停止中の2、3号機の再開が問題となっている九州電力の玄海原発(佐賀県玄海町)だが、その動向には海を超えた韓国からも注目が集まっている。
1975年に運転を開始した玄海原発1号機は、九電管内でもっとも古い原発で、原子炉圧力容器の劣化が進んでいる可能性が専門家から指摘されている。この劣化問題は韓国メディアでも報じられ、玄海原発に事故が起きた場合、韓国にも影響を及ぼすのでないかと懸念されている。
圧力容器、想定以上に劣化か
地震などによる事故で緊急冷却装置が作動した場合、圧力容器の劣化の指標となる「脆性遷移温度」が高いと、急激な温度差による圧力に耐えられず破損する危険性が指摘されている。
九電が2009年に測定したところ、1号機圧力容器内の試験片の脆性遷移温度は98度と、前回測定した1993年の56度から大幅に上昇した。九電ではこの測定値から、容器本体の脆性遷移温度を80度と推計しており、93度未満という新設原子炉の業界基準を下回ると説明している。
複数の韓国メディアが報じているのは、井野博満・東京大学名誉教授が鳴らしている警笛だ。井野氏は玄海原発1号機について、九電の想定以上に圧力容器が劣化している可能性があると指摘、「最悪の場合は爆発の可能性があり、放射性物質が勢いよく飛び出した場合、福島原発事故を超す被害になる」と警告している。
韓国紙の京郷新聞(電子版)では7月2日、日本で報じられた井野氏の話を紹介したうえで、「150気圧、300度以上の高圧高温で運転中の玄海原発1号機が爆発して放射性物質が大量に放出されると、200キロほど離れた釜山をはじめ、韓国南部の地方にも深刻な被害がもたらされる可能性がある」と報じている。
韓国市民団体も2、3号機運転再開に反対
約200キロ離れた韓国南部への放射線被害が心配されるのも無理はない。福島原発事故でも、200キロ以上離れた東京都内の水道水や神奈川県の生茶から規制値を超える放射性物質が検出されている。
停止中の玄海原発2、3号機について、岸本英雄玄海町長は7月4日、全国の原発立地自治体で初めて再稼働に同意した。
朝日新聞によると、韓国の市民団体「環境運動連合」は7月4日、玄海原発の運転再開に反対の立場を表明。別の市民団体「エネルギー正義行動」の代表も、「地震の多い日本は脱原発へ進むべきだと思うが、運転再開はその流れに完全に背くものだ」と批判したという。
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