縁側でちょっと一杯 in 別府

東京から別府に移住してきました。
のんびり温泉に浸かり、美味しい魚で一杯。
夢に見た生活を楽しんでいます。

香港食い倒れの旅その3 ミシュラン3つ星『龍景軒』でワインペアリング

2018-02-20 18:13:05 | もう一度行きたい
 今回の飛行機はマイレージで取ることができてタダ。その分食事を奮発しようと、中華料理で世界初のミシュラン 3つ星を獲得した店『龍景軒』に行くことにした。フォーシーズンズ・ホテルにあるお店だ。ネットでは予約できなかったので、知り合いに頼み予約してもらった。ワインペアリング付きのコースを予約。デザートを含め料理 8品にワインが 5杯。一流のお店がどのような組合せをするのか楽しみだ。

 フォーシーズンズは、香港島の中環(セントラル)、ビクトリア湾を臨む絶好の場所にある。お店は 4階であるが、眺望を遮るものがなく、ビクトリア湾や九龍の夜景がよく見える。僕らは窓際の席に案内された。もっとも夜景といえば断然香港エリアの方が華やか。九龍側は超高層ビルICCが地味にライティングしている程度で少し寂しかった。
 店内はというと、バブリーな感じはなく、高級感ある落ち着いた雰囲気。一流ホテルのレストラン、中華というよりもフレンチのお店のよう。僕は一応ジャケットを着て行ったが、周りを見るとカジュアルな服装の人が多い。半そで短パンとかでなければ大丈夫そうである。

 さて、席に着くと、まずメニューの確認。ネットのメニューに書いてあったデザートがちょうど今終わってしまい、通常メニューから一つ選んで欲しいとの話があった。お店のお勧めは“マンゴーとサゴクリーム”だという。
 と、ここで妻がクレーム。「えっ、私は、この“ジャスミン茶のクリームとナッツを詰めたウィリアム梨”を楽しみにしていたのに。どうして もう無くなったの。」と不満たらたら。別に僕はどちらでも良かった。そもそも両方ともどんなものか想像が付かない。結局、妻は渋々マンゴーにした。ペアリングのワインはマンゴーに合うものに換えてくれると言う。こうして決まったのが写真のメニューである。

 折角のディナーなのに幸先が悪い、と思ったのも束の間、妻が一転幸せになる出来事が。
 なんと、お店の方がデザートのお詫びにと言って、シャンパンをサービスしてくれたのである。それもグラスになみなみと。“花より団子”もとい“花より団子よりお酒!”の妻は、モヤモヤが一気に晴れて上機嫌に。やれやれ。そしてコースが始まった。

 肝心の料理は、ミシュラン 3つ星だし「人生最高の中華だ!」と言いたいところだが、正直、そこまでの感動はなかった。勿論料理はどれも普通に美味しい。とりわけアミューズのホタテと、うずらと蟹肉のスープはとても美味しかった。ホタテは、梨とユンナン・ハムと一緒にパリッと焼かれており、ホタテや梨の甘さとハムの塩味とのハーモニーが絶妙だった。うずらと蟹肉のスープは、うずらのひき肉と蟹肉とをやさしい味の蒸しスープにしたもの。料理をアラカルトで頼んでいたら、もう少し印象が違っていたかもしれないが。

 一方、ペアリングのワインは、海老にリースリング(白)、子羊にイタリアはトスカーナの赤という想定内の組合せもあれば、意外な組合せもあった。アワビとハタのオイスターソース煮に合わせたのは中辛のシェリー。僕はしっかりした白しか思い浮かばなかったが、シェリーも全然ありだ。辛口のシェリー=食前酒、甘口のシェリー=食後酒、という固定観念に囚われてはいけない。
 しかし、僕が一番衝撃を受けたのは、Puchang Vineyard の白ワイン(品種はマスカット、辛口)。中国は新疆ウイグル自治区のワインである。僕は、その味よりも場所に、そこでワインを作っていることに驚いた(因みに味も悪くはない)。新疆ウイグルといえば中国の辺境の地。民族問題とタクラマカン砂漠くらいしか思い出せない。夏は滅茶苦茶暑く、逆に冬は滅茶苦茶寒かった気がするが、ブドウは育つのだろうか。
 調べてみると、新疆ウイグルは、降雨量が少ない、日照時間が長い、昼夜の寒暖差が大きい等、ブドウ栽培に適した土地だという。凍てつく冬の寒さも問題ないようだ。おまけにHPを見ると、このワイナリーはイタリア人とフランス人を醸造責任者に雇っている。う~ん、中国マネー恐るべし。中国ワインというと、まずい長城ワインのイメージしかなかったが、近い将来、中国ワインが来るかも!

