暴走事故について考えてみる、今回で4回目になりました。
今回は、
高齢で運転技術の練度が衰えたドライバーなら、ペダルの踏み間違えをする可能性が高いから、MT車でも暴走するのでは?
と言う事について話してみます。
結論から言いますと、ほとんど有り得ないと思います。
理由は凄く簡単。
MT車では、ペダルを正しく操作できないと、普通に運転する事ができないから。
です。
ドライバーがやる「仕事」について考えてみましょうか。
・発進加速~50km/hくらいまでの定速走行。
AT車ではDにシフトしてブレーキから足を離してアクセルを踏む。
速度が50km/hになればアクセルの踏み加減を浅くして速度調整するだけ。
・50km/h~減速停車。
AT車では、止まるまでブレーキを踏み続ければいいだけ。
そこに運転の練度は何ら必要ありません。
しいて言えば、ペダルを間違えずに踏むだけ。
7行くらいで説明が済んでしまいましたね。
だから、幼児でも動かせてしまう・・・
では、MT車はどうでしょう。
一般的な5段ギアのMT車の場合。
・発進加速~50km/hくらいまでの定速走行。
1速ギアにシフトして発進する際に、車の免許を取得するにあたっての最大の難関の一つである、クラッチミートが存在します。
これは、左足で半クラッチという微妙なつなぎ方の調整ができないと、エンストを起こしたり、ガックン発進をしたりで、まともな発進ができません。
そして、2・3・4・5速にシフトアップしていきますが、シフトの際には
右足で一瞬アクセルの踏み方を緩める → 左足でクラッチ踏み込む → 左手でギアを次のギアに正しくチェンジする → 右足でアクセルの踏み加減を調整し左足でクラッチをつなぐ(ここでも半クラッチの練度が要求されます)
という一連の作業を ギアチェンジする度に実施しなければなりません。
4回操作が必要になりますね。
・減速の場合はまだ楽で、ブレーキで減速してエンストする直前まで減速したら、クラッチを切る。
止まってからギアをNに戻す。
それでもAT車に比べ、左足でクラッチを踏む・左手でギアをNに戻す、という操作は1回ですが必要です。
因みに、左足でクラッチを切らなくてはエンストしてしまいますから、ドライバーは止まる時に足がクラッチを踏むような習慣が身に付いてしまいます。
発進~定速走行~停止。
AT車に比べ遥かにやる事が多いですよね。
動画を撮ろうと思いましたが、わかり易い動画を上げていらっしゃるHPを見つけたので、ご覧ください。
→ マニュアル車(MT車)の運転方法・出発手順を5ステップで思い出す動画集
さて、もうお判りかと思いますが、MT車のドライバーは無意識に「止まる時はクラッチを切る」動作をするように習慣が付いていますので、駐車場でブレーキと間違ってアクセルを踏んでしまっても、左足ですぐクラッチを切る事ができるのです。
常日頃から両足と左手の動きが自然と訓練されているので、とっさの時には対応が効くのです。
これは、どんな高齢ドライバーであっても、MT車を普通に運転できる状態であるのなら、左足のクラッチ操作、右足のアクセル操作、左手のギアセレクト が、きちんとできているという事を示しています。
だから、踏み間違えの心配は無いでしょう。
逆に言うと、MT車が普通に運転できなくなってきた場合、安易にAT車に乗り換えるのではなく運転免許返上の道を選ぶべきだと、私は考えています。
因みに、私の周囲では田舎と言う事も有り、高齢者ドライバーの8割以上がMT車を運転。
そのうち、8割がMT車が設定されている軽トラックで、男女問わず乗っています。
私の知っている限り、86歳の男性が最高齢のMT車ドライバーですが、まともに運転していますよ。
MT車は外からでもギアチェンジの様子がエンジン音の変化で判るので、上手・下手の判断ができますが、上手に走っています。
また、この地域では踏み間違えによる暴走事故は皆無だそうです。
(交通事故そのものも少ないみたいで、2年間警察の管轄内での死亡事故はゼロと聞いています。)
次は、AT限定免許について。