ここではないどこかへ -Anywhere But Here-

音楽・本・映画・サッカーなど興味の趣くままに書いていきます。

フーリガンの社会学/ドミニック・ボダン

2006-01-06 23:14:23 | 
曇り。寒い一日。

「世界で一番深刻な些事」サッカー。
そのプリミティブさゆえに人々を惹きつけ、遍く社会の裏も表も縮図として取り込んで肥大化してきた。
熱狂を光とするならば暴力はその影としてこの競技には付きまとっている。
サッカーという媚薬に翻弄される人々。

フーリガンという言葉とそのネガティブでダーティなイメージは日本でもだいぶ知られるようになってはきたが、
その実像を我々日本人はほとんど知らない。
先日のトヨタカップ、リヴァプールの試合を見に行ったが、リヴァプールのサポーターは、
あのヘイゼルの悲劇など想像するべくもないほどジェントルに応援していた。
そしてJリーグで時たま起こる騒ぎも、だからどこかフーリガンという言葉の持つイメージとは似つかわしくない出来事のようでもある。

本書はそんなフーリガン現象を歴史的、政治的、文化的、風俗学的な見地から考察していく。
著者はフランス人。したがってフーリガン発祥のイギリスに対する多少の嘲りが入っていることは割り引いて考えるべきであろう。
まあ、日本人にとっては英国のフーリガンも大陸欧州のフーリガンも大して変わりはないのだけど・・・。

これだけ均質化した先進諸国の中でも、ヨーロッパには我々日本人が想像する以上のヒエラルキーがまだ残っているのではないか。
女性でも子供でも安心してサッカー観戦を楽しむことができる日本だけに、やはり本質的に我々は理解できないのかもしれないが、
少なくとも日本ではそのような形でサッカーというスポーツが理解されていないことは、とても幸福なことと受け止めてよい。