いわき市暮らしの伝承郷に移築された旧猪狩家住宅の庭先には、
自然石の大きな詩碑が建っている。
その詩碑のおもてには、この家で生まれ、
育った詩人、猪狩満直(1898~1938)の「帰郷」という詩が刻まれている。
帰郷
猪狩満直
久しぶりでまたふるさとの土を踏んだ
門口で畑をながめた
畑には僕がたんねんに手をつくしたトマトは
もう影も形もなくなっていた
芋の葉っぱが
プラプラ秋風にゆれていた。
家の中には誰もいなかった
広いガランポの座敷は埃にまみれ
食台、画架、椅子、夜具、本、新聞などが
雑然と
僕はカラマゾフ兄弟の家にでも足を踏みこんだような気がした。
秋陽に柿の実が赤く照っていた
七年ぶりでのふるさとの秋
――柿とはこんなにうまいものであったか。
柿の木のてっぺんにのぼって
柿を嚙っていたら幼い頃がなつかしく憶い出された
柿の木のてっぺんには幼い頃の青い空があった。
自然石の大きな詩碑が建っている。
その詩碑のおもてには、この家で生まれ、
育った詩人、猪狩満直(1898~1938)の「帰郷」という詩が刻まれている。
帰郷
猪狩満直
久しぶりでまたふるさとの土を踏んだ
門口で畑をながめた
畑には僕がたんねんに手をつくしたトマトは
もう影も形もなくなっていた
芋の葉っぱが
プラプラ秋風にゆれていた。
家の中には誰もいなかった
広いガランポの座敷は埃にまみれ
食台、画架、椅子、夜具、本、新聞などが
雑然と
僕はカラマゾフ兄弟の家にでも足を踏みこんだような気がした。
秋陽に柿の実が赤く照っていた
七年ぶりでのふるさとの秋
――柿とはこんなにうまいものであったか。
柿の木のてっぺんにのぼって
柿を嚙っていたら幼い頃がなつかしく憶い出された
柿の木のてっぺんには幼い頃の青い空があった。