
きのう、9月1日は「きん枝改メ四代桂小文枝襲名披露公演」に行ってきました。いつもは落語会は私1人で行くのですが、キップが二人ぶん手に入ったので友人を誘いました。
会場は国際会館こくさいホールです。ずいぶんと大きなホールです。繁昌亭や喜楽館に行きなれている目で見れば、たいへんに大きく感じられます。この大きな会場が満席です。小文枝師匠の人気の高さが判ります。
開口一番前座は桂三幸さんです。「みかん屋」を演じはった。みかんを行商する噺です。ですから。冬の噺です。いまは夏ですので少し違和感を感じました。夏のみかんの噺といえば「千両みかん」がありますが、この噺、三幸さんにはまだ早いですね。それに前座でやるような噺ではありません。
2番めは桂枝女太さん。まくらのツカミは自分の名前をネタにして笑いをとらはる。枝女太をちゃんと読まれたことがない。「しによった」「しにょた」
枝女太さん五代文枝門下で10番目のお弟子さん。ちょうど真ん中。五代文枝門下の総領弟子は桂三枝(現六代文枝)2番弟子がきょうの主役きん枝(現四代小文枝)3番弟子が文珍師匠。このうち、六代文枝と文珍の両師匠は、前に行くと背筋がしゃんとする。このお二人からはそういうオーラが出ている。ところが四代小文枝師匠からそういうオーラはまったく出ていない。極めて気楽に兄弟子として接しられるとのことです。四代小文枝師匠のお人柄がうかがえます。ずいぶん長いマクラでした。五代文枝門下の力関係が垣間見えるまくらでした。ほんすじの演目は「十徳」です。
さて、仲入り前の中トリは桂文枝師匠。テレビの「新婚さんいらっしゃい」が来年50周年だそうで、あの番組は文枝師匠と新婚さんの当意即妙の会話が大切。新婚さんがなにをいってるかちゃんと聞くことが必要。で、文枝師匠、耳の検査に耳鼻咽喉科にいったというマクラ。補聴器をすすめられたそうです。
演目は、もちろん創作落語の「誕生日」米寿のおじいさんがたくさんの子供や孫に囲まれて米寿のお祝いをする噺です。
さて、仲入りも終わって幕があがると五人の落語家が並んではる。四代桂小文枝襲名披露の口上です。司会は桂坊枝さん。弟弟子を代表して枝女太さん。一門の総帥文枝師匠。江戸落語を代表して春風亭小朝師匠。主役の四代小文枝師匠はひと言しゃべらせてもらっただけでした。 落語家の襲名披露の口上は1人か2人は手ばなしでほめて、あとはイジって笑いを取るのですが、この時の口上はみんな小文枝師匠をイジってはった。
口上が終わってトリ前は春風亭小朝師匠。林家木久扇師匠をイジるマクラから、襲名にまつわる話。襲名した仲間の落語家に聞くと、襲名を打診されて受諾するまでたいていの落語家は悩む。で、どうして決断するか。仲間に襲名した落語家がいれば「あいつが襲名したんだから俺だって」と思って襲名を決断する人が多いとのこと。小文枝師匠の「あいつ」は誰でしょうね。
この時気がついたのですが、これまで出てきた、三幸さん、枝女太さん、文枝師匠、3人とも見台ひざかくしを使わなかった。ところが江戸落語の小朝師匠が見台ひざかくしを使ったはる。江戸落語でも見台ひざかくしを使うんですね。演目は「荒大名の茶の湯」みんな細川さんのマネをするという噺です。
さて、トリはもちろん四代桂小文枝師匠。泥棒の噺をしますということで、「一文笛」をやらはった。この噺、桂米朝師匠が作った噺です。タバコ入れを買い取るくだりから、貧乏な元侍の子のふところに笛をいれ、その子供が笛を盗んだと疑われ井戸に身を投げ危篤となる。主人公の名人スリ疾風の秀と、兄貴のやりとりで、秀のスリの名人でありながら善人、その兄貴の人物の大きさ、この演じわけが聞かせどころです。小文枝師匠は米朝師匠の噺より、いくぶんこってりしたところある、濃い目の噺となっておりました。その話術はさすがで、聞き入ってしまいました。きん枝時代よりレベルが一つも二つも上がった落語家に成長しておられました。
さて3時間ほど落語を堪能したあと、ここ国際会館の下、さんちかの南のつきあたり「さがみ」で痛飲して、いい気分で帰宅の途についたのであります。