団塊太郎の徒然草

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日本人の「あきらめ派」と「苦闘派」は10年で倍に

2011-07-12 21:02:54 | 日記

特別連載『スペンド・シフト 希望をもたらす消費』【第3回】

果たしていつから日本人の価値観はこのようになってしまったのか?今回は時系列に見てみることにする。

前回は、ヤング&ルビカム社のBrand Asset Valuator (BAV)というデータベースの中の4Csという消費者価値観分析モデルを用いて、最近調査が行われた25カ国中、日本は「あきらめ派」(既存の価値に執着し、時代の変化に適応できず、社会参加をあきらめている層)の比率が最も多く、「苦闘派」(疎外感やフラストレーションなど社会における苦悩から逃避する層)も第3位であり、さらに、これまでの消費を牽引してきたとも言える「上昇志向派」(社会の中で自分が周りからどう見られているかを重視し、ステイタスを志向する層)と、「成功者」(目標意識と達成への自信をもち、大衆からの分離がモチベーションとなっている層)が、逆に25カ国中最低であることを示した。

これはマーケターにとって悪夢のようなデータであるが、果たしていつから日本人の価値観はこのようになってしまったのか?今回は時系列に見てみることにする。

もともと日本は中流志向が強いと言われていたように、「主流派」(社会におけるマジョリティに属することを望み、安定を志向する層)と定義されているセグメントが1997年には42%いた。この層は2010年の調査でもやはり35%と7セグメント中多数派を占めている。

しかし、「あきらめ派」と「苦闘派」は1997年の調査では両方足して14%だったのが2010年では32%と倍以上に増え、なんと日本人の3人に1人がこのどちらかの層となってしまった。それと対極を示すのが「上昇志向派」と「成功者」で、これらはそれぞれ17%から6%、9%から7%へ減少し、両方を合計するとちょうど半減してしまっている。特に、「上昇志向派」は3分の1に激減してしまった。

 
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日本における価値観セグメント(4Cs)割合の推移©電通ヤング&ルビカム Brand Asset Valuator

1997年は、実はアジアの通貨危機が始まり、北海道拓殖銀行や山一證券という日本を代表する金融機関が破綻し、日本でもバブル崩壊後の不況のピークとも言える年であった。日本人の価値観もこの年を一つの転換点として、様変わりしてしまったと言えよう。

2001年の調査とその次の2004年の調査では、「あきらめ派」の増加と「上昇志向派」の減少は既に見て取れたが「成功者」はむしろ1997年より増えており、いわゆる2極化ともいえる現象に思えたが、2010年の調査では「成功者」も1997年より減っており、2極化というより、一方向へのシフトと読み取れる形になっている。

 

「あきらめた」だけでなく、「変化」を嫌うようになった若者

 

 
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価値観セグメント(4Cs)別構成比 (18~29歳)©電通ヤング&ルビカム Brand Asset Valuator

上で見てきたのは、18歳~69歳全体というBAV調査にて設定された「全体」の姿である。それでは、いわゆる若者はどうなったのか?車に乗らない、酒を飲まない、海外旅行にも行かないなどと言われがちな最近の若者であるが、彼らの実態はどういうものなのか。ここでは、やはり1997年時点と2010年を比較することで、その価値観の変化を見てみることにする。

グラフからも見てとれるように、残念ながら全体に見られる傾向は、若者(18~29歳)で一層顕著なものであった。1997年には「あきらめ派」は2%というごくごく少数の、何か特殊事情でもあるのかと思えるような一部の層でしかなかったが、2010年にはその7倍に増え、全体の14%にまでなってしまった。「苦闘派」と合わせると、3人に1人になってしまっている。同時に「上昇志向派」が大幅に減っていることは、サンプル全体と同じである。

また、一層問題を投げかけるのが「探検派」が半減していまっていることである。この層は、個性を尊重し、リスクを恐れず社会に対して挑戦する、フロンティア精神をもつ層と定義され、時にはルールを破ってまでも変化を志向する層である。ブランド選択も感覚的な直感に基づいて行う層で、新製品をトライするのもこの人達である。1997年では18~29歳の4人に1人が、まさに「若者」というか「若さ」を代弁するかのようなこのセグメントであった。全体サンプルでは1割なので、やはり若い層に多いことがわかる。ところが2010年では25%から13%に大幅にダウンした。

ナナロク世代(1976年生まれ)と呼ばれ、今のネット系の会社を興し日本に新しいビジネスモデルを作り出してきた面々は、1997年時点では二十歳前後。まさに「探検派」のメンタリティーをもって新しいものにチャレンジしてきた層であると言えよう。ところが、その後に続く世代はそういった挑戦、変化を重視する価値観を継承していないと見るべきであろう。若者イコール変化を好む、即ち新しいものに飛びつく、だからそこに向けて「鮮度」の高い情報を送り続ければ新製品が売れるという図式は残念ながらリセットされてしまったと考えるべきであろう。スマートフォンやタブレットの使用率を見ても、今の20代より、「もと若者」である30代40代の使用率の方が高いのもうなずける。皆さんの周りを見回してもそうだと思うがいかがだろうか。

次回からは、価値観の変化がどういった製品カテゴリーに影響を与えているかを見て行きたい。

『スペンド・シフト~希望をもたらす消費』(プレジデント社)
フィリップ・コトラー=序文 ジョン・ガーズマ、マイケル・ダントニオ=著 有賀裕子=訳


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