ま、いいか

日々の徒然を思いつくままに。

「陽炎の門」「沈黙の町で」「早刷り岩次郎」

2013-06-12 14:56:49 | 
「陽炎の門」 葉室 麟  講談社  2013.4.16

 家禄五十石の家に生まれ、二十歳を過ぎた頃に両親を続けざまに病で亡くし、
 兄弟姉妹もない孤独な身で、家僕の佐助と質素に日々を送ってきた主水は、
 四十に間のある若さで異例の出世をし、執政の一人となった。

 左の眉尻に一寸ほどの傷痕がある。
 年少のころ、喧嘩に巻き込まれた際に受けた傷で、思い出すのも嫌な記憶だ。

 どこにでもある派閥争いに巻き込まれるつもりはない。
 相手が上役だろうと殿様だろうと、
 曲げぬ。逃げぬ。屈さぬ。
 不義不忠と言われようが〈氷柱の主水〉を通す。

 蛇足だが・・・
 舞台は豊後黒島藩六万石となっていて
 豊後水道に面して浦が多く、鶴が羽翼を広げた形に見える鶴ヶ江湾の奥まった小高い丘に城を築き
 というシチュエーションに、居眠り磐音の豊後関前藩を思い出した(笑)


「沈黙の町で」  奥田英朗  朝日新聞出版 2013,2,28

 中学二年生の名倉祐一が部室の屋上から転落し、死亡した。
 屋上には5人の足跡が残されていた。事故か? 自殺か? それとも・・・
 やがて祐一がいじめを受けていたことが明らかになり、同級生二人が逮捕、二人が歩道される。
 閑静な地方都市で起きた一人の中学生の死をめぐり、静かな波紋がひろがっていく。
 被害者家族や加害者とされる少年とその親、学校、警察などさまざまな視点から描かれる。 
 P184
 「携帯電話とネットがあるから、昔ならクラスで発言権も与えられなかった地味な子たちが、
  自由にものを言えるようになっちゃって、彼らは生身の人間を十分経験してないから、
  死ねだの、ゴミだの、ひどい言葉を平気で発信するわけよ」
 「ほとんどリンチだね。大人なら目をそむけるけど、それでも子どもたちは、チェックしないでは
  いられないんだよな。一人でいるという選択肢がない。中学生という生き物は池の中の魚みたいな
  もんでさ、みんなで同じ水を飲むしかないんだよ」

 軽視されてもいじめられても、何故そうなのかは考えず(もしくは、考えても変えようとせず)、
 またそのグループに自ら飛び込んでいく。おそらく、そこから離れれば、別のグループから
 いじめに遭うのだろう。
 イジメは無条件にいけないと思うが、邪険にするほどではなく、それでも鬱陶しくて
 エヘラエヘラされて阿られているうちに、結果としてイジメに繋がる・・・
 
 中学生には家と学校しかない。だから、いとも簡単に追いつめられる。(p283)

 言われなければ、子どもの心もわからない。
 恐らく、本人たちも筋道立てて考えた上の行動を常にしているわけではないだろうし。

 読み応えのある一冊だった。

 
「早刷り岩次郎」 山本一力  朝日新聞出版 2008.7.30

 版木彫りと摺りを請け負う老舗釜田屋。
 安政二年10月2日夜の字椎で、妻を子を失い、職人の多くも失った岩次郎は
 気落ちから立ち直り、早刷りを思い立つ。

 商売敵の悪辣な嫌がらせ、
 貨幣改鋳をたくらむ公儀と結んだ大商人の暗躍。。。

 硬骨漢岩次郎は、智恵と度胸をめぐらせて立ち向かう。
 一力さんワールドは、気持ちいい。
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