ここではないどこかへ -Anywhere But Here-

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紅雀/松任谷由実

2007-11-13 05:15:27 | 音楽
ユーミンの旧譜のCDはずっと音が悪いままだったので買い換えることなくそのままになっていた。
これまであまり気にしてこなかったのだが『seasons colurs』が出たのをきっかけに、
CDショップでユーミンの棚を見てみると、何だ旧譜も一斉にちゃんとリマスターされているではないか。
しかも99年というからもうずいぶん前の話だ。不覚。

ということで、秋らしい一枚をと思って買ったのがこのアルバム。
今まではアナログ盤でしか聴いたことはない。
結婚後EMIに移籍して最初のアルバムでリリースは78年の春。
ユーミンの長いキャリアの中でももっとも地味なアルバム。前作の『14番目の月』からの反動からかぐっと落ち着いたトーンになっている。
歌詞の内容も内省的で当時のユーミンの歳が22,3歳だったことを思えば
ずいぶんと大人っぽいというか、若干の背伸びも感じられなくはない。

「ハルジョオン・ヒメジョオン」で、風景の普遍性を"私だけが変わりみんなそのまま"と歌い、
「残されたもの」では"もう捨てるものは何もなくなる またひとりだけの時が始まった"と歌う。
通底するテーマはどうあがいても戻っていく「ひとり」ということか。
結婚してパートナーを得た直後に孤独をひとつの題材に取ったというのが、ユーミンのユーミンたる所以か。

マイナーながらも曲調はバラエティに富んでいる。
フォルクローレ調の「ハルジョオン・ヒメジョオン」、「罪と罰」のボサ、バカラックを意識した「出さない手紙」など
結婚を転機に今までとは違った作風に挑もうとする意欲作という感じがする。
シングル・ヒットはない。ライブの定番といった派手な曲もないが、味わい深い作品が詰まったアルバムだと思う。