「百年泥」 石井遊佳
インド、洪水の後のチェンナイという街のどうにもからない混沌の泥の中から幻想や妄想が掘り出されて行く。
「おらおらでひとりいぐも」 若竹千佐子
自分発見の一人語りのような……。
桃子さんは娘に言いたい。
自分より大二な子どもなどいない。
自分がやりたいことは自分がやる。子供に仮託してはいけない。仮託して、期待という名で縛ってはいけない。
そして、こうも思う。
(亡くなった夫)周造は惚れぬいた男だった。それでも周造の死に一点の喜びがあった。おらは独りで生きで見たがったのす。思い通りに我れの力で生きで見たがった。(略)周造はおらを独り生がせるために死んだ。はがらいなんだ。
ともに、芥川賞。
文春三月号で一気読み。