縁側でちょっと一杯 in 別府

東京から別府に移住してきました。
のんびり温泉に浸かり、美味しい魚で一杯。
夢に見た生活を楽しんでいます。

いつか『いつかティファニーで朝食を』

2014-05-31 14:28:07 | 芸術をひとかけら
 今朝、早起きして築地に行った。久々に和食『かとう』で朝食(『かとう』については 2006/3/15付『魚市場とダミ声の法則(?)』をどうぞ)。いつものように、刺し盛り、野菜3点盛りと金目鯛(カマ)の煮付け、それにビール。やっぱり旨い。

 そろそろ帰ろうとしたとき、隣に若い女性の二人組が来た。
「私、カレイの煮付け。私達、マンガを見て来ました。」
もう一人が注文する。「私、金目の西京漬け。」
「マンガに出たのは銀ダラだよ。」とお店のお姉さん。
「あっ、じゃあ、銀ダラ。」と彼女。

 マンガ? いったいなんの話だろう。
 お姉さんに訊ねたところ、「これ、これ。」と言ってスタンプカードをくれた。そこには『いつかティファニーで朝食を』朝食ラリー、と書いてある。「ウチ、1巻目に出たんだ。」と教えてくれた。「このマンガ、めちゃおもしろいですよ。」と隣の女性がたたみかける。

 知らなかった。『かとう』には十年近く通っているが、マンガに出たことなど全く知らなかったし、そもそもこのマンガ自体知らない。家に戻り、早速マンガについて調べたところ、実際にあるお店の美味しい朝食を紹介しながら、現代の東京に生きる若い女性達の姿を描いたものらしい。

 僕だって『ティファニーで朝食を』なら知っている。トルーマン・カポーティの小説だ。ティファニーは宝石店で朝食など出していないが、題名は「ティファニーのような高級なお店で、朝食を食べられる身分、お金持ちになりたい」というたとえである。
 もっとも日本ではオードリー・ヘップバーンの映画の方が有名。僕は小説を読んだし、映画も見たが、いずれも30年近く前。もうあまり覚えていない。覚えているのは、主人公のホリー(オードリー)がティファニーのショーウィンドウを覗きながらパンを食べるシーン、「ムーン・リヴァー」の甘く、少し切ない調べ、そして「ホリー・ゴライトリー、旅行中」という表札(?)くらい。あと、確か映画はハリウッド映画らしくハッピーエンドだったが、小説は違った気がする。ホリーは恋人のもとを去って行った。

 ホリーは「旅行中」という表札の通り自由に生きている。実際にいつも旅に出ているわけではなく、精神的というか、考え方や気持ちが自由、何物にも束縛されない、といった感じだ。長いこと会社勤めで、決められた枠の中でしか生きていない僕からすると、それは羨ましく、憧れる反面、怖くもある。

 『いつかティファニーで朝食を』の作者は、マキ ヒロチさんという女性である。彼女がなぜこのタイトルを選んだのか気になる。文字通り、ティファニーのような素敵なお店で美味しい朝食をというだけかもしれない。あるいは、女性よ、朝からしっかり美味しい朝食を摂って、強く、自由に生きようと訴えているのかもしれない。それは本を読んでみないとわからない。
 美味しい朝食と偶然の出会いから、いつか『いつかティファニーで朝食を』を読んでみようと思う。

卵とたいめいけん

2014-05-26 21:40:08 | お金の話
 『たいめいけん』といえばオムライス。あの伊丹十三の映画『タンポポ』で有名になった「タンポポオムライス」を作ったのもこの店である。そう、『たいめいけん』は卵にこだわった老舗洋食店なのである。
 「だから『卵とたいめいけん』か。」と思われた貴方、残念ながら違う。今日は物価の話である。

 僕は『たいめいけん』によく行く。勿論2,000円近くするオムライスなどは絶対に食べない(というか、高くて食べられない)。僕はラーメンしか食べない。それも立ち食い。精々4人しか入らない、店の脇にあるラーメンコーナーが僕の行きつけだ。
 ご存知ない方のために“たいめいけんカースト”(?)を簡単に説明すると、一軍は2階の高級洋食レストラン、二軍は1階の洋食店、そして三軍が立ち食いラーメンコーナー、となる。一軍と二軍では料理も値段も違い、まったく違う店の趣きだが、一方、三軍で提供されるラーメンやカレーは二軍と同じだ。ただ、ラーメンを1階のお店で着席して食べようが、立ち食いで食べようが、値段は一緒である。
 僕がわざわざ立ち食いでラーメンを食べる理由は“時間”である。僕が行くのは、ほとんどが残業前の食事。夕方、6時前後であれば、ほぼ並ばずに入ることができる。そしてラーメンが出てくるのに5分と掛からない。このスピード感がありがたい。またラーメンコーナーは厨房のすぐ横にあり、コックさんの調理している姿を見られるのも楽しくて良い。

 さて、前置きが長くなったが、ここからが本題。
 『たいめいけん』では、僕はいつもラーメン、煮玉子、ボルシチそしてコールスローを頼む。消費税増税前まではこの4品で千円でお釣りが来たが、増税後お釣りは来なくなった。寂しい・・・。
 その内訳を見ると、ラーメンは680円から750円、煮玉子は130円から150円、ボルシチとコールスローは各々50円のまま、であった。前の二つは便乗値上げと言われても仕方がないだろうが、後の二つの据え置きは立派である。
 さらに、この値段据え置きは、なんと昭和30年代に30円を50円に値上げして以降、ずっと続いているのである。この二つは値上げするな、というのが創業者の遺訓とのことだ。洋食に親しんでもらいたい、きちんと野菜を採って欲しいといった親心からなのであろう。今や「天下一品のコールスロー」と「ボリウム満点のボルシチ」は、オムライスと並ぶ『たいめいけん』の看板商品である。

 が、しかし、当時の50円は果たして安かったのだろうか。僕が小学生だった昭和40年代、50円あればお菓子など結構買い物できた気がするが・・・。
 東京都区部の消費者物価指数を調べてみると、昭和35年から平成24年で5.3倍になっている。ということは当時の50円は今の265円。そう考えるとあまりお得感はない。当時ラーメンやコーヒー1杯が50、60円だったというので、やはりコールスロー50円は高いと思う。もっとも当時はまだキャベツ自体が高かったのかもしれない。品種改良や高原キャベツの普及はもう少し後のことだ。
 ところで、昔は価格が高かったが、ずっと価格が変わらず、結果的に今は安くなったものといえば、卵。昭和30年代も今も1個10円強という価格はほとんど変わっていない。平飼いからケージ飼いなど養鶏の大規模化等により価格の維持、実質的な値下げが実現したのである。
 そんな物価の優等生・卵と、卵にこだわる『たいめいけん』。これからも50円のコールスローとボルシチに、卵同様、ずっとこだわって行って欲しい。

(因みにお味の方は、コールスローはさっぱりした味で、シャキシャキしたキャベツがとても美味。ボルシチ(ボルシチ風野菜スープ?)も、キャベツ、ジャガイモ、ニンジン等野菜たっぷりでおいしい。是非一度お試しあれ。)