『磐城誌料歳時民俗記』の世界

明治時代の中頃に書かれた『磐城誌料歳時民俗記』。そこには江戸と明治のいわきの人々の暮らしぶりがつぶさに描かれています。

いわき市暮らしの伝承郷 その5

2007年03月13日 | 歴史
いわき市暮らしの伝承郷に移築された旧猪狩家住宅の庭先には、
自然石の大きな詩碑が建っている。
その詩碑のおもてには、この家で生まれ、
育った詩人、猪狩満直(1898~1938)の「帰郷」という詩が刻まれている。

帰郷
           猪狩満直
久しぶりでまたふるさとの土を踏んだ
門口で畑をながめた
畑には僕がたんねんに手をつくしたトマトは
もう影も形もなくなっていた
芋の葉っぱが
プラプラ秋風にゆれていた。

家の中には誰もいなかった
広いガランポの座敷は埃にまみれ
食台、画架、椅子、夜具、本、新聞などが
雑然と
僕はカラマゾフ兄弟の家にでも足を踏みこんだような気がした。

秋陽に柿の実が赤く照っていた
七年ぶりでのふるさとの秋
――柿とはこんなにうまいものであったか。

柿の木のてっぺんにのぼって
柿を嚙っていたら幼い頃がなつかしく憶い出された
柿の木のてっぺんには幼い頃の青い空があった。



コメント (1)
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