縁側でちょっと一杯 in 別府

東京から別府に移住してきました。
のんびり温泉に浸かり、美味しい魚で一杯。
夢に見た生活を楽しんでいます。

ミス・アメリカと人種差別

2013-09-30 23:59:22 | 海外で今
 先日、ミス・アメリカに初めてインド系の女性、Nina Davuluri さんが選ばれた。彼女自身は“ミス・アメリカ”で Diversity(多様性)が受け容れられ嬉しいと語ったが、どうもアメリカ人の中には、彼女がミス・アメリカに相応しくないと考える人間が結構いるらしい。ネット上には、「ミス・アメリカはアメリカ人であるべきだ。」、「アラブのテロリストみたい。」、「アル・カイダ、おめでとう。君の仲間だ。」といった誹謗中傷が数多く出たという。
 これは、ミス・アメリカの決定が9月17日とあの9.11に近かったことや、インドにイスラム教徒が多いこと(インドは国民の多くがヒンズー教徒であるが、イスラム教徒も1割強、なんと1億6千万人もいる)が直接の原因であろうが、やはりその根底にあるアメリカの差別の根深さを感じざるを得ない。

 今年は、キング牧師の有名な“I have a dream.”演説が行われたワシントン大行進(内容について関心のある方は、2007.1.21『マーティン・ルーサー・キングJr.の夢』をご覧ください。)からちょうど50年になる。
 このワシントン大行進で黒人の差別解消に向けた公民権運動は一気に盛り上がり、南部諸州の人種隔離の各種法律、いわゆるジム・クロウ法が禁止され、そして翌1964年、ついに公民権法(Civil Rights Act)が制定された。法の上で黒人が白人と漸く平等になったのである。
 以後、黒人や有色人種を優遇する政策(affirmative action)も導入され、最近では政財界で黒人の活躍も目立つようになってきた。かつて黒人初の大統領に最も近いと言われたコリン・パウエル(軍のトップとして湾岸戦争を指揮し、その後国務長官に)、その後任のライス国務長官、そしてオバマ大統領の誕生である。

 しかし、一部にこうした好ましい変化はあるものの、全体を見れば、残念ながら黒人と白人の間で今も格差は存在する。貧困による大学進学率等教育水準の低さが、黒人の高い失業率や低い平均収入へと繋がり、その結果、貧富の差がその子供の世代に引き継がれている。アメリカはこの悪いスパイラルを断ち切ることが出来ないでいる。
 さらに、あの悪名高き白人至上主義団体KKK(クー・クラックス・クラン)の末裔たちは今も存在し活動を続けている。黒人に対する差別や差別的感情による事件も絶えない。これがアメリカの実情である。
 そして、こうした差別や差別意識は、ヒスパニックや他の有色人種、イスラム教徒あるいは性的少数者等へと対象を広げ、更に複雑になっているのではないだろうか。

 ところで、ご存じの方も多いと思うが、黒人で初めてミス・アメリカになったのは、歌手・女優として有名なVanessa Williamsである。それは1984年のことだった。そのときもアメリカでは様々な議論があったらしい。
 彼女の代表曲“Save the Best for Last”は、美しいバラード曲であるが、どこか哀しい、せつない曲である。彼女の人生、経験を参考にした曲だというが、題名を直訳すれば最後に最高のものを残す、つまり、まだ最高のものに出会っていない、手に入れていないということだろうか。
 いつの日か、アメリカの黒人も、ヒスパニックも、インド人も、そしてイスラム教徒も、皆が最高のものに出会ったと笑って言える日が来るといい。キング牧師の“dream" が一日も早く現実になるよう祈りたい。

ファンタジーとしての『半沢直樹』 ~ 目的は手段を正当化する?

