ごろりんブログ

雫石鉄也のブログ

虎の宴

2019年10月20日 | 本を読んだで

  リリー・ライト 真崎義博訳      早川書房

 主役の左膳役は大河内伝次郎だったか大友柳太郎だったか忘れたが、「丹下左膳こけ猿の壷」という映画があった。大昔の映画じゃでどんな映画であったか忘れているが、確か、「こけ猿の壷」というお宝を、善人悪人入り乱れて奪い合う映画ではなかったか。そういえば「インディ・ジョーンズ 失われた聖櫃」もお宝を奪い合う映画だった。
 お宝の争奪戦というのは映画にしても小説にしても、エンタメの1つの定番であろう。
この小説もそうだ。奪い合うお宝は、アステカ最後の皇帝モンテスマのデスマスク。盗掘屋が掘り出したそのマスクは宝石で造られ、美術的にも考古学的にもたいへんに価値がある。
 アメリカのマスクコレクターで研究家ダニエル・ラムジー。その娘アナは父の代理でメキシコへ飛ぶ。モンテスマのマスクを入手できる段取りがついて、入手直前に何者かにマスクを横取りされる。マスクを取りもどすべきアナの活躍がはじまる。ダニエルのライバルコレクターの大富豪。メキシコの麻薬王。あやしげな美術品ブローカー。くんずほぐれつの大争奪戦。
 と、書いたが、それほど派手なアクションもはらはらさせるサスペンスもない。主人公のアナもただ右往左往するだけ。アクション、サスペンス、恋愛、母と娘、いろんな要素が取り散らかされて並べられているだけ。失敗作である。