ここではないどこかへ -Anywhere But Here-

音楽・本・映画・サッカーなど興味の趣くままに書いていきます。

鬼平犯科帳(24)特別長編 誘拐/池波正太郎

2008-01-31 06:19:15 | 
大学4年のときに初めてニューヨークへ行った。
当時、雑誌「ニューヨーカー」に掲載されるような洒脱でエスプリの利いた短編を読んでいたので、
ろくに読めもしないのに街角のニューススタンドで「ニューヨーカー」を買い求めたりした。
茶色く変色したそのときの「ニューヨーカー」を見ると当時のことが懐かしく思い出される。

「ニューヨーカー」の作家の中でもとりわけアーウィン・ショウの短編が好きだったが、
ショウの多くの作品を翻訳していたのは「遠いアメリカ」で直木賞を受賞した常盤新平氏だった。
そしてこの常盤さんが、何かのエッセイで「若い人にもこの面白さをぜひ知って欲しい」と紹介していたのが「鬼平犯科帳」だった。
私と「鬼平」との出会いである。以来、細々と「鬼平」を読んできた。

空港の本屋で「今日は機内で読む本がないなあ」というようなときには決まって「鬼平」を買って入った。
季節の折々(冬が多かったような気がする)にふっと思い出したように読むのが「鬼平」だった。
そうやって10年以上の時間をかけて細々と「鬼平」読んできて、ようやく最終巻までたどり着いた。

私は熱心な池波正太郎ファンとは言えない。「鬼平」を除く他の池波作品は数えるほどしか読んでいないからだ。
ただただ、長谷川平蔵という主人公に敬服しその人物像に憧れて読み続けてきた。
熱心な池波ファンからは笑われるようなレベルでしかないが、それでも常盤さんの言った「面白さ」というのはよく分かったような気がする。
確か常盤さんは、あまり読書をしないような最近の若い人が読書の楽しさを発見する意味で「鬼平」は最適だ、
というような意味のことを仰っていたと記憶しているが、私もそう思う。
私にとってはアメリカ現代文学の紹介者と言ってよい常盤氏が時代小説を推奨するという、
ある種のギャップに興味を引かれて「鬼平」を読み始めたのだが
読書は苦手というような若い人にこそこういう本を読んで欲しいと思う。

最終巻は「女密偵女賊」、「ふたり五郎蔵」という二編のあと長編の「誘拐」が収められている。
私は前作を読んだときにお夏のその後がどうなるのかが描かれていないことに不満が残っていた。
魅力的なキャラクターを登場させておきながらこのまま終わるのはもったいないと思っていたが、
やはり池波正太郎はそのままでは終わらせなかった。
「女密偵女賊」でもお夏に触れて巧妙に伏線を張りながら、「誘拐」でこの妖艶なお夏をもう一度登場させた。

そして、さあここからどうなるのかとまさに興が乗ってきたその瞬間、忽然と絶筆してしまうのである。
妖しさをたたえたお夏は文字通り永遠にミステリアスな存在のまま残ってしまった。
しかし、長かった「鬼平」がこのような形で未完となったことは決して不満足ではない。
どこか、物語の続きを夢想させてくれるようなこの終わり方も「鬼平」らしくてよかったのかもしれない。

また、そのうちに忘れた頃にひょっと取り出して読むことがあるだろう。
「鬼平犯科帳」という作品に出会えたことは幸せな体験だったと思う。





芝浦にて

2008-01-30 13:10:55 | Weblog
仕事で浜松町に来たが、約束の時間に中途半端な時間だったので、
久しぶりの陽気に誘われてぷらぷらと散歩をしていたら、芝浦運河に突き当たった。
こんなことでもないと来ることのないような場所である。

宮崎にて

2008-01-27 23:37:01 | Weblog
今週末は宮崎で過ごす。
南国宮崎もここのところの寒波の襲来で東京と変わらない寒さだ。
こんな寒い日はラーメンがうまい。
明日は大分へ移動。