 美味しい料理とワイン、それに新たな発見もあり、本当に良い経験ができた。お金を奮発した甲斐があったというもの。ただ金額が半分、いや1/3にでもならない限り、これが最初で最後の『龍景軒』になりそうだが・・・。


香港食い倒れの旅その2 海鮮の街・西貢へ

2018-02-16 20:25:36 | もう一度行きたい
 香港の郊外、海鮮料理で有名な西貢(サイコン)に行って来た。九龍の東、新界エリアにある街だ。

 地下鉄で彩虹まで行き、そこからミニバスに乗り20分強で西貢到着。やたら飛ばす運ちゃんで結構怖かった。たぶん そんな運ちゃんが多いのだろう、車内には制限速度80Kmの表示と一緒にデジタルの速度計が付いていた。安心・安全重視の方には、普通のバス(2階建てです)かタクシーをお勧めする。

 途中、彩虹は初めてだったので駅の周りを少し歩いてみた。昔ながらというか、中国らしい猥雑な商店街を発見。商店街の奥に市場がある。入ってすぐは肉屋。アヒル(鴨?)の丸焼きが吊るされていたり、普通に豚の顔や足が並べられていたり、見ているだけで楽しい。おまけに安い。アヒルの丸焼きで2,500円程度。このまま家に帰るのなら絶対買う。そして魚屋へ。
 ところで、日本に来た香港人は、日本の魚は新鮮ではない、と思うらしい。なぜなら日本の魚は死んでいるから。香港では生きている魚、活魚信仰が極めて強いのである。それは魚屋を見るとわかる。生きた魚が水槽や大きなバットに入れられ、売られている。また、ちょっとグロテスクだが、おろした魚の鮮度を示すため、半身に あえて動いている心臓を残して売っている。これには驚いた。
 この生きている魚を最高とする香港の文化は、漁村であった香港が、昔は獲れた魚を冷蔵や冷凍できず、その日のうちに食べていた名残ではないだろうか。それと、日本と違って魚を生で食べない、刺身で食べないことも理由かもしれない。刺身好きの日本人は、魚が死んですぐよりも、時間が経ってうま味が出てきてからの方が美味しいと知っている。これに対し、炒めたり、蒸したり、そしてしっかり味付けする香港では、魚自体のうま味はあまり関係ないのだろう(というか、そもそも魚の鮮度自体あまり意味がない気も・・・)。

 さて、話は漸く西貢に。西貢の港には小さな漁船が並んでいる。小舟や道端で魚を売っている人の姿も。どこか懐かしい雰囲気が漂う。一方、港の一角には所狭しとプレジャーボートが係留され、ちょっとしたマリーナでもある。暖かな土曜の昼下がり、犬を連れて散歩する人も多い。見慣れた香港の繁華街とはまったく景色が違っておもしろい。

 海沿いのメインストリートに海鮮料理の店が並んでいる。店の横には水槽が積み重ねられており、その中には大小の魚、カニ、エビやロブスター、ミル貝やアワビなどの貝類、それに特大のシャコ(30cm近い?)までいる。
 通りを行ったり来たりして、一番賑わっている『全記海鮮菜館』に入ることにした。注文するとお兄さんが水槽から魚を網ですくってくれる。調理方法は店のお勧めを聞きながら好みで注文。シャコ好きの妻が、真っ先に特大シャコのニンニク・唐辛子揚げを注文。あとは茹で海老とビール。茹で海老は、シンプルではあるが、とても旨い。先程鮮度に意味はないと書いたが、これは新鮮な海老だからこそ旨いのだと思う。
 海老を堪能したところに特大シャコ登場。う~ん、図体はでかいが、悲しいかな、食べるところが少ない。手を汚し、苦労して殻を剥いても、身はわずか。なのに高い! 一つ2,000円はする。 
 料理を追加するか悩んでいたら、妻がすくっと立ち上がって一言。「次行くわよ!」リベンジする気のようだ。

