしょう)を万遍なく80%習得するのとどちらが簡単・効率的かは、比べるまでもないと思います。


 ここまでを踏まえ、冒頭に書いた私の考えを別の観点で言い換えますと、漢検1級初合格に向けては、

1.  分類A~Cは、100%正解を目指して徹底的にやり込む。
2.  分類Eは、(実際はA~Cで5%程度は誤答してしまうことを前提に、)60%の正解を目指す。

ことが勉強効率の観点で有用であり、ひいては合格への捷径だということになります。


ではまた次回。