縁側でちょっと一杯 in 別府

東京から別府に移住してきました。
のんびり温泉に浸かり、美味しい魚で一杯。
夢に見た生活を楽しんでいます。

別府に行こう! ~ 熊本地震からの復興

2017-01-23 22:18:08 | もう一度行きたい
 「あっ、お風呂が新しくなった。」
 1年振りに訪れた別府・明礬温泉、岡本屋さんの部屋のお風呂が綺麗になっていた。以前の方が風情があって良かった気がしないでもないが、やはり新しいお風呂は気持ちがいい。それに勿論お湯の良さは変わらない。源泉かけ流しのとても贅沢な風呂である。

 が、風呂を新しくした理由を聞いて僕は驚いた。なんと熊本地震だったのである。地震で瓦は落ちるは、客室の浴槽は抜けるは、浴室の壁は剥がれ落ちるは、大きな被害が出たという。風呂付の部屋は3室あるが、皆同じく風呂が地震で壊れてしまったそうだ。

 熊本地震の被災地というと益城町はじめ熊本県を思い浮かべるが、実は大分県も由布院や別府を中心にかなりの被害が出た。別府では最大震度6弱の揺れがあり、余震も随分続いたようだ。特に岡本屋さんのある明礬や鉄輪の被害が大きかったという。幸い別府では死者や重傷者は出なかったものの、家屋の損壊や、食器・ビン類が割れる等の被害が多く発生している。
 別府好きの僕としては恥ずかしいが、今回別府に行くまで地震被害のことをほとんど知らなかった。

 もっとも地震から9カ月経った別府は既に平静を取り戻していた。
 「べっぷ駅市場」では、新鮮な魚や美味しそうな惣菜を並べた店が相変わらず繁盛している。馴染みの鰻屋「大谷うな重 別府やよい店」も何も変わっていない。ここは、以前昼食難民と化した際に何の期待もせず入ったのだが、意外に旨く、それ以来よく通っている。うな重も良いが、うなとろ、肝焼きなどつまみが充実しているのがうれしい。僕は昼しか行ったことがないが、昼からお酒の進む店である。
 そしてソルバセオ銀座商店街というアーケードに沿った路地にある餃子専門店「湖月」。この店は焼餃子とビールしかない。小振りだが、パリッと焼かれ、モチモチした皮の餃子。いつもビールが進む。時間の関係で今回は行けなかったが(湖月の営業時間は14時~21時)、前を通ったところ普通に営業しているようだった。また、いつも食品売場をチェックする地場のデパート「トキハ」も変わっていなかった。

 銀座商店街、それに並行して走るもう一つのアーケード・やよい銀店街にもシャッターの降りた店が目立つが、これは地震以前からの話。悲しいかな、観光地・別府でもシャッター商店街化は否めない。地震でさらに拍車がかかったかもしれない。
 ただ今回街を歩いて気が付いたが、裏通りに若い人の店が増えている。バーのようなコーヒー・スタンドであったり、ベトナム料理の店だったり、立ち飲みバーだったりと。おそらく廃業した店を安く借りて開店したのであろう。人通りが少なく、若者が少ないこの場所でやっていけるかどうか若干不安だが、次回別府を訪れた際にこうした店が続いていることを願う。

 別府に行こう!

 別府は、見た目では地震の影響はもうないように見えるが、まだまだ別府の方の精神的なダメージや金銭面の負担は残っているに違いない。行って何ができるというわけではないが、行って、飲食店で飲み食いし、温泉宿に泊まる、それだけでも被災を受けた別府の方の応援になると思う。
 であれば、まずは東北や熊本にと言う方が多いと思うし、それを否定するつもりは毛頭ない。ただ熊本の陰に隠れた被災地、別府のことも知って欲しいと思った次第である。

函館・青森のご当地グルメ(後編)

2017-01-02 19:22:25 | もう一度行きたい
 なんか風情ないな~。
 正直、これが北海道新幹線で青函トンネルを渡った僕の印象である。

 もっとも比較の対象は、ウン十年前、年末に上野発の夜行列車で青函連絡船に乗り帰省した学生時代の思い出であるが。
 ~ 寝台車に乗るお金がなく椅子席に座り、隙間風の入る窓から雪の降る外をぼんやり眺める。周りには、出稼ぎ帰りだろうか、ワンカップのお酒を片手にスルメをかじり、酒盛りをするおじさん達。東北訛りがどこか懐かしく心地よい。 ~
 う~ん、いいね、昭和だね、演歌だね、そう『津軽海峡冬景色』の世界だ。

 これに対し北海道新幹線は快適そのもの。かつての「八甲田」や「十和田」といった急行列車と違い、隙間風は入らないし、座席も倒せる(当たり前か・・・)。おまけにヘッドレストや電源コンセントまである。要は新幹線の新しい車両なのである。
 函館から青森までわずか1時間強。トンネルなので外の景色を楽しむことはできない。中国語は聞こえたが、東北訛りを聞くことはできなかった。それに真新しくきれいな車両はワンカップの雰囲気ではなかった。便利になったものの、少し寂しい気がした。

 実は、同じような印象を、楽しみにしていた“青森生姜味噌おでん”でも感じた。

 “青森生姜味噌おでん”は、凍てつく寒さの中、青函連絡船を待つ人の体を少しでも温めてあげたいと思った屋台のおかみさんが、おでんの味噌だれに生姜のすりおろしを入れたのが始まりだそうだ。それが青森市一帯に広まり、今では“生姜味噌おでん”は青森市の立派な観光資源の一つにまでなっている。
 が、どうだろう。お店で食べると、確かに生姜の味はするが、それ以外は普通のおでんである。“たれ”にこだわるよりは“だし”にこだわってくれた方がいい気がしないでもない。やはり“青森生姜味噌おでん”は、寒風吹きすさむ中、屋台で「んだ、生姜さぁ入ってから、あったまるだべ~」(注:方言は僕の想像)とか言われながら食べるからこそ美味しいのではないだろうか。おかみさんのやさしさで身も心も温まるのではないだろうか。

 暖房のきいたお店の中で食べた“青森生姜味噌おでん”は、ただの生姜味のおでんだった。食事の印象は、何を食べたかだけでなく、誰と一緒か、暑さ・寒さや天気、お店の雰囲気等々、食べた時の状況・シチュエーションにも大きく影響される。実際、あのとき朝早く青森駅に着いた僕は、連絡船に乗る前に冷えた体を温めたい、何か熱いものを食べたいと思った。あたりを見渡すと、6時過ぎだったので立ち食いそば屋しか開いていない。しかし、そこで食べたそばで、ただのかけそばだったと思うが、冷えた体が生き返ったことを覚えている。
 それがそばでなく、生姜味噌おでんなら良かった。それこそ“人生最高のおでん”になったかもしれない。青函連絡船なき今、かなわぬ夢である。