縁側でちょっと一杯 in 別府

東京から別府に移住してきました。
のんびり温泉に浸かり、美味しい魚で一杯。
夢に見た生活を楽しんでいます。

医療崩壊の危機(2)医療と経営の分離を

2007-05-03 21:35:27 | 最近思うこと
 足下、医療機関の倒産が増えている。その負債額も大きく増加しており、今年1~3月で倒産件数17件、負債額183億円と、負債額は既に昨年、一昨年の年間合計を上回っている。4月にも大淀会(鳥取)、三禄会(栃木)と30億円を越す大型の倒産があり、負債額の拡大は止まらない。
 倒産の理由は何か。前回書いた医師不足の問題は即倒産というより病院運営を維持できず閉鎖するケースが多く、よって理由はほかにある。それは、一言でいえば、医療機関の経営の甘さ、である。過大な設備投資と過剰な債務、又、最近は悪徳業者に騙され、倒産に追い込まれる病院も多いようだ。

 ところで、法律(医療法)では、病院と診療所とは区別されている。20人以上の患者を入院させるベッド(=病床)のある医療施設を病院といい、19病床以下(ゼロも含む)の医療施設を診療所という。経営はというと、概ね病院の6割、診療所の3割が医療法人により行われている(他は、病院は国公立、大学、日赤や社会福祉法人、宗教法人等の公益法人、診療所は医師個人等)。医療法人は非営利組織とされ、税制上の恩典がある一方で、法律により種々の規制を受けている。

 医療法人のトップ、理事長は原則として医師でなければならない。通常は病院の院長が理事長を務めるケースが多いが、これがそもそもの問題なのである。
 勿論、数ある医療法人の中には、医学に優れかつ経営にも明るい理事長、院長先生もいるかもしれない。が、しかし、それは極めて稀であろう。医師は医療に専念し、病院経営は経営のプロがあたる、本来そうした分業体制が必要なのだと思う。以前より株式会社の病院事業参入が話題になっているが、それよりも前に「理事長は医師」という縛りを見直すべきである。株式会社の参入に頑なに反対する医師会も、経営を信頼できるプロに委ねるだけであれば、反対する理由はないはずだ。

 事実、冒頭に挙げた、過大な設備投資と過剰な債務というのは、取りも直さずマーケティングや収支見通しの甘さ、即ち経営の失敗である。
 よく、足下の病院経営悪化の原因として診療報酬引き下げが挙げられている。平成14年に1.3%、平成18年に3.16%引き下げられたのが病院の経営を直撃した、と。
 ちょっと待って欲しい。この程度の引き下げで経営が行き詰るようでは、そもそも経営とは言えない。民間企業ではあり得ない話だ。例えば、ゴーンの出てきた当時、自動車部品メーカーは毎年二桁の率で価格引き下げを要求され、それを血の滲むような企業努力で吸収したのである。さらにいえば、診療報酬はインフレ率に比例し、それまではずっと引き上げられていたのではないか。

 医療は人の生命に係わるものであり、ただ利益を追求すれば良いとは思わない。特に救急医療の分野であるとか、新しい治療法の研究や難病対策など、国や地方自治体として取り組むことが必要だと思う。
 僕は、それ以外の、大部分の、ごく普通の病院に言いたい、病院経営の改善、効率化を目指せ、と。薬品や医療器具、更に事務用品も含め受発注や在庫管理は適正に行われているのか。省エネ対策は万全か。業務フローの中に無駄な工程や作業はないか、延いては人員配置に無駄はないか。医療設備・什器備品等の購入や、検査、清掃、リネン、給食等外注の際は相見積もりを取って適正な価格で行っているのか。等々。勿論、医療の質を落とさないことが大前提である。
 コンサルタントを入れるなどして業務の改善に努めている病院も増えてはいるが、すべての病院に業務の見直し、経営努力をお願いしたい。そのコストの多くを負担しているのは、忙しくてほとんど病院にも行けない、我々働く世代なのだから。

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