コンフリクト・マネジメント入門-人と協調し創造的に解決する交渉術鈴木 有香自由国民社このアイテムの詳細を見る |
本書では、コンフリクト・マネジメントを、「建設的コミュニケーションに基づいた協調的な問題解決」と捉えています。
一般的となった感がある「Win・Win(の関係)」を作り上げるための方法、と考えても良いですね。
著者による講習を受けたことがありますが、その内容よりも、受講者の反応や行動の方が興味深いものでした。
電子政府でも、国民、行政職員、ベンダー、更には士業といった利害関係者がいる中で、誰もが納得できて利益も得ることができる「Win・Win」を目指すことは、大変に難しいものです。
けれども、本書にある様々な実践フローを試す価値はあると思います。
例えば、コンフリクト(紛争、葛藤)の解決戦略として
1 回避
2 強制
3 服従
4 妥協
5 協調
の分類があります。
行政が電子申請の検討を始めた場合に当てはめると、
回避:電子申請を作らない
強制:電子申請の利用を義務化する
服従:士業等の要求どおりに電子申請を作る
妥協:セキュリティも使いやすさも中途半端な電子申請を作る
協調:利用者と時間をかけて電子申請を作り上げていく
などが考えられます。
電子申請では、費用対効果等を考えて、「回避」が最良の判断となることもあります。
問題が緊急性を伴う場合は、「回避」は「先送り」となり事態を悪化させる可能性が高まりますが、電子申請にはそうした緊急性が少ないことを理解しておきましょう。
また、現在の「使われない電子申請」は、「妥協」が裏目に出た結果と考えるとわかりやすいでしょう。
今後の電子申請における戦略としては
・「協調」を基礎としながら
・場合によっては「強制」も交えつつ
・冷静な状況判断による「回避」を恐れない
と考えています。
また、「フィードバック」については、電子政府の評価などで有効でしょう。
異論があるかもしれませんが、行政には「隠蔽体質、自己防衛、リスク回避」といった傾向があります。
これは個人の資質とは関係のないもので、組織的・構造的なものと理解しています。
しかし、「フィードバック(修正フィードバック、肯定的なフィードバック)」を活用することで、「隠蔽体質、自己防衛、リスク回避」を解消まではいかなくても、緩和することぐらいは可能と思います。
電子政府や電子申請では、WG(作業部会)として、「利用WG」や「技術WG」などが作られます。しかし、具体的な検討に入る前に「利害関係者における協調や信頼といった関係性」というインフラを整備することが、より大切なことと思います。
なお、現在は下記の改訂版が出ているので、購入する際はこちらが良いでしょう。
人と組織を強くする交渉力-コンフリクト・マネジメントの実践トレーニング鈴木 有香自由国民社このアイテムの詳細を見る |