The Sensitive Sound Of Dionne Warwick

2008-01-24 06:15:42 | 音楽
"Dionne Warwickを聴こうシリーズ"第2弾(笑)。作品はデビュー作から飛んで4作品目の『The Sensitive Sound Of Dionne Warwick』。
とにかく「センシティブ」なのがポイントなのだろう。

この頃になってくるとバカラックも彼女の力量がおおよそ分かってきたのか、
より彼女の個性を生かしたトータルなアルバム作りを志向しているようである。
したがって、アルバム・オリエンテッドな落ち着いた作品に仕上がっている。
シングル・ヒットの寄せ集めではないので、ヒット曲はないものの、
Bacharach-Davidの曲もアレンジも非常に凝ったものになっている。
徐々に彼らの作風や制作スタンスが明確になってきている点で聴き所の多いアルバムである。

「Unchained Melody」や「You Can Have Him」などのカヴァー曲も何曲か収められているが、圧倒的にBacharach-David作品の方がいい。
より彼女の個性を把握しているからだろうし、アレンジも自家薬籠の物という感じだ。
「Wives&Lovers」をはじめ「Don't Say I Didn't Tell You So」などアルバムの後半からはバカラック・サウンドの真髄を楽しむことができる。

東京も雪

2008-01-23 12:54:44 | Weblog
東京の初雪。今週初めは肩透かしを食らったが今日は都心でもかなりの雪が待っている。
幸に弱い東京の交通インフラ。夕方までにやめばいいけど。
でも、不謹慎だけど大雪とか台風にはなぜかうきうきしてしまう。

父さんが言いたかったこと/ロナルド・アンソニー

2008-01-23 06:11:46 | 
多くの場合親子が時として分かり合えないのはジェネレーションが違うからだと思うが、とりわけ歳を取ってからの子というのは、難しいのだろう。
しかも上の子との歳の差があればなおのこと、親も末っ子との関わり方は難しいものがあると思う。

83歳になるミッキーは妻に先立たれ一人暮らしを続けている。ところがある日目を離したキッチンからボヤを起こしてしまう。
4人の子どもはそれぞれに独立しているが、兄弟はこのボヤ騒ぎをきっかけに年老いた父をこのままにしておく訳には行かないと集まる。
そしてミッキーをケア付き住宅に入れたらどうかと、兄姉たちの意見がまとまりそうになったとき、
歳の離れた末弟のジェシーが突然ミッキーと一緒に暮らしたいと言い始める。

こうして歳の離れた父と子の同居生活が始まる。
食事に始まりコーヒーの好み、果てはテレビの音量に至るまで二人はさまざまな生活スタイルの違いに戸惑いながら一つ屋根の下で生活していく。
年寄り扱いをして欲しくない父と、若さゆえ父と歩み寄れないことを苦々しく思う息子。
そんな二人の関係に変化をもたらしたのがジェシーの恋人マリーナだった。

マリーナはとてもすばらしい女性で、ジェシーはこのまま二人の関係が続いていけばいいと思っている。
一方でジェシーは過去の体験から恋愛はいつか変質していきいずれは終わりが来るものだと思っている。
だから結婚という見える形でのゴールを目指してはいない。恋愛に明確な形を与えることには臆病でもある。
マリーナを息子のパートナーとしてかけがえのない存在だと看破したミッキーは、そんなジェシーの考え方が気に入らない。
そんなジェシーにミッキーは一計を案じ、自らの古い過去をぽつりぽつりと語り始める・・・。

物語は淡々とシンプルに進んでいく。ジェフとミッキーの親子のありようも、ジェフとマリーナの日常の会話もごくありふれた日常の風景だ。
しかし、ミッキーの昔語りは静かな湖面に小石を投げ入れたときのようにそれぞれの心のありように静かに作用していく。
年老いた父が若い息子に残そうとしたもの・・・・。

物語が静かに流れていくように感じるのは、それが私たちにも通じる普遍的な問題だからだ。
親子の問題、男女の関係、仕事やお金の問題・・・。
縦糸に親子を、横糸に恋愛を絡ませたストーリーはだからことさらロマンティックに流されずに描かれている。
終盤は恋愛小説の体をなしていささか劇的なラストを迎えるが、それは物語の構成上予想される範囲のもので大きな破綻はない。