 次に通りの端の方にある『金輝海鮮菜館』に入った。小振りの店でお客さんは少なかったが、やはり店の横には水槽がある。そして、またシャコ(今度は普通サイズ)の唐揚げと茹で海老とビールを頼んだ。値段は『全記』より全然安い。
 海老は、茹で加減なのか、脱皮したてなのか、はたまた安いせいなのか、『全記』の方がプリッと、身がしまった感じがして断然美味しかった。が、僕はシャコはこれで十分に思った。小さくて、さらに食べるところは少ないが、この値段なら許せる。僕はそれなりに満足した。
 しかし、シャコ好きの妻は、調理法を変えれば特大シャコはもっと美味しいかもと、まだまだ諦めの付かない様子。やれやれ、まだまだリベンジの旅が続きそうだ。

香港食い倒れの旅その1 ロースト・グースのお家騒動

2018-02-14 23:22:11 | もう一度行きたい
 この3連休で香港に行って来た。美味しいものを食べ、春節(旧正月)前のバーゲンで買い物するのが目的。因みに今年の春節は2月16日。が、悲しいかな、街の雰囲気は既に新年。ガイドブックには春節直前がバーゲンのピークと書いてあったのに、どこもバーゲンは終わっていた。残念。もう こうなったら食べるしかない!

 香港に来たら いつも行く店がある。飲茶の『陸羽茶室』、上海料理の『夜上海』、そしてガチョウのローストで有名な『鏞記酒家』(ヨンキー・レストラン)である。
 特にヨンキーとの付き合いは長い。現地に住む知り合いに連れて行ってもらったのは、かれこれ20年近く前。以来、ジューシーなガチョウのローストに魅せられ、テイクアウトを含めれば10回は行っていると思う。3年ぶりのヨンキー、期待に胸が高鳴る(あっ、涎が)、のはずだったが・・・。

 実は、日本でネットを見ていたところ、ヨンキーは相続争いの結果、肝心の味は落ち、逆に値段が高くなったとの噂。調べてみたら、それこそ小説になりそうな骨肉の争い、お家騒動があった。
 ヨンキーは、1942年、甘 穂煇 氏が屋台から始めた。ガチョウのローストが評判を呼び、今では香港の一等地に立派なビルを構えている。穂煇氏には3男1女がいて、実際の経営は兄弟3人が行っていた。男3人と聞くと「3本の矢」を思い出すが、この3兄弟は結束できなかった。
 2004年の終わりに創業者の穂煇氏が亡くなり、そして2007年に3男が亡くなり、ここからバランスが崩れ、母親や長女をも巻き込んだ、長男と次男の骨肉の争いが始まったのである。元々長男と次男はヨンキーの株を各々35%ずつ持っていたが、最終的に次男が55%の株を持つことに成功し、母親も味方に付け、勝利したかに見えた。
 ところが、次男には二つの問題があった。一つは、裁判に負け、長男が持つ45%の株式を買い取らざるを得なくなったこと。もう一つは、創業者の味は長男、そしてその2人の息子に受け継がれていたことである。長男は小さい頃から店を手伝っており、1973年には2代目として店を引き継いでいたのであった。

 長男・健成氏は裁判の途中、2012年に亡くなったが、裁判は2人の息子に引き継がれ、2015年11月に長男側の勝利に終わった。また、この間、2014年に長男の長男が『甘飯館』を、2015年に次男が『甘牌焼鵝』を開店し、祖父や父の味を守っている。そして、なんと『甘牌焼鵝』は開店した2015年からミシュランの1つ星に輝いている。
 これに対し、最近のヨンキーは星を取っていない。お家騒動に嫌気がさし、あるいは株の買取りに多額の資金が必要になり待遇や料理の質が落ち、料理人等が去ったのだろうか。当分は過去の名声で店は流行ると思うが、その先はどうなるだろう。

 で、僕らは『甘牌焼鵝』に行くことにした。地下鉄の湾仔(ワンチャイ)駅のそばにある。2時過ぎなのに もの凄い行列。なんと23組待ちだった。が、思ったより回転が速く、20、30分で順番が回って来た。
 僕らは、早速、ロースト・グース、クリスピー・ロースト・ポーク、ピータン(しょうが付き)、青菜炒め、そしてビールを注文した。うーん、これこれ、懐かしのヨンキーの味だ。ジューシーなガチョウの肉に、パリパリの豚の皮。こりゃ、たまらん。
 しかし、僕としたことが、ここで痛恨のミス。この店、現金かオクトパス(日本でいうパスモ)しか使えないのであった。知らなかった。キャッシュの持ち合わせが乏しい僕らはビールの追加が出来なかった。肉はあるのにビールがない。せめて あと30香港ドルあれば・・・。
 よ~し、次回はお金を降ろしてから来るぞ~! 皆さんも『甘牌焼鵝』に行かれる際は是非ご注意を。