縁側でちょっと一杯 in 別府

東京から別府に移住してきました。
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医療崩壊の危機(1)医師の不足あるいは偏在

2007-05-01 00:54:21 | 最近思うこと
 医療は僕の関心の高い分野の一つであり、3回くらいに分け、現在のわが国の医療の問題について考えて行きたい。

 わが国の医療制度は、世界屈指の長寿国を実現するなど、総じて優れた制度だと考えられる。特に「国民皆保険」は世界に誇るべき制度である。日本では国民は誰もが医療保険(健康保険)に加入する仕組みになっているが、例えばアメリカでは5,000万人近い無保険者がいる。彼らは必要な医療すら受けられない危機に直面している。
 又、急速な高齢化の進展による医療費増大が懸念されているが、医療費を対GDP比でみると、日本は8%で、アメリカの15%、フランス・ドイツ11%等と比較し、実はわが国のパフォーマンスは良い。個々の医療機関がとても効率的とは思えないが、わが国の医療制度全体を見れば十分効率的と考えられるのである。

 では、こんな日本の医療のどこに問題があるのだろう。第一は医師不足、第二は医療機関の経営の悪化、そして、その根底にあるのは医療行政の失敗ではないだろうか。

 まず医師不足について。最近よくマスコミでも話題になっているが、正確には医師の不足ではなく、医師の偏在である。医師は都会の大病院には集まるが地方の病院には行かない、都会で開業する者は多いが地方に赴く医師はいない、あるいは産婦人科、小児科、麻酔科等における医師の不足である。
 前の二つ、即ち病院間や地域間の格差は、直接的には2004年の新研修制度導入がきっかけと考えられる。従来、新人医師の多くは大学の医局に残り専門分野を学んでいたが(というか、教授を頂点とするピラミッド構造に組み込まれていたわけだが)、新制度では2年間、内科、外科、救急など各科を回って総合的な診察能力を養う形に変更された。この趣旨自体は悪くない。
 が、事前に医局制度の改革を図ることなく、又、新人医師が全国に分散して研修を行う体制を構築することなく、制度を開始したことが問題なのである。

 新研修制度導入の結果、昨年から大学病院や地方の病院に新人医師が行かなくなってしまった。新人は大都市の大病院に集中したのである。大都市の大病院は研修プログラムがしっかりしているし、待遇も良い。ずっと大学に残ることを考えなければ医局に残る意味は無いのである。
 新人を獲得できなかった大学病院は、自らの病院、医局を維持するため、それまで地方の病院に派遣していた医師を引き揚げ始めた。このため地方の病院では、救急医療を止めたり、病棟やひどいときは病院そのものの閉鎖まで起きている。
 又、医師の不足により、残った医師の責任、診察等の負担は増し、その重圧、重労働に負け、地方の病院を去る医師が増えていると聞く。それが地方の医療崩壊にさらに拍車を掛けているのである。

 次の特定科の医師の不足には、その科特有の理由がある。まず産婦人科。少子化の問題もあるが、大きいのは訴訟リスクである。公衆衛生の改善や医療技術の進歩により、お産は無事で当たり前、何かあれば医師が悪い、との風潮が蔓延して来ている。人間である以上、医師にもミスはあるかもしれないが、当然医師の力の及ばないときもあるだろう。その線引きが難しく、産婦人科は訴訟となるリスクが高く、医師に敬遠されつつある。
 小児科は、子供ゆえの診察の難しさに加え、投薬量が大人の半分以下で医療機関の利益に繋がらないと考えられている。麻酔科は激務の割りに他科からの評価が低いとの問題がある。共に成り手が少ない。

 こうした医師の不足は、次の医療機関の経営悪化の問題にも繋がっている。次回はこの経営の問題について見て行く。

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