家庭用ビデオカメラの進化をニンチドショーで観て、テレビドラマのフ
ィルム映像からビデオ映像への切り替えの歴史が気になった。70年代前
半まではテレビドラマは映画のコンパクト版みたいなポジションで、フ
ィルム撮影のドラマが多く、テレビ映画と呼ばれていた。ビデオ撮りの
機材がかさばるせいと考えられ、NHKの朝ドラや中学生日記を観ると
セット内はビデオ映像だったが、ロケはフィルム撮りという統一感のな
さを感じた。70年代後半から80年代には刑事ドラマのようにストーリー
が重いものはフィルム。学園ドラマやホームドラマのような生活描写が
メインのものはビデオ撮りと住み分けがされた。その点では2時間ワイ
ドドラマは微妙で元祖の土曜ワイド劇場の初期はフィルム撮り作品が多
く、追従の2時間ドラマはビデオ撮りが多かった。実際、視聴者の意見
では「画面が明るいドラマ(ビデオ撮り)よりも暗いドラマ(フィルム)
の方が良い作品が多い気がする」というのをテレビ番組表雑誌で読んだ
記憶がある。フィルム作品の方が良い作品が多いとは筆者は思わないが、
ビデオ撮りは安っぽく見えるのも事実。アイドルを主役にしたドラマは
ハッキリ見えるビデオ撮りがセオリーだがスケバン刑事(デカ・1985年)
はフィルム撮影なので世間からは驚かれた。しかし作風上ヒーロー物の
延長ゆえ、そのスタッフの手による変身しないヒーローとする道を選ん
だのだ。しかし、伝統ある水戸黄門がフィルム撮影からビデオ撮りに19
98年の第26部から切り替わった。「カツラと肌の繋ぎ目のメイクがばれ
る」というリスクがあるものの「こちらの方が見やすい」という判断を
下したのだ。結果として視聴率が上がったのでほぼ全てのドラマはビデ
オ撮りとなった。ただ…特撮ヒーローだけは役者の呼吸が伝わるような
ビデオ撮りよりも、一歩ひいたフィルム作品の方が適していた。また着
ぐるみの素材まで伝わってしまうのもマイナス要素だったのだ。しかし、
ビデオ撮りを採用した作品はいくつもあり、ウルトラセブンの平成シリ
ーズ(1994年)当初はビデオ撮りだったが、途中からフィルム風の効果
を施すようになり、過去の作品も画質をフィルム効果を施してソフト化
した。ビデオ撮りヒーローで印象深いのはサイバーコップ(1988年)で
切り絵のような合成は失笑ものだったが熱いストーリーは評価された。
ただ…ビデオ撮りへの反発が少なくなかったのか東宝は次の作品はフィ
ルム作品に変更。ビデオ撮りで成功を収めたのは仮面ライダークウガ以
後の平成シリーズだが、カブト(2006年)以後はフィルム効果が加えら
れる。戦隊シリーズがいつからフィルムからフィルム効果のビデオ撮り
となったのかはハッキリとわからないが、ウルトラの方はネクサス(20
04年)から。どちらにしても、一般ドラマからはフィルム撮りやフィル
ム効果はなくなり、特撮はフィルム撮りこそなくなったが、フィルム効
果は手放せないという結論に至った。平成ライダーは YouTube のオフィ
シャルで観れるけど、サイバーコップは放映時にVHSに録画したが、
母がテープを全て捨ててしまった(泣…リンクを参照)今さらながら何
処かで観る事はできないのかが気になり始めている???
~PS~
本文ではビデオ撮りとしたが、正確にはデジタル撮影というらしい。
この記事はお察しの通り、昨年の秋に書いたのだが…急ぎの話題では
ないので足踏みしていた記事です。4月は多忙なので時々このような
のが出ます。