喃語
崖の夕暮れは
まがまがしい、魔法の
血祭りに胸をこがした
昭和の
少年雑誌がぺらぺらめくれ
わざと家路を忘れた
白い月が昇る
ここは越中の
蛭谷の村はずれ
掛け軸の山水の上にも
月が昇り
老夫婦がひっそりと
夕餉をとっている
月が万華鏡だった頃の
会話は
何色の花だったか
魔法も年を取るから
大正の童謡に、ずっと泣かされ通しでしたよ、と
口の動きがかすんで
聞こえる
無防備な老夫婦
崖の下では水も細り
蛭谷生まれの最後の和紙が
風の悲鳴にちぎれて
二度と漉けない
冥界の川下りも近いことがわかる
しばらくは
崖下の一軒家を
たずねたことがなかった
古井戸は
無人の声を沈めていたが
月見草の影がふたつ
揺れていた
崖の夕暮れは
まがまがしい、魔法の
血祭りに胸をこがした
昭和の
少年雑誌がぺらぺらめくれ
わざと家路を忘れた
白い月が昇る
ここは越中の
蛭谷の村はずれ
掛け軸の山水の上にも
月が昇り
老夫婦がひっそりと
夕餉をとっている
月が万華鏡だった頃の
会話は
何色の花だったか
魔法も年を取るから
大正の童謡に、ずっと泣かされ通しでしたよ、と
口の動きがかすんで
聞こえる
無防備な老夫婦
崖の下では水も細り
蛭谷生まれの最後の和紙が
風の悲鳴にちぎれて
二度と漉けない
冥界の川下りも近いことがわかる
しばらくは
崖下の一軒家を
たずねたことがなかった
古井戸は
無人の声を沈めていたが
月見草の影がふたつ
揺れていた