人は何かに折り合いを付けたり、自らを納得させようとする場合でも総じて少しずつ淡々と収まるべきところに収まっていくような気がする。
つまりのところ「父さんが言いたかったこと」もそんなことなのではないか。

1/19,20のランニング

2008-01-20 21:29:28 | ジョギング
土・日は先週に引き続き1時間のウォーキングを行った。
本格的な寒波が襲来して東京もおそらく今が一番寒い時期だと思われる。
でも、この寒さの中でもしっかりとウォーキングをするとニットキャップが暑く感じられるほどだ。

大腿四頭筋とハムストリングを中心にしっかりとストレッチをしてから歩き始める。
土曜日は最後の数百メートルを軽くジョギング。
今日は途中に1キロの軽いジョギングを入れる。まだまだそれ以上は無理だ。
走っているうちに膝の上のほうに違和感が出てくるのでおそらくこれ以上の無理は利かない思われる。

とにかく今はせっかく回復しているところを再び傷めないように慎重に調整をしていきたいと思う。

1/20の距離:1キロ

Presenting Dionne Warwick

2008-01-20 10:45:57 | 音楽
2月にBurt Bacharachのコンサートに行く。
数年前の前回の来日公演を見逃しており、もう見る機会はないだろうと思っていたが、何と再来日が決定。
今年で齢80歳を迎えるバカラックのコンサートが見られるとは思いもよらなかった。
東京国際フォーラムのチケットは取れなかったが、首尾よく相模大野公演のチケットが取れた。
そんなわけで久しぶりにバカラックの音楽をまとめて聴いて予習をしようと思い立った。

Burt Bacharach。言うまでもなくアメリカを代表する作曲家と言っていい。
異能と言ってもいいほどの独特の作曲技法を持ちながら、
それでもCarpentersを始めとしてDusty SpringfieldやTom Jonesなど数々のポピュラー・ミュージックを世に送り出してきた人である。
独特の個性を持ちながら稀代のメロディーメーカーという、相反する才能を持った稀有な存在。

そんなバカラックが作曲家として成功したのが、作詞家Hal Davidと組んで手がけたDionne Warwickの数々の作品だった。
バカラックと言えば何をおいてももっとも成功した彼女の作品群である。
しかし、高校時代に初めてバカラック作品に接した頃からDionne Warwickは避けてきた。
R&Bやゴスペルを聞き始めたばかりの多感な高校生にとっては、やはりアレサ・フランクリンであり、マーヴィン・ゲイだった。
ソフィスティケートされていてソウルフルなパンチを感じない彼女に少ない小遣いを割く余裕はなかった。
しかし、40を超えてくるとそういう拘りというか、衒いみたいなものがだんだんとどうでも良くなってきている。
Dionne WarwickにはDionne Warwickの良さというのがあって、もうそれを受け入れるられるだけの歳廻りにいるということだと思う。
そんなわけで、バカラックの再来日公演は改めて彼女の音楽に接するいい機会となった。

ちょうど彼女のキャリアの初期の作品群がCollecters' Choiceからリ・イシューされているので今年はいっちょこれを聴き込んでみようと思う。
まずは、デビュー・アルバムの『Presenting Dionne Warwick』。

デビュー曲の「Don't Make Me Over」をはじめ、バカラック・スタンダードの一曲「Make It Easy On Your Self」などが入っているが、
まだBacharach-Davidキャリアの初期でもあり、彼ら独特のスタイルは薄い。
アルバムをトータルでプロデュースするという時代でもなかったので、曲調もさまざま。
彼女の歌もまだ荒削りで、正直に言ってそれほどのうまさはないと思う。
ただ、アレンジにその片鱗がうかがえる「Unlucky」やバカッラクらしいコミカルさが楽しい「I Smiled Yesterdy」など聴きどころも多い。



神戸にて

2008-01-18 16:38:00 | Weblog
9ヵ月ぶりに神戸に来た。昨日があの震災から13年目だった。
もうそんなに月日が流れたのかと思う。
神戸はただ美しいだけではない街になった。