遙かなる透明という幻影の言語を尋ねて彷徨う。

現代詩および短詩系文学(短歌・俳句)を尋ねて。〔言葉〕まかせの〔脚〕まかせ!非日常の風に吹かれる旅の果てまで。

昭和歌謡曲の軌跡-戦後編

2017-10-30 | 昭和歌謡曲の軌跡
■「リンゴの唄」の周辺。
昭和20年8月28日、連合軍先遣隊が厚着に到着した時、飛行機の中からジープが出現するのを見て人々は驚愕しました。
終戦後、〝鬼畜米兵〟が上陸すれば男はすべて奴隷にされ、女はすべていやしめられるという風評がながれるな中、実際には、連合軍兵士は瞳とと肌の色が違うだけの普通の人間であるとわかった時、流行歌は早速その姿を描写したのです。
(阿久悠原作の映画「瀬戸内少年野球団」でもジープのシーが見られる)

スマートな 可愛い車体(ボディ)
胸もすくよな ハンドルさばき
街の人気を 集めて走る
ハロー ハロー
ジープは走る ジープは走る
(吉川静夫作詞、上等げんと作曲「ジープは走る」鈴村一郎)

レコードの現状は、ビクタ-が築地の文芸部のすべてと、工場の85&%を焼失していたし、コロムビアは電波需要産業の形態からの転換がまだ充分ではなかったそうです。

戦後の混乱期については詳しくふれることはできないが、ブラックマーケットが出現し、ひとびとは混乱のなかで悪性インフレーションに見舞われながらも、アメリカの日本経済安定計画によって、まもなくインフレも終息にむかうことにります。

こうした21年~22年にかけて、様々な東京讃歌がうまれましたが、そのすべては厳しい現実のなかにあって(制限された自由)戦前の東京に寄せる郷愁の歌でありました。「銀座セレナーデ」(服部良一作曲、藤山一郎歌唱)、「東京スーベニール」(ディック・ミネ)「銀座歩けば」(近江俊郎・柴田つる子)「花咲く銀座」(霧島昇・松原操)翌22年「映画主題歌として「夢淡き東京」(藤山一郎)がヒットしました。

一方で、米軍キャンプからジャズが流れてやがてブームとなるのですが、渡辺弘とスター・ダスターズを始め多くのバンドが結成され活動します。そんななかで池真理子の「愛のスイング」が生まれ敗戦直後のヒット。また岡晴男の〝花売娘シリーズ〟戦後第一作は21年の「東京の花売娘」だが、この歌にもブギが取り入れられています。 

開放感と生活苦は映画界でもおなじでした。
そんななかで歌謡史上最も重要な意味を持つのが、松竹の戦後第一回作品「そよ風」(昭和20年10月11日封切)の主題歌「リンゴの唄」でした。

大手拓次再読8

2017-10-30 | 近・現代詩人論
拓次の詩に初めて触れた人は、そのような感触を持つのかもしれない。幻想に彩られた、ファンタジックのような、どこかべとつく官能の香り、あるいは亡霊や妖怪などののイメージがなまなましいリアルさで迫ってくる。


薄気味悪い興奮にひたることになるにちがいない。
このような刺激的な詩を今まで書いた詩人が居ただろうか。北原白秋といえども、どこか気品が漂っていた。拓次に気品がないというのではない。朔太郎の云う「不思議な妖気」が各詩編のあちこちに垣間見られたということである。
作品名を拾ってみたがその題名からも拓次の特異さがわかるだろう。「枯木の馬」「蛇の道行」「怠けものの幽霊「休憩の鬼」「金属の耳」「笛を吹く墓鬼」タイトルのおもしろさは、拓次のひとつの特徴だがそれにしても動物の名前の多さにも目を見張るものがあろう。それも奇形の動物がおおいのにおどろく。それら動物は「夜界」という作品の中で舞踏会をくりひろげている。

少し長いようだがここに全行をうつしてみる。(次回にて)
拓次の詩の特異さがわかるかもしれない。実はここまで文章はみやま文庫の「暮兆・拓次・恭次郎」のなかの野口武久氏のすぐれた文章を参考にさせていただいたことをおことわりしておきたい。