かなり遅くなってしまったが、先日ようやく「硫黄島からの手紙」を見に行った。
年末のラジオ番組で沢木耕太郎氏が「クリント・イーストウッドが現役としてしっかり映画を作っていることに勇気付けられる」
という趣旨の発言をしていたが、イーストウッドはこの映画をイノセントに作り上げたと思う。
アメリカ人として、あの戦争を題材にした映画を、しかも日本側からの視点に立って制作することにはさまざまな苦労があったはずである。
だから、一段高い視線を持って取り組んだイーストウッドの、この映画に対する意欲を感じさせる。
イーストウッドのような映画人のいるアメリカ映画界の懐の深さを感じさせられる作品だ。
思わず息を呑む凄惨な自決シーンや戦闘シーンも、淡々と描かれているだけにむしろ戦争の悲惨さを際立たせている。
この映画の影響もあってちょっとした硫黄島ブームが起きていて、書店には関連書籍がたくさん並んでいるが
日米の間にこういう歴史があったことを、現代に生きる私たちはきちんと理解できていない。
無知は罪だということを痛切に感じる。
抽象的な言葉だけではどうにもならないものを誠実な映像として突きつける。
それが、9.11を経たアメリカの映画に通底しているような気がする。
平和というのはただそこにあるものではない。
私たちはまずそのことを皮膚感覚として知らなければいけないのだと思う。