その一方で有明海の環境に異変が生じ、深刻な漁業不振に見舞われている。その元凶を堤防閉め切りと見る漁業者らが開門を求め、地域を二分する対立が続いている。
膠着状態を打開する動きが現在、進行中だ。4月28日、政府与党の検討委員会が開門して調査すべしとの報告書を提出した。これを受け、赤松広隆農林水産大臣も開門調査を正式表明するものと見られている。前政権との違いを鮮明にする思惑もあるようだ。こうした動きに猛反発しているのが、地元の長崎県だ。
諫早湾干拓事業へのスタンスは農漁業者や地域、政党などの違いによって単純に色分けはできない。有明海で漁業を営む人の多くは開門を求めており、佐賀県や熊本県、福岡県も同様だ。ところが、長崎県の有明海沿岸漁協は開門に反対で、政権交代後に一部が賛成に転じた。
政権交代を果たした民主党だが、長崎県の民主党は諫早湾干拓事業の推進派で、開門にも断固反対だ。もともと1950年代に湾全体を干拓して水田にする構想があった。発案者は当時の知事で、民主党の国会議員・西岡武夫氏の父親だ。
コメ不足からコメ余り、農地余りに時代は大きく変貌した。それでも干拓事業は目的を水源確保や畑作、最後には防災目的も加えられて続行された。干拓地の入植者は現在、41の個人と法人。62の応募者から選ばれた人たちだ。そのなかに注目すべき会社がある。
好立地の入植地(32ヘクタール)を貸与されたその会社は、長崎県選出の自民党代議士の子息と長崎県前知事の子女が設立したものだ(地元で問題視され、その後、2人は取締役を辞任)。父親の自民党代議士は建設会社の創業者で、農水省政務官を務めたことがある。開門して調査すべきことはほかにもあるのではないか。
(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 相川俊英)
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