「隠居おてだま」 西條奈加 KADOKAWA 2023.5.31
読んでいない「隠居すごろく」の続編らしい。
老舗糸問屋・嶋屋元主人の徳兵衛は、還暦を機に隠居暮らしを始めた。
風雅な余生を送るはずが、巣鴨の隠居家は孫の千代太が連れてきた子供たちで大にぎわい。
子供たちとその親の面倒にまで首を突っ込むうち、新たに組紐商いも始めることとなった。
ーーこのあたりまで前作かーー
商いに夢中の徳兵衛は、自分の家族に芽吹いた悶着の種に気が付かない。
やがて訪れた親子と夫婦の危機に、嶋屋一家はどう向き合うか。
幼いときに家を出た母、
「おいら、母ちゃんの顔を忘れちまって……母ちゃんを思いだそうとしても、のっぺらぼうしか出てこなくて……」
「母ちゃんが家に来るようになって、(略)目の前にいるときは、母ちゃんてわかるんだ。でも、後で思い返そうとしても、やっぱり母ちゃんの顔だけ、のっぺらぼうのままで……」
小さいからこそ深手を負い、消えない傷となる。
切ないーー。