2013-09-22 01:19:39 | 最近思うこと
 僕は元銀行員である。某メガバンクに勤めていた。そのため、よく『半沢直樹』は現実にある話なのかと聞かれる。話すと長いので、いつもは「あそこまでひどくはないけど、結構ある話だよ。」と答えている。
 が、『半沢直樹』も明日で最終回。今日は少し真面目に答えを考えてみたい。

 昔の仲間の『半沢直樹』に対する反応は二つある。一つは、おもしろい、毎回見ているというファンで、もう一つは、設定がおかしい、銀行実務が滅茶苦茶だ、見るに堪えないというアンチ半沢である。僕は東京編からしか見ていないが、確かに東京編だけでも設定に疑問を感じることが多い。

 まず、“東京中央銀行”が“伊勢志摩ホテル”に一行単独で、かつ無担保で200億円もの金額を融資した点。
 普通の銀行員の感覚として、ホテルのビジネスモデルを考えれば、そんなことは絶対あり得ない。ホテルの建設には多額の資金が必要であり、その多くは借入で賄われる。ホテルは、利益と減価償却を原資に返済を行うが、返済には極めて長い時間がかかる。ホテルは、その華やかなイメージとは裏腹、あまり儲かる事業ではなく、返済までの長い間に何が起こるかはわからない。一つの銀行だけで一つのホテルに多額の融資を行い、果敢に長い期間のリスクを取ることなどは考え難い。しかも、これは資金使途がホテル建設資金で、そのホテルが担保となる場合の話であり、それ以外の資金使途(運用資金?)で無担保とあっては全くもって信じられない。

 次に、伊勢志摩が実質破綻先とされた場合、東京中央が1,500億円もの引当金を積む必要があるという点。
 引当金は、融資残高から担保処分等で見込まれる回収額を差し引いた額を積むことになるため、東京中央だけで伊勢志摩に1,500億円以上の融資を行っていることになる。バブル期の不動産会社相手ならいざ知らず、2013年における一ホテルへの融資額としてはあまりに大きい額だ。因みに、伊勢志摩と同じ老舗ホテルの借入金(含む社債)はというと、帝国ホテルは無借金、ホテルオークラは243億円、そして最近皇居前の旗艦ホテルを建て替えたパレスホテルでさえ877億円である。
 いったい伊勢志摩ホテルとはどんな会社なのだろう。

 細かい点を挙げればまだまだあるが、最後に、一番大きな問題といえる半沢直樹の検査妨害、検査忌避の件について。
 半沢が「疎開資料」と称して伊勢志摩に関する資料の一部を隠しており、それが密告により金融庁に知れることとなったが、上手く隠していたため事無きを得たというくだりがあった。しかし、これは完全にアウトである。
 2004年、旧UFJ銀行が、金融庁検査に際し、問題先に関する資料を隠した、改ざんしたとされ、検査忌避の罪で刑事告発されたことを覚えている方も多いと思う。旧UFJ銀行が三菱銀行に吸収されるきっかけとなった事件である。
 そう、半沢の行動は立派な(?)犯罪なのである。他にも半沢の危ない行動が散見されるが、目的のために手段は正当化されるということなのだろうか。
(余談であるが、金融庁検査、巨額の引当金計上による赤字、経営責任、派閥抗争による内部告発等々、原作はこの旧UFJ銀行の事件を参考にしていると思われる。)

 ここまで読んで、「そうか、こいつもアンチ半沢なんだ。」と思われた方、それは違う。僕はファンタジーとして、あるいは時代劇感覚で『半沢直樹』を楽しんでいる。
 『半沢』を見て、これはノンフィクションだとか、日本の銀行や銀行員の実態を現しているとか(確かに一部は正しいが)思われては困る。が、『ハリーポッター』や『水戸黄門』と同じだと思えば何も気にならないし、皆さんにもそう思って見て欲しい。
 ほら、“半沢黄門”に助さん・格さんもいれば、悪だくみをする家老や越後屋、人は良いけど管理のなってない殿様もいる。前回、半沢が印籠のように携帯電話をかざすシーンがあって、つい笑ってしまった。由美かおるの入浴シーンの代わりに、最終回くらいサービスで上戸彩の入浴シーンがあってもいいかもしれない。
 う~ん、明日(書いているうちに今日になってしまった)の最終回が楽しみだ。