福島原発に世界が注目する中、国民の目の届かない場所で、実は同じような危険な兆候が続いている。福井県敦賀市の高速増殖炉「もんじゅ」だ。発電しながら新たなプルトニウム燃料を生み出すとして、自民党政権が2兆円もつぎ込んだ“夢の原子炉”が、昨年8月の重大事故以降、ニッチもサッチも行かない状態なのだ。
「燃料棒交換のための『炉内中継装置』(長さ12メートル、重さ3.3トン)が原子炉内に落下、破損して抜けなくなったのです。落ちたタイミングも最悪で、発電実験に必要な新しい燃料棒を入れ終え、引き抜く途中。もんじゅが使うMOX燃料棒には、大量のプルトニウムが含まれています。そのため、装置回収は一瞬のミスも許されない困難を極める作業となっているのです」(原子炉設計技師)
昨年5月に、1995年のナトリウム漏れ事故以来14年半ぶりに運転を再開。たった3カ月後にこのザマだ。しかも、落下の理由は、引き抜き装置を造った東芝の設計ミス。その東芝が復旧作業を随意契約で請け負ったのだから、めちゃくちゃである。回収作業も大きな危険が伴う。
「結局、『中継装置』が引っかかったまま、原子炉に通す配管ごと抜き出すことが決まりました。この配管は抜くことを想定しておらず、予測不能な乱暴な手段なのです。しかも、高速増殖炉の強烈な熱源を冷やすには水や炭酸ガスでは無理で、原子炉内には液化ナトリウムがたまっています。ナトリウムは水や空気に少しでも触れると、猛烈な勢いで発火します。原子炉に空気が入らないようアルゴンガスを常に充満させながら、少しずつ引き抜かざるを得ないのです」(前出の設計技師)
こんな“綱渡り”を任された日本原子力研究開発機構の燃料環境課長が今年2月には自殺。それでも機構は「技術的には可能」の一点張りで、今年度中の試験運転再開を目指すというから、狂気の沙汰だ。いざ、ナトリウムが発火し、MOX燃料棒に燃え移れば、その恐怖と破壊力は福島第1原発の比ではない。
米・英・独・ロ・仏と世界中が断念する中、高速増殖炉に固執しているのは日本だけ。大マスコミは警告してこなかったが、この国の原子力行政は何から何まで狂っているのだ。(日刊ゲンダイ2011年4月1日掲載)
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